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廊下の角を曲がる。
耕一の寝室が見えた。
室内の明かりは消えていた。
寝室の前に辿り着くと同時に、躊躇なく和室の障子を開けた。
そこで、あたしが見たものは…………………………………………。
「な、なにしてるの、あんたら?」
あたしの身の前には、黒皮のボンテージ衣装に身を包んだ千鶴姉が立っていた。
「見て判らない? SMプレイよ」
「えっ、SM?」
見ると裸にひん剥かれた耕一が、荒縄に拘束され畳の上に転がっていた。その様を初音と蝋燭を手にした楓が正座をして見守っている。
ヒュン!
突然、千鶴姉の手に持っていた鞭が空を斬り耕一の背に襲いかかる。
バシィッ!
容赦のない一撃に耕一は仰け反った。
「ああああああ! いくぅううううぅ……」
その悲鳴に、あたしは思わず目を丸くした。裏声というのだろうか。まるで女のアノ声にそっくり。
「あら、梓知らなかったの? 耕一さんは苛められると女の子みたいになくのよ。面白いでしょ」
千鶴姉はそう言うと、再び右手を高く上げた。
ビシッ!
バシィ!
ビシィッ!
いつものように微笑みながら、千鶴姉は何度も何度も鞭を振るった。
そりゃ、仕事が大変なのは判るけど。そりゃ、あれだけ偽善ぶっていれば、ストレスも貯まるだろうけど、まさここれほどとは……。
「あん! ふはぁ! イイィ! はぁああああああ」
鞭を受ける度、耕一は女のような喘ぎ声を上げながら、陸に上げられた魚の如くビクビクと飛び跳ね痙攣した。目を覗き込んでみると……逝っちゃってる。いつかテレビで見た麻薬中毒患者のように、焦点の定まらないトロンとした目をしていた。
そんな耕一の痴態を、初音は正座をしてマジマジと手に汗を握り見つめていた。
「初音、どうしてあんたまでここにいるのよ」
「えっと、その、耕一お兄ちゃんは、誰かに見られていると興奮するっていうから………」
「そうよ梓。耕一さんは恥ずかしい本当の姿を、人に知られるのが好きなのよね」
千鶴姉が赤いハイヒールの踵でグリグリと踏みつける。
あたしはハッとあることに気がついた。
「も、もしかして、昨日や一昨日の事は、わざとあたしに聞かせるために……」
「そうよ」
千鶴姉はあっさりと肯定した。
「ねぇ耕一さん聞こえた? あなたのせいで勉強が出来ないって梓が怒っているわよ。少しは反省しなさい」
ビシィッ!
バシィ!
「あん! ふはっ! あぁ!」
度重なる攻撃により、耕一の体に赤い痕がみるみる刻まれていく。
「ねぇ千鶴姉さん。たまには私に代わってよ」
ピンク色の太くて怪しい蝋燭を手に持った楓が、耕一の体ににじり寄った。
「あら、楓ごめんさい。久しぶりの鞭だから、手がなかなか止まらなくって」
楓は仰向けになって寝ている耕一の横に座ると、蝋燭を男のアソコ……あんなに大きくなるんだ……の上で傾けた。
ポタリ。ポタリと熱そうな蝋が垂れ落ちていく。
「あっ! あん!」
初音も楓と一緒に耕一の近くに身を寄せた。
この部屋から初音を連れ出した方がいいような気がするけど、なんていうか声がかけづらい。
「耕一さん、感じますか? 気持ちいいですか? もっとして欲しいですか?」
悪魔のような笑みを浮かべながら、楓は嬉しそうに蝋を垂らした。
か、楓って、こういう性格していたんだ。知らなかった。つーか知りたくなかった。
初音は初音で赤黒く膨張した耕一のアソコをマジマジと見つめているし。
「イクッ、イクッ、イッちゃうーーーーーー!」
耕一が激しい喘ぎ声をあげた次の瞬間、アソコの部分が脈打ち白い液体を噴出した。
「きゃっ!」
飛び出した精液……だと思う……は、そばで見ていた初音の顔を白く汚した。
「これって、耕一お兄ちゃんの……」
初音は指でそれをすくうと夢でも見るかのように見つめた。
「初音、私にも耕一さんのを分けて」
楓は初音に顔を寄せると、頬につたう雫を舌ですくいあげた。
ピチャ、ピチャ。
それはまるで、ミルクなめる子猫のようだった。
「楓お姉ちゃん、美味しい?」
怖ず怖ずと聞く初音に、楓はコクンと首を縦に振った。
「初音も舐める?」
え、ちょっと、ちょっと待った。楓あんた何初音を誘っているのよ?!
あたしは思わず絶叫しそうになったものの、目の前で繰り広げられている異様な空気に体がすくみ上がり、声を出すことが出来なかった。
そんなあたしの気持ちを裏腹に、初音は精液のついた人差し指を口に運んだ。
チュパッ。
「初音、美味しいでしょ。耕一さんの赤ちゃんの素」
初音は恥ずかしそうに指をくわえながら頷いた。
イヤーーー! 初音が、初音が、あの純真な初音が、変な色に染まっていっちゃうーーーーーー?!
あたしは頭を抱えた。
みんな変だよ。おかしいよ。いつからこんな風になってしまったの?
目の前の事態に狼狽するあたしに、千鶴姉が持っていた鞭を差し出した。
「梓もしてみる?」
「え?」
「受験勉強でストレスが貯まっているんでしょ。スッとするわよ」
まるでお気に入りのおもちゃを渡す子供のような口振りだった。
「ご、ごめん。あ、ああ、あたし、じゅ、受験勉強があるから……」
「そう? 梓ならきっと楽しめると思ったのに」
千鶴姉は真底残念そうな顔をした。
「そ、それじゃぁ、あたし、勉強の続きをしなきゃいけないから……」
あたしは後さずりしながら部屋を出ると、素早く障子を閉め、自分の部屋へとその場から逃げだした。
月明かりが照らすの廊下を歩きながら、あたしは思った。
明日から勉強に専念出来そうだと。
いろんな意味で………。
<終わり>
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