HOME  »  INDEX  »  痰の吸引
  以下は、私自身に適した気管内の痰の吸引方法です。参考になれば幸いですが強要するものではありません。

  気管を切開し、そこに人工呼吸器を装着している患者にとっては痰の吸引が不可欠なものとなります。
  この場合の痰の吸引は、気管切開部に留置されている気管カニューレから呼吸器回路を外し、吸引装置に接続した吸引管(気管内吸引カテーテル)を気管内へ挿入して行ないます。

  吸引時の吸引管には痰と共に必然的に気管内の空気が吸引されて行きますが、このときには吸引される痰や気管内の空気と同じ容量の外部の空気が、吸引管と気管カニューレとの間隙から気管内へ入り、吸引された痰や気管内の空気と入れ替わることが必要です。

  もし吸引時に空気の入れ替えが行なわれない状態ですと、気管やその奥の肺は負圧になるために、痰の吸引が行なわれないどころか胸が痛み、とても苦しくなります
( 気管カニューレの内部が痰のこびり付きにより、狭くなっているような場合は要注意です )

  このようなことから、痰の吸引時は空気の入れ替えがスムーズに行なわれるために、吸引管(気管内吸引カテーテル)は吸引状態にして気管カニューレ内部にある痰から吸引し始め、静かに気管内の奥へと進めます。また、痰には粘性がありますので、痰の所で吸引管を小刻みに進退させて空気を取り込みながらズズ・・と音が出るように吸引します。
  目的の位置まで吸引管を挿入したら、残っている痰を探して吸引するために、吸引管をゆるやかに回したり進退させたりしながら抜き取ります。
  なお、私の場合の吸引圧は、-200mmHg。 吸引管の外径は、12Fr(フレンチ
  1Fr は約1/3mm)。 気管カニューレの内径は、7mm。吸引管の取り扱いは、セッシでクランプして行なってもらっています。

  私の痰の吸引に使用している吸引管(気管内吸引カテーテル)は先端部の開口と共に、その近辺の側面にも開口部(穴)があります。気管内に付着した痰や気管内の空気は痰の状態や吸引管の位置により、それぞれの開口部から吸引されて行きますが、もし開口部が先端だけというように一箇所ですと、気管支の分岐部分などの粘膜に触れたような場合は、その箇所がまともに吸引されて傷つき出血します。このような場合に複数の開口部があることにより吸引力はそれぞれに分散され、粘膜に触れた部分の吸引力が緩和されます。

  また、痰を吸引する範囲ですが、私にとっては気管カニューレの内部と、その奥の気管内だけの吸引では不十分なときがあります。それは左右の気管支内に痰が存在する場合です。その痰の吸引には吸引管(気管内吸引カテーテル)を気管支の内部まで挿入する必要がありますが、気管支を痛めないことに合わせて以下に示すように気管支には左と右とでは形状に違いがあります。
 
<<気管支の左右差>>
 
1.気管と気管支との角度は左が右より小さい(左の気管支は曲り方が急である)。
2.気管支の太さは左が右より細い。
3,気管支の長さは左が右より長い。

  このような理由から、特に左の気管支内の吸引には若干のテクニックが必要です。私は人工呼吸器を装着して在宅療養に入った約1年後に左の気管支に痰が溜まり、やがて左肺が無気肺になるという苦しい思いの経験があります。そのときに思いついた左気管支内の痰の吸引方法を現在も家内に実施してもらっています。

  気管支内の吸引方法については、精通している医師や看護師から説明と実施の指導を受けてください。


♦ 記事に対する感想を頂きました

  はじめまして。
(中略)
 
  私は、気管内の痰の吸引を始めるときは、吸引カテーテルを指で抑えて吸引圧を断ち、目的の位置までカテーテルを挿入してから吸引を始めると指導を受けました。
 
  玉舟様は、最初から吸引状態にしてカニューレ内部にある痰から吸引を 始めて行くとお書きになられ、その理由も説明されています。
 
  とても参考になる貴重なご意見を頂戴いたしました。
 
(以下 省略)