サントリー「Boss・Limited」
内容量:170g
価格:130円
種別:コーヒー
販売:サントリー株式会社

HOTにて試飲

(デジカメ故障につき画像はありません)


別にどうでも良い話ではあるのだが、これまでここではサントリーのBossシリーズを扱ってこなかった。
これは主として、短い商品寿命で多品種をどんどん出していくのが缶飲料業界の常識なのだそうだ(日経ビジネス2000.11.20号。なお、以下伝聞の体を取っているものは、これによる)が、そのなかにあってBossシリーズは比較的新製品の投入が少ない部類に有るために、新しいもの中心にしていくと、Bossシリーズはどうしても扱いが悪くなってしまう、という事情による。格別の他意はない。
とはいえ、Bossは缶コーヒー業界第2位のボリュームセラーであり(らしい)、全く触れずじまいでは些か落ち着きが良くない(私が勝手に思っているだけだが)。
そこで今回、新製品が出たのを機に、晴れてBossのレビューを行うこととなった次第である。拍手。

さて、今回扱うのは「Boss・Limited(以下単にBossと記す)」である。130円、170g。いかにも「書いて下さいね」なシロモノだ。ほとんど妄想だが。
まぁ良い。気を取り直して書く。130円、170gである。普通に考えれば、スキモノどもが悦びそうな、重厚なコーヒー感を効かせたフルボディ、ハードコアな一見さんお断り系のテイストが想像されるだろう。
ところがこのBossは、予想に反して、スッキリとした切れの良い後味のコーヒーである。いや確かに缶にはそんな事も書いてあるのだが、意外、と言っても良いだろう。
もちろん、それはコーヒー感がないということを意味するものではない。しかしそれにしても、口中にふわっとコーヒーの香りが広がるとか、コーヒー成分の濃度の高い気体が拡散していくといったイメージではない。むしろ、その広がりは、一定の緊張を保ったまま、その輪郭をわずかに、優雅に広げていくエンタシス柱のような感じでさえある。
これはこれで悪くはない。ただ、一体どこを狙っているのかという疑問は残る。
くどいようだが、130円、170gである。高々10円のエクストラコスト、20gの容量の違いではある。しかし普通に考えれば、こうした「普通じゃない」製品を買うのは、「普通じゃない」嗜好の人たちで、そうした人の要求にこのテイストは合致しているのだろうか。
確かにこのBossの飲み口は、雑味のない、上質感を感じさせる良い仕事となっている。その意味では、普通じゃ満足できないスキモノ連中が御満悦であったとしても不思議ではない。
また、この秋冬シーズンのトレンドが(全くの私見だが)クリアビター系であることに鑑みれば、市場一般の動向に忠実な販売戦略とも評価しうる。
何より、サントリーはしっかりとしたマーケティングで定評がある(冒頭に記した「短命多品種の業界の常識に反して、少ない品種を確実に生き残らせる」戦略も、この現われであろう)らしいので、これもうまく消費者を限定したマーケティングの成果なのかもしれない。
とはいえ、缶飲料というのは、完全なニッチ市場を狙うのであれば格別、ボリュームセラーであることが命である。早い話が、コンビニにおいてもらえる程度には一般に売れるものでなければならない。
サントリーのポリシーも、「やるからには業界で一番、駄目でも二番手ぐらいは取れる」ものを目指していると聞く。
であれば、やはりアッパークラスの商品は、一般的なアッパークラスの嗜好に合わせるべきではなかったかと思われる。
何も、缶コーヒー市場では比較的後発のBossブランドが正面から占有率を伸ばすことで、「シンちゃんは世界の敵だ」、「俺と勝負しろ。シンちゃん」などと叩かれることを、シンちゃんこと鳥居シンイチロウ・サントリー社長が危惧したわけではあるまいが。

結論。上質感は確かに感じられるが、しかし所謂「ヘビーユーザー向き」ではない。120円なら、多くの人に喜ばれたろう。
市場はどう評価するのか、誰か教えてくれ。Tell me,ガツン。


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