ボクは…ひとりぼっちになっちゃったの?




>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>





ボクは一人じゃなかったんだよ…でも……また…一人なの…?





<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<



DUAL-RHYTHM

by主星様







ぐすっ…
さびしいよ…
どうして…ボクだけひとりなの?
ずるいよ…かみさまは

白い街…いつもなら楽しくって走り回るのに…
なんだか急に冷たいよ…
おかあさん…
さびしいよ…


どんっ!
「うぐぅ…」
ぶつかっちゃったよ…

『ごめんなさい』…いつもはちゃんと言えるのに…
そしておかあさんに誉められるのに…
…どうして…言えないの…?

言葉が出ないの…?

おかあさんが誉めてくれないから…?

それでもなんとか…ぶつかった人を見る…
とっても綺麗な目をした男の子…

ドクン

………………………『ナツカシイ』

…………なにが?

………………………『マタアエタ』

…………わかんないよ…


頭がぐちゃぐちゃになっちゃって…
やっぱり謝る言葉もでなくって…

「…う…ぐっ……」
あ…もうだめだよ…
ないちゃだめなのに…
おかあさんにおこられるのに…

………あれ?…………………そっか…

…………………………おかあさんは…もういないんだ…

泣いても…だれもおこってくれない
泣いても…だれもなぐさめてくれない


わかっちゃたよ…
もう…わかっちゃったんだよ…
もう…景色がぐちゃぐちゃに…なって…るよ

「…えぐぅ…うぐぅ…」
「えっと…その…」

まえが…みえないよ…
たすけてよ…

「…えぐぅ…うぐぅ…」
「か、そういうことで俺これから宿題あるから」

………………………『ハナシチャダメ!』

…………うん!

ぐっ

ボクは必死に男の子の服の袖をつかんだんだ…
この子を放しちゃいけないって…
そうおもったんだ…

「えぐぅっ…」

「と、とりあえず…キミの名前は?」
「…うっ…えぐっ」


「俺は…」

……………………『ユウイチクン…』
「相沢祐一だ」
「えぐっ…うぐっ」

………どうして…
それより…ボクも言わなきゃ…
祐一君に…
……………………『ツタエナキャ』

「…ぁ…う…」

口が…うごかないよ…
まだ…まえがみえないよ…
……………………『ツタエナキャ』
ボクの…なまえは…

「…ぁ…ゆ…」
……………………『ツタワッタ?』




「…あゆ、か?」






……………………………………『ツタワッタ…』





【そして…全ての始まり…】

>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

………?
ここ…どこなんだろ?
…………………あ、あのお店…見覚えあるよ
そして…そうだよ…たいやきだよ!
…おいしそうだよ…おなかへったよ…

「へい!いらっしゃいお嬢ちゃん!」
「うぐぅ…たいやき…」
「いくつ欲しいんだい?」
「え!?えーと…たくさん…」
「たくさんじゃわからないなぁ…4つでいいかい?」
「あ…あのっ!」
「へいおまち!焼きたてだよ!」
「わぁ!美味しそうだよ〜」
「お代は400円だよ!」
「うぐっ…えーと…」

とりあえず着ていたコートのポケットを漁る

「…………………」
「ん?どうしたんだい?お嬢ちゃん?」

お財布がないよ…どうしよう…
………………仕方ないよ…

「…………ごめんなさいっ!」
だっ!
ボクは急いで逃げ出した
「あ!お嬢ちゃん!?」

逃げちゃった…ボク…悪い子だよね…
でも…仕方が無かったんだよ…

「まってくれお嬢ちゃーん」
…大変だよ!おじさんが追いかけてくるよっ
……素直に謝れば許してくれるかな…?

…………………………………『ニゲルンダヨッ』

…………え?

…………………………………『ハシルンダヨッ』

……う…うん…そうだね…

ボクは走った…
なんだか久しぶりに…おもいっきり走ったよ
でもこのままじゃ誰かにぶつかっちゃうよ…

ほら!やっぱり目の前に人がっ!
「そこの人っ!」
「…え?」
「どいてっ!どいてっ!」

その人はなぜかぼーっと立ってるだけで…どいてくれない…

「うぐぅ…どいて〜」
べちっ

「うぐぅ…痛いよぉ〜」

…………………………………『ツカマエタヨ…ユウイチクン…』



【これも…全ての始まり…】


<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<

【そして…全ての収束…】


祐一君おそいな…
…こないのかな?
……うんん…そんなことないよね!
祐一君は…やさしいから…

……………おかあさんより?

どっちがやさしいのかなぁ?
わかんないよ…
だって…どっちも大好きなんだもん…

でも…

………………どうしていつも大好きな人とは会えなくなるのかなぁ?

かみさまのいじわるなのかなぁ?

かみさまは…きっとひとりぼっちだから…
ボク達みたいな仲良しな友達がいないから…
さびしいのかな?しっとしてるのかな?

大丈夫だよっ
ボクが大人になったら…
祐一君と一緒にお友達になりにいくよっ!

だから…

……………………せめて…さいごぐらいは祐一くんと会わせてよ…



がさがさ

雪を掻き分けて誰かが来るよ…
…誰かって…祐一君に決まってるよね!
だって…二人だけのがっこうなんだから
ありがとうかみさま!きっと…やくそくだよっ!

「祐一君、遅刻だよっ」
れでぃを待たせる男の子は失格だっておかあさんがいってたよ!

そして下に…祐一君の姿が見えて…

そしたらとても安心して…




身体が…そらにういたみたいに…




……………………あ…ボク…浮いてるんだ…



>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

【これもまた…全ての収束】


浮いてる…
身体の感覚は無いはずなのに…

浮いてるってことだけはわかるよ…



……………声が…きこえるよ…

ボクが…大好きな人の声…
ボクを…好きだと言ってくれる人の声…

その声に導かれて…
その心に引寄せられて…

『再会するときは学校で…』
そう…だよ…ね…



「俺は今でもお前のこと好きだぞ」



……一瞬…だけど…永遠…


……夢…だけど…現実…


身体の感覚が瞬時にもどって来たよ…

………寒い…よ…

でも…………暖かいよ…

ありがとう神様…ほんの少しだけ…会わせてくれるんだね…



「ボクもだよ、祐一君」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「本当に、これでお別れなのか…」
悲しみと…ほんの少しの意地っ張りが混ざった目で祐一君が言う…
昔はこんな目はしなかったよね…
もっと純粋に…悲しみに暮れた目だったよ…
ほんの少しだけ…つよくなったんだね…

「…うん」
「そうか…」
「…うん」
「だったら、せめて、最後の願いを言ってからにしてくれ」
「……」
「約束したからな。3つだけ願いを叶えるって…」
「だから、せめて…」
「俺に、最後の願いを叶えさせてくれ…」

「そう…だね…」

最後の願い…
最後の想い…
最後の選択…
最後の希望…



でも…

最後の…約束…笑顔の…約束…だよ

「お待たせしましたっ」
「それでは、ボクの最後のお願いですっ」
「…祐一君…」
「…ボクのこと…」
「…ボクのこと、忘れてください…」
「ボクなんて、最初からいなかったんだって…」
「そう…思ってください…」

ボクは笑顔かな?
笑顔でいられてるかな?

笑顔で嘘をつけるほど…強くなったかな?

祐一君は笑顔かな?
笑顔でいてくれてるかな?

じゃあ…どうしてこんなに目の前が揺らぐの…
どうして…祐一君の姿が…揺らぐの…


「ボクのこと…うぐぅ…忘…れて…」
「本当に…それでいいのか?」
「本当にあゆの願いは俺に忘れてもらうことなのか?」
「だって…」
「ボクもうお願いなんてないもんっ」
「…本当は、もう二度と食べられないはずだった、たい焼き…」
「いっぱい食べられたもん…」
「だから…」
「だか…ら…」
「ボクのこと…忘れてください」

これでいいよ…
ボクの本当の願いは…
大地に根を張って…
大気にとけて…
地球と…宇宙と一緒に祐一君をつつんでくれるから…

だから…いいんだよ…
ボクは…わがままじゃないんだよ…
もう…大人になったんだよ…


なのに…どうして…私が包まれてるの…?
祐一君に…

「…祐一…君…?」

暖かい身体で…ボクは包まれて…

「……」
「…祐一君…」


大地よりも大気よりも…優しくて…

地球よりも宇宙よりも優しくて…

これじゃ…ますます…前が見えなくなっちゃうよ…


「…ボク…もう子供じゃないよ…」
「お前は子供だ」
「…そんなこと…ないもん…」
「ひとりで先走って、周りに迷惑ばっかりかけてるだろ」
「…うぐぅ…」
「そのくせ…自分で全部抱え込もうとする…」
「その、小さな体に、全部…」


大地よりも大気よりも…力強く…

地球よりも宇宙よりも…激しく…

抱いて欲しかった…

きっと…その願いは…

…………………………1つめの願いに隠された…本当の願い……………………


「…祐一…君…」
「お前は、ひとりぼっちなんかじゃないんだ」
「…祐一君…」


ひとりぼっちなんかじゃない…

だれかの…隣に居たい…

ほかの誰でもない…

祐一くんの…

きっと…その願いは…

…………………………2つめの願いに隠された…真実の願い……………………


「…ボク…」
「ホントは…」
「ボク、ホントは…」
「もう一回…祐一君と、たい焼き食べたいよ…」
「もっと、祐一君と一緒にいたいよ…」
「こんなお願い…意地悪、かな?」
「ボク、意地悪、かな…」

まだ…目の前は揺らぎ続けて…

でも…今なら見えるよ…祐一君の顔が…

目で見なくても…
耳で聞かなくても…

鼻で確かめなくても…
口で味わってなくても…

身体で感じなくても…

心に…気持ちに…全て感じられるから…

そして今のボクには…
心が…気持ちが…

ボクの存在全てなんだから…

ボクの五感…全て…祐一君で埋まっちゃったんだから…


「…祐一君…」
「ボクの体、まだあったかいかな…」
「当たり前だ」
「…よかった」

そして…ボクの五感全部で…祐一君を包みたい…


これが最後の…願いかな?

……………ううん…ちがうよね……………

私の最後の…願いは……………

悲しくたって…

苦しくたって…

たくさんの人に迷惑をかけたって…

だってボク…意地悪なんだもん!
だってボク…わがままなんだもん!

だってボク…子供…なんだもん…



               また…祐一君と出会いたい…幼い頃から…



お願い神様!願いを叶えて!


お願い地球!想いを叶えて!


お願い祐一君……………………最後の…奇跡を………起こして…………





そして…





ボクは………






………背中に翼を貰ったんだ…






               13枚の……………虹色に輝く翼を………




  <<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
                  儚き過去に…未来の翼を
  <<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>





ボク…落ちてるよ…



                        大丈夫だよ…ボクが…護るから…



あれ?天使様だ…


 
                        キミは…ううん、ボクは愛されてるから…



誰に?



                        大地に…大気に…地球に…宇宙に…
                        そして何より………祐一君に…



うぐぅ…わかんないよ…



                        今はまだいいよ…
                        ゆっくりと…わかればいいんだよ…



でも、ボクはみんな…大好きだよ!
あ、もちろん天使さんもだよ!



                        ……………ありがとう…………



あれ?
天使さん…血が出てるよ…



                        ………だめ………これ以上支えられないよ………
                        …………堕ちる!!



             びりびりびり!



天使さんの羽…7枚になっちゃった…
痛い?大丈夫?


            
                        これでいいんだね…
                        これでまた…祐一君と出会えるんだよ…キミは…



ボクのせい…なんだね…



                        これで…いいんだよ…



       辺りの雪を…真っ赤に染める…天使の血…



じゃあ、今度はボクが助けてあげるよ!
天使さんも…祐一君が大好きなんでしょ?
じゃあ、また一緒に遊ぼうよ!
約束、だよっ!



                        ………………………ありがとう……………ボク…………




         そうして…ボクはまた…流される…


  <<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
                   淡き出会いに…願いを
  <<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

どんっ!
「うぐぅ…」
ぶつかっちゃったよ…



                        ………ここは?



それでもなんとか…ぶつかった人を見る…
とっても綺麗な目をした男の子…

ドクン



                        懐かしい…
                        初めて…出会った頃…なんだね………



…………なにが?


   
                        また…会えたね…
                        やっぱり…出会えたんだね…ボクたち……



…………わかんないよ…


「…えぐぅ…うぐぅ…」
「か、そういうことで俺これから宿題あるから」


   
                        あ!離しちゃだめ!!
                        やっと…出会えたんだから…



…………うん!

ぐっ




「と、とりあえず…キミの名前は?」
「…うっ…えぐっ」


「俺は…」



                        祐一君…
                        相沢…祐一君…
                        ボクの…そして…キミの一番…大切な人だよ… 



「相沢祐一だ」
「えぐっ…うぐっ」

………どうして…
それより…ボクも言わなきゃ…
祐一君に…



                        伝えなきゃ
                        自分の名前を伝えなきゃ…



「…ぁ…う…」

口が…うごかないよ…
まだ…まえがみえないよ…



                        つたえなきゃ…
                        自分の気持ちを伝えなきゃ…



ボクの…なまえは…

「…ぁ…ゆ…」



                        伝わった?





「…あゆ、か?」






                       伝わった…伝わったんだね………
                       これで…ボクの願いは…全て叶ったよ…
                       祐一…君…



         びりびりびりびり!
        そして…再び6枚の翼が破れて…

        たった一枚の翼じゃ…流れに逆らえなくて…


        何処までも…過去へと………さよならの無い旅をする…

           ひとりじゃない…だけど…ひとり…



<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<

【再び…全ての収束…】

ごと…

…冷たい…
下に落ちちゃったのかな?

あれ?、天使さんが消えちゃった…

泣いてたよ…

天使さん血を流して泣いてたよ…


ちょっと前の…ボクと同じだったよ…

おかあさんが居なくなって…祐一君と会う前の…ボクと…


助けてあげたいよ…

あの時の祐一君と同じように…天使さんと同じように…

約束…したもんね

だから…



「あゆっ!」
あ、祐一君の声…
駆け寄ってくるよ…

「…祐一…君…」
なんでだろう?
うまく話せないよ…

「しゃべるな!今、病院に連れていってやるから!」
ボクは…なんともないよ…

………おかしいなぁ…身体が…動かないよ…


……あれ?ボクの上に降ってくる雪は…


天使さんの…はねだよね…?


心に…染み込んでいくよ……

「痛いよ…すごく…」

心が…

心が…痛いよ…

すごく…優しい心を…感じたよ…

「分かったから、だからしゃべるな!」

祐一君の目…泣いてるの…?どうして?
大丈夫だって…伝えなきゃ…
心配しなくてもいいよ…って

「あはは…落ちちゃったよ」
「ボク…木登り得意だったのに…」

あれ…涙が出てくるよ…

………そっか…天使さんの羽が…雪が…痛いから…

やっとわかったよ…

あのてんしさんは…ずうっとあとの…ボクなんだね…


ボク…いつかは天使になれたんだ…


ボクにこの羽をくれたのは…

約束のあかし…かな?

なんだか嬉しくて…

「でもね、今は全然痛くないよ…」

また会えると思ったら…痛くなくなったよ

でも…ボクにも何かができるのかな…?

「ボク…どうなるのかな…」
「痛くないんだったら、絶対に大丈夫だ!」
「…うん…」

そうだよね…

きっと…

なにかは…できるよね…

「…祐一君…」
「…また…ボクと遊んでくれる…?」

ボクと…天使さんと…遊んでくれる?

約束なんだ…そのときまで内緒なんだ…

「……」

祐一くんの心が…伝わってくるよ…
とても悲しいって…

でも…ボクの願いを…叶えたいって…

とても強く…思ってくれてる…

「…嬉しいよ…」
「…約束…してくれる…?」

…………ありがとう…祐一君…

あれ…だんだん眠くなってきちゃった…

「…だったら、指切り…」
「…えっと…」
「あはは…手が…動かないよ…」
「動かないと、指切りできないね…」
「ボク…馬鹿だよね…」

眠くて…

祐一君の顔もみれなくなっちゃった…

きっと…ボクも天使になる準備なんだね…

天使さんを…助けてくるよ、祐一君

いつか…祐一君がしてくれたように…

それまで…遊べないけど…待っていてくれるよね…

「ほら、これで指切りだ…」
「ちゃんと…指切りしたぞ、あゆ…」
「…約束だから…」
「うん…」
「…約束、だよ」



約束…………だよ…………





そして…





ボクは………






………背中に翼を貰ったんだ…






               6枚の……………真っ白い雪のように輝く翼を………







  <<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
                  愛すべき出会いに…祝福を
  <<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>


ここは…どこ…?
……そうだよ…少し違うけど…いつもの…商店街だよ…
………?

あれ?おかしいよ…ボク…浮いてるよ…?

………そっかぁ…

これ…天使さんの羽…だよね
ボクも天使になれたんだ…

 
わぁ…すごいや
ほんとに…なれたんだ…


あれ?向こうで立って待ってる人って…



ゆういち…くん…?

祐一…君…なんだね…


おっきくなってるよ…
おとなになってるよ…
                            
祐一くーーーん!!


…………ダメだよ…
声が…届かないよ…



                              逃げちゃった…ボク…悪い子だよね…
                              でも…仕方が無かったんだよ…


  
あ…おっきなボクだ…

じゃあ…ここは…大人のボクと祐一君が…また会えた時なんだ…



                             「まってくれお嬢ちゃーん」



どうしておいかけられてるんだろう?
でも…おかげで祐一君にあえるんだね…



                             …大変だよ!おじさんが追いかけてくるよっ
                             ……素直に謝れば許してくれるかな…?



逃げるんだよっ…早く!
祐一君の元に…
きっと…祐一君なら…助けてくれるよ…



                             …………え?



走るんだよっ!もっと早く!
じゃないと…祐一君どっか行っちゃうかもしれないよっ
 


                             ……う…うん…そうだね…



                             ボクは走った…
                             なんだか久しぶりに…おもいっきり走ったよ
                             でもこのままじゃ誰かにぶつかっちゃうよ…



ボクも…だんだん引き寄せられるよ…
あ、そうだ…
お羽…返さないとね…
                    
でもボク…まだやることがあるんだ…

まだ、天使さんを助けてないから…

あの…泣いてる天使さんを…助けてないから…

だから…2枚だけ…返すね…


こっそりと…リュックにつけておくよ…
ふふふ…おどろくかなぁ?
                            


                             ほら!やっぱり目の前に人がっ!
                             「そこの人っ!」
                             「…え?」
                             「どいてっ!どいてっ!」

                             その人はなぜかぼーっと立ってるだけで…どいてくれない…

                             「うぐぅ…どいて〜」
                             べちっ

                             「うぐぅ…痛いよぉ〜」



捕まえたよ…祐一…君…

約束…叶えてくれるんだよね!






                そしてボクは…本当に行きたかった所へ…




  <<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
                  移ろいし未来に…小さな羽を
  <<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>


                             痛い…よ…
                             寒い…よ…



ここは…?

天使さん?



                             キミ…は…



あゆだよっ!
助けに来たよっ!



                             だめだよ…あゆちゃん…
                             ボクは…もう羽なんてないんだよ…



だから…返しにきたんだよ
一緒に…帰ろうよ…



                             帰る……どこへ……?



もちろん!
祐一君のところにだよ!



                             還る……

                             祐一君の所に…?



そうだよっ
約束、したよ



                             約束…?

                             …………約束…



そうだよっ!
祐一君とボクと…
一緒に遊ぶって…



                             約束………だよ



はい…これ
お羽…返すよ



                             羽……翼…



           羽は…ボクに染み込んで……
          新しい……七色に輝く翼になった…



さぁ、これで一緒に帰ろう!



                             ボク…帰っても…いいの?



う〜ん…
わかんないや…



                             …………



でも…

ボクは…祐一君が待ってるから…

ボクが…祐一君の所に帰りたいから…

だから…帰るんだよ…



                             ……帰りたいから…
                             還る……



うんっ!

ほらぁ!
早く帰ろ!



                             う…
                             うん…

          
             帰るべき…場所

             戻るべき…人

         ボク達…いつでも…帰れたんだ…

            望みさえ…すれば…

          わがままにさえ…なれば…


           ボクらは…踊り子…

        2つの…別な奇跡と…異なる願いを… 

          抱いて踊る…踊り子達…

       2つの…まったく別で…少しだけ似ている…




          リズムに……合わせて…… 









       DUAL−RHYTHM(デュアリズム)
    

fin


偶然に巡り会った作品。でもそれが忘れられないものになるときってありませんか?
僕にとって、この作品との出逢いが正にそれ。
一読して、溜息、また読んで溜息…
原作のシーンをなぞっていながら、全く異なる物語を創り上げる。
その着想の良さ、ストーリーの大胆さに圧倒されちゃいました。

さて、そんな傑作SS『DUAL-RHYTHM』ですが、
今回主星様のご厚意より、こちらにて公開することと相成りました。
(主星様ありがとうございます)

いや〜夢じゃないかしら!(上と文体違いすぎっ)

詠月(01/03/05)


二次創作 SSに戻る


感想メールはこちらに→syusei_myu@geocities.co.jp