クロイハネ



by虚月(UROTSUKI / DARKSIDE OF THE MOON)







絶望に打ちひしがれる日々


幸せな日々が少しずつ剥がれ落ち


図ったかのような無慈悲な真実が自分の上に容赦無く降り注ぎ


自分の周囲一切が嘆きの色に塗りつぶされていった


まるで自分が疫病神とすら思えるほど……









近しい者達がどんなに救いを求めても、俺は手を差し伸べることは無かった


……唯一人を除いて


俺はそいつだけがいてくれればよかったのだから……


たとえ眠りつづけていても、傍にいてやることが出来るだけでよかった


それが俺に残された唯一つの幸せだった
























しかし、その日々すら俺は失ってしまった
























ある日天使が俺の目の前に現れた


そいつは死んだ筈の彼女の姿をしていた……


彼女はお願いを一つだけ叶えてくれるという


俺は彼女にこの世界にとどまってくれることを願った


     駄目だよ…


     お願いはボクが叶えられるものに限るんだよ


自分は願いを叶えて消えていく存在だから…寂しそうに彼女は言った……



なら……



囁く言葉は……



目の前の彼女の翼が、純白の天使の翼が…黒く染まっていく



     どうしてそんなこと願うのぉ!!



     嫌だよ!



     ボクは嫌だよ!!



     君を…殺すなんて……



     嫌だよぉぉぉぉぉ!!























俺が最後に見たものは



彼女の涙と……



舞散る……黒い羽根……




















ゴメンな……



でも俺、一緒にいたいんだよ……



お前と……























     あゆちゃん、祐一、遊びにきたよ……


     今日もいい報告ができるよ……


     真琴、漸くしゃべれるようになったんだ、昔のことも少しずつ思い出してるよ


     栞ちゃんもね、お医者さんから外出許可が出たんだよ 


     来週連れて来るから楽しみにしててね……




     みんな……助かったんだよ




     ……みんなには奇蹟が降り注いだのに……


     貴方達だけ……


     どうして…なんだ…ろう…ね………





END

99/9/9UP



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