願いを叶えて…

by詠月(SELENADE)




「もうやめとけ栞」

「止めないでください…」

「しかし…」

「このパフェを全て食べきれば、私の願いは叶うんです」

「この…バケツパフェを…か?」

「私は貴方を必ず手に入れます…」



その目に狂気を感じ取った俺はすみやかに席を立ち店を後にした。



「あ、祐一さん…お代を…ゆういちさ〜ん!!」





一体なんだってんだ、おかしい、みいんなおかしい!!
昨日からだ…世界が狂っちまったのは……

最初は舞だった
わざわざ学校まで俺を呼びだして…



『祐一…どうして近づいてきてくれない…』

『真剣持った正段の構えの真正面に立てるヤツがいるかよ』

『頼む…受け取めてくれ…』

『断る!! 死んでしまう!!』

『これで私の願いが叶う…私はお前を独占したい』

『ソレは愛殺ってやつですかぃ!?』

『いや…私も後から行く』(はぁと)

『心中でもイヤだっ!!』



ダッ (きびすを返し、走り去る俺)





はあ、なんちゅう回想だ…

「ゆうーいーちー」

ひしっ(後ろっから手廻された)

なんだ!?

「ばあ〜♪」

真琴かよ…

「このマンガ、読んで」

「おう、家帰ったらな」

「だめ、ここで!」

「は? 道ばたでかよ!?」

「そうだよ」

やはり世界は徐々にではあるが壊れていってるようだ…

「イヤだ」

「読んでくれないと、泣くよ!」

『花のぴゅんぴゅん丸』のチビ丸か、お前は

「どれだよ」

「これ」

俺の目の前に、出された一冊の雑誌

『月刊ぼおいず☆らぶ』……ほぉ……

「で?」

「コレ読んで」

表紙から、野郎どうしが絡んでいる
とはいえ、男の俺からみればとても同性には見えん
胸の貧しい女の子同士と思えば…そそるかもしれないが…

「読んで♪」

……やおい…じゃない、ヤバイ……

「出来るかぁぁぁぁぁ!! 俺はノンケじゃあ!!」

一目散に走り出す

「祐一ぃぃ!! あたしの願いをぉぉぉぉ!!」

やっぱりそうなのか…おまえもそうだったのかぁぁぁぁ!!!(二重の意味で)





はぁっはぁっはぁっ…


「どおしたの、祐一君」

「はあっ……よおっ、まだ捜し物かあゆ」

…願いは、忘れたものを見つけること…
こいつなら安全なはず……

「え、う、うん…」

よかった、いつものあゆだよ



気を良くした俺は
コレまでの異常な事態をあゆに話すコトにした。



「一体連中…なにムキになって願いを叶えようとしているのやら…」

「…それでいいんだよ…」

意外な言葉に驚く俺

「いま…なんて?」

「祐一君……
 何も努力しないで、叶う願いなんて虫が良すぎると思わない?」

「ん〜、でもなあ」

「みんなが等しく、願いを叶えるように精一杯努力すべきなんだよ、違う…かな」

哀願するような目
う〜む強く否定したいところなんだがなあ

「まあ、そうなんだけど…」

しかしその方法が…どれもこれもアレじゃあねえ

「ホントに…? だったら…わかってくれるよね……」

「わかる…何を?」

あれ? なんか…妙にもじもじしてるな、こいつ
それに微妙〜に、後ずさっているような…

「もちろん…本気なんかじゃないよ…
 ほんのすこし…そう思っただけだったんだ…そしたら…」

「は?」(きょとん)

「そういうこと! じゃあねっ!」

「あ、おい!」

「うぐぅ、ごめんなさーーーーい!!」

たちまち見えなくなった



…あゆ…

お前…一体、何やらかしたんだ……





キイ…

「…なあ、名雪…」

「待って、今大切なところなの…」

名雪は部屋の中をぐるぐると回ってた。

その目は鋭く、壁際にぐるっと並べられた人形達を刺す程の視線だった

「けろぴー達とにらめっこして勝ったら、祐一はあたしのものになるんだもん」

バタン…


ダメか……





正気…俺の正気を護ってくれる相手……



「どうしたらいいんでしょう……」

「そうですね……この事態から逃れる方法はただ一つです」

「え? なんか方法があるんですか、秋子さん!!」

「ちょっと待って下さいね」



「お待たせしました」

それは、梅酒を漬け込めそうなくらい
大きな大きなガラスの瓶だった

「これです」

瓶の中で輝く半透明のオレンジ色……それは正に……


「これを食べ切れば、貴方の願いは叶いますよ」


「あぁ…ぁ……」


……俺は理性が破壊されてゆく音を聞いた……





☆ちゃんちゃん☆

2000/08/20UP


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