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◎ 定期的な歯科処置

  私はALSに罹患してから咀嚼(そしゃく)と嚥下(えんげ)が極めて困難となり、食べることを失いました。
  栄養や水分は、胃に直接、栄養剤(流動食)を入れるための胃瘻(いろう)より摂取をしていますので口から食物を取ることは無いわけですが、口腔内は日々清掃をしてもらわないと気持ちが悪く、歯石の付着は以前よりも著しくなったような気がいたします。
  そして、「介護の状態は、要介護者の口の中を見ればわかる」と言われることがありますが、家庭に於いては、歯磨きや口腔内の清掃はできても歯石の除去は難しいものです。

  幸いにも私の場合は中学、高校時代に同級だったT君が市内で歯科医院を開業しており、私の状態を知って定期的に我家を訪れてくれ、ボランティアとして私の歯を診てくれています。

♦ T君は突然、病気の身となりました。 それでも我家を訪れてくれていました。
  そのT君、病気への対応のため県外の専門医院へ入院すると言っていましたが、定期的な連絡やメールが来なくなりました。
  情報によりますと、亡くなったとのこと。 とても信じられることではありませんが、、、取り敢えず、お世話になったお礼と、ご冥福をお祈りさせていただきます。




◎ 難聴の治療

  気管を切開して人工呼吸器の使用を始めて10ヶ月ほどが経過した頃からですが、右の耳が詰まった感じがすると共に聴力の低下を覚えるようになりました。痛みはありません。
  そして、左の耳も少しずつその気配を帯びてまいりました。

  このことを、掛かり付けの医院の内科の先生にお伝えしたところ、早速に耳鼻咽喉科医院の先生に御手配をしてくださり、往診をして頂いた結果、中耳に液体が貯留する「滲出性中耳炎」との診断を受け、耳鼻咽喉科医院にて治療をして頂くことになりました。
  治療は鼓膜に麻酔をかけてから、その鼓膜を切開して中耳腔(鼓室)に溜まった貯留液を吸引した後に鼓膜に小さなチュ−ブを挿入して頂きました。
  すると、直ちに難聴は解消し、先生の声や持参した人口呼吸器などの周囲の音がはっきりと聞こえるようになりました。
  その後は、難聴の気配を覚えるたびに上記の内科の先生と、先生のところの看護師さんの付添いを頂いて、耳鼻咽喉科医院にて治療を受けています。


♦ 私のような状態の患者に有りがちな「滲出性中耳炎」について教えて頂きました。
 
  中耳腔(鼓室)と鼻腔の奥の上咽頭とは耳管を通してつながっており、嚥下(えんげ)やアクビなどにより耳管が開いて中耳腔内の空気圧と外気圧は等しくなります。
  しかし気管を切開して、そこに人工呼吸器を着けている場合は空気が上咽頭を通ることはありませんし、鼻詰まりの状態にも気付きません。ましてや嚥下が困難であれば耳管が開くチャンスは極めて少なくなります。
  これらのことにより耳管が閉じてふさがってしまい、中耳腔内に閉じ込められた空気の中の酸素が周囲の粘膜に吸収され、中耳腔が負圧になるために鼓膜の陥没や周囲の粘膜から滲出液が中耳腔内に滲みだしてきて貯留します。この結果として、聴力の低下が起こるのです。

  また、滲出性中耳炎の治療の際に、鼓膜に小さなチューブを挿入しますのは中耳腔内の換気と排液にあるわけですが、そのチューブは3〜4ヶ月もすると自然に外へ排出されてしまいますので、私の場合は抜けにくいチューブにしてくださっています。