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by詠月(SELENADE)




ある日、王蒼幻は詠月(主人公)の仙窟に侵入した。

王は新しく開発した仙術で詠月を異世界に吹き飛ばそうとする、
が、唱えた呪文はなぜか失敗してしまった。
すると何処からともなく、もう一人詠月が空…もとい天井近くから降ってきた。

『一体何故?』

…と思う王
しかしそんなことよりも今の状況のほうがやばい!
詠月たちが混乱しているうちに、二人とも異世界に吹き飛ばそうとする。
が、再び呪文は失敗してしまう。

そして、またもや
詠月が降ってきたのだった
しかも今度は二人…

王は直ちにそのことを理解した。

…つまり
王が詠月を異世界に吹き飛ばそうとする度、世界が二分されるのだ。
詠月を異世界に吹き飛ばした王の世界と
それに失敗した王の世界に。

吹き飛ばされた詠月は、
もといた世界からもっとも近い異世界
つまり分岐したばっかのお隣、
失敗した方の王の世界に流れ着いてしまう……
当然といえば当然の成り行きだった。

『これは大変なことですね…』

いつもの王だったらこう思っただろう。

このまま同じことを繰り返せば、
そして自分がはずればかり引きまくったら…
この世界は詠月によって埋め尽くされてしまうのだから。

しかし、王はその時冷静さを欠いていた。
仙術の連続失敗というありうべからざる事態が原因だった。
天才はやはりもろいものなのだろう…

「いきますよ、こんどこそ覚悟してください」

…………

どさどさどさどさっ

心の傷口はますます広がったようだ。

「つ、次こそ当たりを引けるはずです!」

まるでパチンコに負けまくって
とうとうサイフの残金に気が回らなくなってしまった
ハマリギャンブラーの常套文句のようなつぶやきを発し…
王は今一度、いや、もう何度でも
詠月を異世界に吹き飛ばそうとする…



このままでは世界が危ない!!



……しかしそれは杞憂に終わった……

なぜなら……

王が8回目の転送仙術を唱える前に
ようやく事態をのみ込んだ詠月たち(総計128人)が
王をぼっこぼこにしたからである。





後に王はこう語ったという

「あの方たちの知性の低さがいけないのです、
 せめて5回目くらいで気づいてくれれば、まだ対処のしようがあったのですからね…」

丁度その時、見舞いに来ていた三界老師はそれを聞いて

「馬鹿はおまえさんのほうじゃろぅて」

と笑って言ったそうな。








さて一方の詠月たちはというと…



「だから俺は3回目に飛ばされてきたんだって」

「俺は5回連続で吹っ飛ばされたんだ」

「俺は2回目で飛ばされて、7回目でも飛ばされて…」

「3度も頭打ったぞ、まったく。
 ま、4度目では流石に慣れて、下に向っての破斬で軟着陸したけどな」

「「「あ、俺も俺も!」」」 (恐らくその時点までは同一人物)

「…「「おまえらなぁ!! ちったあ下にいる人間のことも考えんかいっ!!」」…」 (×64)

「…「「ああん、もうっ!! 勝手に動かないでよ!!
    またわかんなくなっちゃったじゃない!!」」…」 (×128!)

「はぁ…もういいじゃん、どれ選んだって同じだってばよ」

迎えに来た127人の美花(ヒロイン)とこの世界の美花による
必死の選別作業に付き合わされていたのであった…





☆劇終☆



作者のいいわけ:

 ホントはヒロイン8人しかいないんですよね〜、
 王が増やした世界は7つだから。

 するってえと、
 こういうことがあったやもしれない…


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「…「「詠月、迎えに来たわよ!」」…」

「…「「お、美花!」」…」



その数…
7対128…



「…「「ひゃっ! はわわわわわわわ〜〜〜〜!!」」…」 (×7)





「…「「一体何なのよ〜…この数っ!?」」…」 (×7)

「120人ばかり多いのよね〜」 (この世界の美花)

「何で?」

「じゃあさ、私達もあと120人いるの?」

「ううん、そうじゃなくって…、詠月だけ沢山出来ちゃったのよ、
 分岐した世界の数とつりあいが取れてないの……」

「…「「ええ〜〜っ!!!」」…」





「天封呪に近いんだよなぁ、この仙術ってさ」

「うん、老師から聞いた話だと
 天封呪はこの中途半端な仙術と純粋な異次元転送との合成仙術らしいの」

「どういうこと?」

「…つまり、最初の呪文で『今』の世界の複製を何個か作って、
 そのおのおのが異次元転送仙術を行なうってわけ…」 (さっきと別の詠月)

「さらに大事なことは、天封呪は瞬時に行なわれるの、
 呪文で強引に引き裂かれた世界は、完全に分岐しきっていない
 一瞬だけ離れ合った世界はまたもとの一つの世界にもどるのよ」

「一瞬ってのは……あれか?
 ごく短い時間では異なる事象がほとんど生まれないから、
 世界同士でズレが生じることもない……」 (またまた別の詠月)

「そうね、ズレ…つまり矛盾
 別れた世界同士で異なる事象が生じれば、その世界はもう一つには戻れない」

「で、世界が分岐している最中に吹き飛ばされた存在は、
 お互い異なる事象に出っくわしてしまい、一つに戻れなくなるってわけか」 (またまたまた別の…)

「ふぅん……って、何納得してるのよ!
 そんなことより、これからのことよ!! ホントどうするの!!」 (別の美花)



「いや、おかげで良い案が出た」

「何よ?」

「俺達が元の一つに戻れないんだったら、美花の方を増やせばいいんだよ、
 だったら朧(龍の事)を呼び出して天封呪をかけてもらおう!」

「…「「おおおおおっっっっっっ!!!
 それだっっっっっっっっっっ!!!」」…」 (コーラス+ディレイ+リバーブ:詠月合唱団 at 仙窟)

「…「「詠月!! あなたねえ!!」」…」 (×8)





 ってなかんじで、
 ヒロイン128人勢揃い♪
 ……たははは〜〜(誤魔化し笑い)

 …しかし6人のヒロインを各々、
 ×64、×32、×16、×8、×4、×2、
 と…増やさなきゃならないんだから
龍も大変だなあ〜。
 後で王どつきにいくな、これは(笑)

2000/09/02UP


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