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  ここに掲載しましたものは平成15年3月、「静岡県難病地域医療・ケアシステム研究会(準)」の主催で行なわれた「難病問題勉強交流会」に、パネリストとして参加したときの発言内容です。
  発言の場では、プロジェクタによる投影画面の操作や、文の読み上げなどにパソコンを使用し、質問には肉声で回答を行ないました。



皆さん、こんにちは。
 
  私は清水市*内で在宅療養をしておりますALS(筋萎縮性側索硬化症)患者の 玉舟淳浩 と申します。
  * 平成15年4月1日、清水市は静岡市との合併により、静岡市となりました。

  この病気を発症しましたのは平成5年で、右足親指から脱力症状が始まりました。
 その後は、随意筋の萎縮と筋力の低下が両下肢から両上肢へ、更には体幹部へと移行し、呼吸困難に陥った平成13年1月、緊急入院により気管を切開して人工呼吸器を装着しました。

  その後の経過は順調で、人工呼吸器の生活にも慣れた頃、入院先の専門病院より、在宅療養に向けての指導と地域の保健、医療、福祉の関係者を招いて、退院後の在宅療養の支援に関する会議を開催して頂き、その年の3月上旬に退院となりました。


◎ 人工呼吸器を装着した在宅療養の支援状況

  全身に及んだ筋力低下により寝たきりの状態となった現在は、専門病院を始め、地域開業医、医療機器会社、地域保健所、訪問看護ステーション、ホームヘルプサービス、入浴サービス、ボランティア等々により、相互に連携の取れた配慮のある各支援を継続して頂いております。
  併せて、家族の介護(妻によるものが大半)も、在宅療養には欠かせない大きな存在となっています。


◎ 難病患者に必要なケアとして

  次に、私の体験に基づき、難病患者に対する精神面のケアの必要性と、その一方法について述べさせて頂きます。

  さて、在宅難病患者に対する医療や保険、福祉の制度については一部に地域差こそあるものの、身体面の支援に於いては、逐次充実が図られて参りました。しかし、ヒトを構成するものは肉体だけではありません。知性や情意など、精神活動の源である『心』を有します。

  それ故に、根本的な治療法が無く、常に進行性の障害を伴う患者にあっては、悪化を辿り行く身体変化の困惑から情緒は安定せず、そこに発生する精神的ストレスは、身体機能の維持低下へと波及します。
  更に、自身の状態を受入れて、落ち着きを保つようになるまでには心に大きな葛藤を伴い、その受入れの殆んどが諦めによるものなのです。これはまた介護に当たる家族も同様です。

  精神面の ケアを必要とします。詳しくは専門の方々よりご意見を賜りたいと存じますが、このような場合には、患者が自身の認識を新たにし、病に起因する心の悩みの緩和と、生きる意欲を生み出すための、第三者による『会話』の機会を設けて頂くことが有効であると思います。

  その手段は、筆談あり文字盤ありと、患者各自の病状や状況などにより様々でしょうが、主体はあくまでも語る側の患者です。会話が自由に展開するために、語りかける内容に関心を持ち、単刀直入な問い方や、話を誘導するような助言などは控えて頂き、中立な立場で内容を整理しながら、正確に聞き取る対応をお願い致します。
  語る側は配慮のある回答を待ち望んでいます。信頼関係を築いてください。

  『会話』によって患者の表情は必ず明るくなります。そして可能な範囲で、同じ疾患を持つ患者同士の交流へと発展させてください。
  患者が社会の一員としての存在を感じながら、前向きに療養生活を送ることができたなら、どんなに素晴らしいことでしょう。
  皆さん是非とも、この実現に係わりを持ってください。


  最後に、関係者の方々には、患者が『不運にも難病患者となったが悔いは無い』と思えるようなケアを目指して頂くことをお願い申し上げ、また、インターネット上に開設してあります私のホームページのアドレスを紹介させて頂きまして、私からの発言を終わらせて頂きます。ありがとうございました。

ALS患者に希望を!

 
http://www.diana.dti.ne.jp/~atsuhiro/