HOME  »  INDEX  »  人工呼吸器の装着に至る
  私の経験では、呼吸困難による全身の苦痛は睡眠不足を引き起こし、食事が十分に取れない状態と重なりますと、病気の進行は一段と加速します。

  さて、発症から7年、平成12年(2000年)の秋を迎える頃には、全身の筋力低下もかなり進んで呼吸は浅く速くなり、食事を口に運ぶことはおろか、噛むことも飲み込むことも大変になりました。介添えなしでは車椅子に座ることも、ベッドへ移ることも困難となり、寝ていても仰向けにはいられず、しかも自力ではできない寝返りは頻繁に行なってもらわなければ体中が苦しくてたまりません。
 
  呼吸困難に至った時点での人工呼吸器の装着については、既にその意思の表明はしてありました。

  年の暮れが近づき、睡眠不足と息苦しさも一段と増して、パルスオキシメーターによる経皮的酸素濃度の数値も91〜92%ほどとなり、眠りに就くと80%台に下がります。内心では人工呼吸器の装着の時期だと悟ってはいましたが、肉声によるコミュニケーションの手段を失うであろうという心細さと、人工呼吸器は21世紀になってからなどという意味の無いこだわりのため、年明け早々に観念の緊急入院となり、気管切開と共に人工呼吸器が着けられました。(気管切開は部分麻酔で行なわれ、手術は坦々と進んで、思っていたほどの苦痛もありませんでした。)

  すると、息苦しさから開放されたその晩は、近頃では味わったこともない深い睡眠が得られたどころか、頻繁に行なっていた寝返りさえも必要がなく、手足を少々動かしてもらう程度で十分であることにはいささか驚きました。日を追うごとに体が楽になって行きます。「こんなことならもう少し早めに人工呼吸器を着けていれば・・・」 と思った次第です。

  また、前以って前年の8月に設けてあった胃瘻(いろう)より経腸栄養剤の摂取も開始しました。これは食事が十分に取れなかった体に栄養が補給され、楽になったもう一つの要因であることには間違いありません。

  そうして、人工呼吸器の生活にも慣れた頃、入院先の病院より在宅療養に向けての指導と、地域の保健、医療、福祉の関係者を招いて、退院後の療養支援に関する会議を開催していただき、3月上旬に自宅に戻りました。

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