セリオと遭難

by詠月(SELENADE)




セリオと浩之が砂漠で遭難した
困った事に、こんな時の頼みの綱でもあるセリオのサテライトシステムは故障していた



「水、みず〜」

浩之は暑さですっかり衰弱していた

「私、探して参ります」

浩之をその場に残し
セリオは水を探しに砂漠の奧(?)へと向かうのだった





暫くしてセリオが戻ってきた

「5km先にオアシスを発見しました」

「うひ……5キロ…死ぬ………」

「ですから浩之様の体力のことを考えて汲んでまいりました」

「……汲んできた?」

しかし彼女は水筒はおろか水を汲めるような用具は一切持っていない

「はい、私の中の保湿、冷却用のタンクに2リットルくらい汲んでまいりました」

「そうか!
 んじゃ、早くそのタンクを出してくれ、もう喉がカラカラで……」

「残念ながら、体内から外せるような機構にはなっておりません……」

「へ!? じゃあどうやって汲んだんだよ?」

「口からです……ですから……」

セリオの顔が赤らむ

「あの、非常に恥かしいのですが……
 この際そのようなことにかまってられませんから……」

まさか……

……浩之の頭の中にあることが思い起された

マルチとの……

「コップでもあれば、まだ体裁だけは取れるのですが……」

「どーやって飲むんだよ!!」

「ですから、公園の水飲み場で飲むようにしていただければ……」

「うっわー!〜!!!
 そんな、恥かしい真似できるかああああ!」

少し考えてから……

「……しかし場合が場合だ……据膳食わぬは男の……」

「この状況では『背に腹は変えられない』が妥当だと思いますが……」

「そ、そう! それなんだよ!!
 暑さですこしアタマがイカレ気味で、ははは…」






「少しの間、後ろを向いて下さいませんか……用意しますので」


一瞬、マルチの泣きじゃくる顔が浩之の脳裏によぎった


『はぅぅ…どうしてそんなコトするんですかぁ…
 ぐす…ひろゆぎざ〜ん』(涙+鼻水声)

『すまん、マルチ! でもこれはどうしても必要なことなんだ!』

『ふぇ…嫌です、いやですぅ……!』

『俺は、なんとしても生きて帰る、
 もう一度お前の顔が見たいから、だから…涙を飲んで…』

『うわ〜ん!! 涙なんかじゃないですぅぅ!
 ひ……浩之さん、これから違うモノ飲むんですぅぅぅぅ!!』

『ば、ばっかやろ! こっちが綺麗に収めようとしてるってのに、
 台無しにするようなこと言うんじゃない!!』

『ううっ…『マルチだけだよ…』って言ってたじゃないですかあぁぁ!!』

『て…てっめー!!!』

『すん…はぁっ…わたしの…じゃなくても…
 …誰のでもよかったんですねぇぇぇぇ!!!』


程なくして
浩之の心の荒野にメイドロイドの残骸が転がっていた……
彼は勝ったのだ!(何に?)








「浩之様…………」

きたぁ!!!

「よろしいですよ」

恐る恐るセリオの方を向く浩之……

伏し目がちな視線を上げると

あり?

セリオはいつものままだった

拍子抜け?いや!

スカートをまじまじと見つめる浩之

「浩之様……
 どうぞ……」


突然の事だった……

浩之の顔が濡れた

セリオから水がほとばしったのだ。






「何だ………これ」


「水芸です…」


セリオが手に握ってるたたまれた扇の先から…噴水のように水が吹き出していた。


「……なあ……セリオ……」


「オプションとして組み込まれました…主任の趣味だそうです」


「………………」


「あの…極細ファイバー管を通して無駄な分子振動を抑えた水ですから、
軌跡が綺麗なのが特長です……」


「………それで………」


「申し訳ございません、
 サテライトシステムからDL出来ない為…段取りが悪くなってしまい…」


「ふっ…………」


下半身の一点に集まった血が


一瞬にして浩之の頭頂に向って逆流した


その時


浩之は決意した


もし、生きてこの砂漠を抜ける事が出来たら……


そのときは


そのとき……は


必ず、長瀬のおやぢをボコにしてやる!!……と






☆おわり☆












































………と思わせておいてぇ………



【……その直後の会話】



「あの…浩之様」


「なんだっ!!」(激怒)


「…もよおしたら、言って下さいませ」


「はん?」


「私………
 ろ過システムがついてますので………」(ぽっ)


「うっわー!!!!!!!」





☆ちゃんちゃん☆



ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい





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