掘削部屋より愛をこめて

byHIRO様









カ〜ンカ〜ンカ〜ン


「おっ、アイテムを掘り出したみたいだぜ」

「今度は何が出るのかしら?楽しみね」

「おう、前回四神雷鳴つけたからな。
 この最後の仙窟で龍脈を甦らせるにはレアアイテムは必須!
 期待してるぜ掘削部屋ちゃん」

「洞仙さま〜、早速見に行ってみましょう」

「まあまあ、あわてるなって窟子仙」





「さあ何が出るかな〜、いいか?引っ張るぞ」


びよ〜ん


「……」

「これって…」

「見たことないですねえ。なんですかこれ?」

「あたしの知っているものによく似ているんだけど、
 っていうか、昨日見かけたものに似ているんだけど…まさかね…」

「俺も見たことあるんだが、いや食べたことあるんだけど
 それと同じってことないよな。似ているだけだよな…多分…」

「お二人ともご存知のものですか?」

「いや、似てるだけだと思う。んなもんが掘削部屋から
 しかも四神雷鳴で強化してあるのに掘り出されるわけはない」

「取り敢えず付いている説明書見てみましょうよ」

「ああ」


  チョコバナナ 必要仙丹1 
  効果:このSS作者好物 お腹が一杯になります


「あ、やっぱり」

「なんなんだこりゃあ〜」


生産部屋が攻撃されてます


「あ、洞仙さま、侵入者ですよ」

「やべ、これの詮索は後だ。行くぞヒロイン、窟子仙」





「ふう、どうにか撃退できたな」

「侵入者も強くなってきたわよね」

「ああ、これから更に強くなっていくだろうからな
 アイテムの充実をはかりたいものだな。それにつけても何なんだ
 さっきのアイテムは」

「でも、おいしかったですよ、洞仙さま」

「って、おい、食っちゃったのかよ」

「ずるい〜、あたしもたべたかったのに〜」

「でも、お二人とも持て余していたみたいだったじゃないですかあ」

「俺だって好きなんだぞ〜、祭りと言えば夜店、夜店と言えばチョコバナナ
 チョコバナナ無くして、祭りはなりたたんのだ。
 それをひとりで食いおってからに、このお〜」

「わわっ、やめてください洞仙さま」

「ちょっと、主人公みっともないわよ。
 食べちゃったものはしょうがないじゃない」

「そうですよ洞仙さま、やめて…、あっ、そこは…イヤ…」

「こらこら気持ち悪い声出すんじゃない」

「んもう、何やっているのよ」


カ〜ンカ〜ンカ〜ン


「あ、バカやっている間にまた何か掘り出されたみたいだ」

「行ってみましょ」

「よし、今度はやらんぞ」

「こんな目に合うくらいなら、いりませんよ」

「いったいどんな目に合ったの?そこんところの描写がないんだけど」

「それは読者の想像におまかせだ。さ、行くぞ」





「これって、やっぱりアレよね」

「う〜ん」

「なんなんですか?これもやはり美味しいものなんですか?」

「だから、やらんと言っておろうが。ヨダレを拭け」

「取り敢えず説明書見てみるわよ」

「ああ」


 りんご飴 必要仙丹1
 効果:更に作者の好物・姫りんごバージョンやぶどう飴等
            類似品も出回っている


「…」

「ねえ、主人公。今度はあたしが食べていい?」

「…」

「ねえったら」

「だあー、そういう問題じゃないだろうが。いったいこの掘削部屋
 どうしちまったんだよお」

「ホント不思議よね、もぐもぐ…」

「こらあ〜、ひとりで食うなあ〜」

「あっ、そんな…いきなり…」

「だめですよ、洞仙さま。映倫に引っかかります」

「んなわけあるか!紛らわしいこと言うな」



「とにかくだ、このままでいけば次に掘り出されるものは」

「綿菓子!」

「…可能性はある。しかし、俺たちは祭りに来ているんじゃなくて
 この仙窟を充実させる為にまともなアイテムが必要なんだ。
 ここはやはり部屋神様にお出ましいただこう」

「そうね。でも、綿菓子が出てからにしない?」

「だ〜め。そんなことしているヒマはないだろ。
 そろそろ今の武器じゃあ苦戦してくるころだから、早急に原因を究明しないとな
 ってな訳で、おいでませ部屋神様〜」


ちゃららららん


「求めに応じ、禺彊(ぐきょう)の名にて登場。おや?洞仙
 あたくしになにか用?」

「水神様、相変わらずお美しい」

「まっ、洞仙ったらホントのことを」

「こほん」

「洞仙さま、ヒロインがジト目ですよ。本題本題」

「はっ(まじい)いやあ〜、ヒロインはいつ見てもかわいいよ、マジで」

「そんなことより、早く本題いきなさいよ、もう!!」

「ごちゃごちゃと何を言っているのよ。用がないならもう戻るわよ」

「ああ、待って下さい。実はこの掘削部屋なんですが、
 さっきから妙なものばかり掘り出されるんですよ」

「バグですかねえ」

「窟子仙は黙ってろ」

「妙なもの?」

「ええ、ゲームの取説はおろか、攻略本にも載っていないものが」

「ちっ、ばれたか」

「へっ?」

「だあって〜、水神であるこのあたくしに掘削部屋の運営させるんですもの〜
 誰だって得手不得手ってあるじゃない?それを知っていながらひどいわよ
 もう、面倒臭くさいなあって思っていたら昨日の侵入者がナイスなことに
 落し物していったからこりゃ丁度いいわって考えちゃったわけ」

「その侵入者って?」

「天転とかいう小娘よ」

「あいつか、納得…って困るんですよ、そういうことされちゃあ」

「ちょっとしたシャレじゃないの。だいたいなんであたくしが掘削部屋の
 部屋神しなきゃならないのよ」

「しょうがないじゃないですか、そうしないと四神雷鳴がつかないんだから」

「もっと計画的に仙窟作りなさいよね。まったく3x3の内径で2辺を岩盤に囲まれた
 掘削部屋に四神雷鳴つけようなんて考えるのが間違っているのよ。
 隣の木の部屋神なんかただでさえあっちこっちで双龍烈波乱発してくれちゃっているのに
 更に使われてげっそりしてたわよ」

「双龍烈波って部屋神様疲れるの?」

「あたりまえよ。あれってドーピングよドーピング。本来あたくしたちはその部屋にいるだけで
 自然に気が流れるのにそれだけじゃ足りないってボコボコ使ってからに…。
 ひとつふたつならともかく、洞仙の使い方は尋常じゃないわ」

「しかし、部屋の強化の為には…」

「だから、計画的に部屋を作れって言っているのよ。
 洞仙、あんた初めのうちはいい加減にボコボコ仙窟掘っていたでしょ?」

「ぎくっ」

「で、ある程度機能するようになったら欲が出てきて部屋の強化に明け暮れて」

「うっ」

「でも、もともといい加減だから思うように強化出来なくて」

「ぐさっ」

「しょうがないから風水香に双龍烈波、引波の方位盤の大盤振る舞い。
 あたくしたちも疲れるけどアイテムももっと大切に使って欲しいものだわ」

「え〜い、煩い煩い。まず適当に部屋を作って後からいかに強化していくかが仙窟作りの
 醍醐味だとここのHPの管理人も言っているじゃないかあ〜
 とにかく頼みますよ水神様。いくぞ窟子仙、ヒロイン」

「あっ、待ってくださいよ〜洞仙さま〜」




「洞仙ったら逆ギレしちゃって、もう」

「はあ〜」

「あら?娘、どうしたの?ため息なんかついて」

「ここんとこ、ずっとあの調子なんです。朝から晩まで強化強化って、
 もともと仕事熱心な人だったけど、もう少しペースを落としてもいいんじゃないかなって
 最近、笛も吹いてくれないし、昨日だって洞天福のお祭りだったのに
 一緒に行こうって誘っても次の強化を考えているから一人で行ってきなって言ったりして
 もうあたしのことなんか何とも想っていないのかな、なんて…」

「倦怠期って、やつね」

「そ、そんなんじゃないもん!!
 でもでも、このままず〜っと仙窟の強化に明け暮れて気がついたら
 あたしも主人公も三界老師みたいに朽ち果てたジジイとババアに
 なっちゃったらどうしよう。
 そんなのヤだ〜」

「か、かわいい顔してヒドイこと言うのね、あんた
 しかしそれは使えそうな」

「え?」




「女二人で内緒話かな?」

「金の部屋神ね。あなたこそ何をブラブラしてるの?」

「うむ、今、倉庫部屋を追い出されたとこじゃ」

「じゃあ今度は誰が運営しているの?」

「それが木の部屋神よ。難儀なことじゃ」

「まったく、飽きもせず風水香を乱発してくれちゃって。
 金の部屋神、わるいけど他の部屋神を召喚してくれない。
 あたくしはその間に掘削部屋をちょっと細工しているから」

「何をする気じゃ、水の部屋神よ」

「皆がそろったら話すから、早く呼んできてちょうだい」

「わかったわかった。お〜〜〜〜い、五行全員集合じゃぞ〜い」


ちゃららららん


「求めに応じ、后土皇地祇(こうどこうちぎ)の御名にて推参」

「求めに応じ、句芒(こうぼう)の名にて見参」

「求めに応じ、祝融(しゅくゆう)の名に来臨」


「どうしたの?ボクに何か用?ふあ〜眠い」

「わたしは疲れているのです。用向きは手短にお願いしますよ」

「なあ、見てくれよ。俺の炎、今にも消えそうだぜ。
 まったくここんとこ部屋でおちおち昼寝もできねえ」

「皆も相当疲れてるわね。それもこれもみ〜んなあの洞仙の
 無茶苦茶な強化のせいよ」

「わ〜ん、ごめんなさい〜」

「娘、あんたはしばらく黙っていなさい。
 そこでよ、皆に相談なんだけど、あのやる気120%の洞仙に
 少し休んでもらおうと思うけど如何」

「そうだな、特にこの仙窟は長丁場だ。俺たちもバテているが
 洞仙に寝込まれたりしたら元も子もないよな」

「そうですね。いい考えだとわたしも思います」

「で、どうするの?ボク余り疲れることしたくないなあ」

「わしとしても、できれば動かんですむ方法を考えて欲しいもんじゃ」

「それが、ナイスな方法があるのよ。
 ここにいるカモもとい娘は、最近洞仙に構ってもらえなくて
 フテているのよ」

「だ、だれもフテてなんか」

「だから、黙って聞きなさいってば。
 この娘は洞仙に構って欲しい。あたくしたちは少し休みたい。
 そこでよ」


カ〜ンカ〜ンカ〜ン


「掘り出したわね。桃まんを掘り出すように細工していたのよ
 で、この今掘り出した桃まんにあたくしたちの気をすこしずつ入れて
 ホレ薬ならぬホレ桃まんを作るのよ」

「ホレ桃まんですってえ?」

「それはいい」

「その手があったか」

「それを食べればもう骨抜きよ。ラブラブフラッシュ全開!
 明けても暮れても相手のことが頭から離れはしないでれでれのべったべた状態
 でもまあ、もともと恋人同士。時間が経てば気分も落ち着くし、
 この娘は仙窟作りに理解を示しているからいつまでも
 仙窟をほっぽって二人の世界に浸っていることもないでしょう」

「でもでも、そんな主人公の気持ちを操作するなんて」

「どうして?構って欲しいんでしょ?それにボクらの気で
 そういう気持ちになるのと自然に発生する気持ちと結果的には
 変わらないんだよ」

「だけど」

「見合いで結婚するのと恋愛で結婚するのも10年も経てば同じことじゃろうて」

「いや、それとは少し違うような…」

「とにかく、それで決定よ」

「だめよ!」
(だめよ…同じじゃない…そんなことして好きになってもらっても、あたし…あたし…)

「え〜い、煩い!始めるわよ!」

「あっ」



「祝融の名にてこの桃まんに愛の力を」

「后土皇地祇の御名にてこの桃まんに愛の安定を」

「蓐収の名にてこの桃まんに富める愛を」

「禺彊の名にてこの桃まんに愛の誕生を」

「句芒の名にてこの桃まんに愛の成長を」


きら〜〜ん


「うむ、良い出来じゃ」

「まっ、こんなもんかな」

「さあ娘、この桃まんを早く洞仙に食べさせるのよ」

「きゃ、投げないでください」
 (え?これ、あったかい。それになんだか甘酸っぱいような気恥ずかしいような
  これがホレ桃まん…同じ…なのかしら?これを主人公に食べさせたら…)



「なんだ、ここにいたのか。心配したぞ、ヒロイン」

「主人公!」

「なんですか?部屋神様までお揃いで。ふふ〜ん、俺に強化を慎めさせる相談ですか?
 無駄ですよ。おっ、桃まんじゃん。丁度良い。アイテムが掘削されたみたいだから
 見にきたんだけど途中で侵入者がいて結構消耗させられたからな」

(これを食べれば…)

「やっとまともなアイテム掘り出す気になったんすね」

(主人公はあたしを…)

「次回はもっといいもの掘り出してくださいよ」

(でも、だけど…)

「じゃ、いっただきま〜す」

「やっぱ、食べちゃだめえ〜」

「ほえ?ごっくん」

「ああ〜、食べちゃった〜」

「やった」by 部屋神ズ

「な、なんだよ」

「主人公?」

「どうしたんだよ。あ、これ落っことした桃まんだな?」

「違うわよ。その…あの…なんともない?」

「何が?」

「桃まん食べてなんともない?」

「そういえば、出来立てって感じでなんか甘酸っぱいような気恥ずかしいような
 わけわかんない気分になったけど」

「それだけ?」

「ああ、…ホントに落としていないんだな?」

「うん」
(それじゃあそれじゃあ)

「まっ、いいや。じゃ早速次の強化するぞ、いくぞヒロイン」

「うん」




「…」

「失敗したのかな?」

「いや」

「じゃなんで変わらないのさ」

「洞仙の気持ちは昔っから変わらずあの娘にでれでれのべたべただったってことよ」

「あれで?」

「人間の中には自分の気持ちを表に出せない者もおるそうじゃからな」

「で、なんであの娘は、あんなに嬉しそうに洞仙についていったのさ」

「洞仙の気持ちがわかったからな」

「変わらないのに?」

「相手が自分を想ってくれる。それがわかれば女はどんなことでも
 堪えられるものよ」

「女って、わかんねー」

「ははっ、あの娘にとっては洞仙が変わったほうが辛かったようですね」

「木の部屋神にもわかるの?ボクには理解不能だね」

「しかし、なんつーか、俺たちにとって事態は一向によくなっていないってことだな」

「そういうことね、はあ〜」

「じゃあよ、俺の熱情の炎で桃まんをこんがり焼いて
 魅惑の桃まんならぬ媚薬の桃まんを洞仙に食べてせるってのは
 ガキでもできりゃ、仙窟どころじゃなくなるぜ」

「育児休暇って長いんだよ。龍脈が枯れちゃうよ」

「それより計画的に仙窟を作れるよう知恵の桃まんを食べてさせたほうが
 ええじゃろうて」

「ある程度骨組みは出来ちゃっているのよ。今更遅いわよ」

「まあまあ、皆さん魅惑の桃まんでも食べて一息つきましょう」

「これって?」

「倉庫にありました。しこたま貯め込んでますから少しくらい無くなっても
 気がつかないでしょうよ」

「しかし、いいのかなあ?」

「いいんですよ。だいたい木の部屋神であるわたしに倉庫部屋を
 運営させるほうが間違っているんですから」

「じゃまあ、いただきましょ」

「うん、こりゃうまい」







「なんか最近魅惑の桃まんがなくなっているような気がするんだか
 まさか窟子仙つまみ食いしているんじゃないだろうな?」

「そんなことしませんよ洞仙さま」

「で、なんかわけわかんないアイテムが入っているんだよな」

「わけわかんないアイテムって?」

「媚薬の桃まんだとか知恵の桃まんとか」

(部屋神様たち、まだあきらめてないのね、もう)

「ん?なんかいったか?」

「ううん、なんでもない。
 今日はどの部屋強化するの?」

「今日は、そうだな・・・」


おしまい〜♪




詠月コメント
わ〜い、HIROからSelenade二周年記念にSSを戴きました〜!
カオスのほのラブSSです〜。ノリのいいキャラ達が軽快なテンポで
話を進めていきます、楽しいSSですぅ。
いやもうHIROには大感謝です〜♪
(しかし自分もはよSS公開せんとなぁ。…ちょうどいい短編ネタが出来てはいるけど
 これを公開するとHIROに恩を仇で返すことになる…かもしれない〜、うぐぅ〜)




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