ポッカ「クリスタル・ブラック/ミルク入り」

内容量:185g
価格:120円
種別:コーヒー
販売:(株)ポッカコーポレーション

ICEにて試飲


こういうものを書いて全世界へ向けて(実質的には日本国内向けだろうが)情報を発信している以上は、やはりそれ相当の勉強は当然のことである。したがって、ここに自らの不明を記さなければならないのは、全く汗顔の至りであるのだが、それとても自らの浅学のゆえであるのだから、致し方のないことである。
率直に言う。私は「コーヒーに牛乳を入れる」という文化がいつ頃、どのあたりで成立したものなのかについて、全く知識を有していない。
若干記せば、17世紀半ばごろから盛んになったコーヒーハウスに関して、「嫌な客には苦いままのコーヒーを出してやった」という既述も見られるようなので、ことによると、この頃既にミルクと砂糖を入れて飲む、というスタイルは一般的になっていたのかもしれない。
なお、紅茶(というか、TEA)に関しては、1655年に広東のオランダ領事館の館員がおこなったものが記録上紅茶にミルクを入れて飲んだ最初であるといわれる。
伝播や普及の点から見て、おそらくコーヒーと紅茶でそうは牛乳を入れて飲みだす時期を異にしないと思われるので、18世紀中には「コーヒーに牛乳を入れる」という文化はかなり一般に広まっていたのではないかと推測される。
ただそうであるとして、「コーヒーに牛乳を入れる(が砂糖は入れない)」というスタイルがコーヒー文化の上でどのような位置づけをされるものなのか、また今日どの程度のポピュラリティーを有しているのかは謎である。

という前振りでお分かりのように、今回扱うものはミルク入り・無糖のコーヒーである。その名をポッカ「クリスタル・ブラック/ミルク入り(以下CBMと略す)」と言う。
私の感覚でいうと、ミルクも砂糖も入れないものをブラックと称するのであるから、果たしてミルク入りのものにブラックと命名するのはいかがなものかと思われる。もっとも、このクリスタル・ブラックの「ブラック」は「ブラック・コーヒー」のそれとは限らないので、とりあえずは不問とする。なお、下記参考文献3によれば、やはりブラックとはミルクも砂糖も加えないコーヒーのことであって、ミルクを加えたものには特にホワイトという呼び名もあるそうである。これも初見であった。
さて、このCBMである。「Mr.」以降のポッカの缶コーヒーの例に洩れず、脱酸素製法による、雑味の無いスッキリとした飲み口が特徴といえよう。加えて、ミルクが入っていることで、単にスッキリしているのみならず、味わいに厚みが感じられる。
また、ミルクが加えられていることによりコーヒーの苦味が抑えられ、全体としてまろやかな仕上がりになっている。同じ条件であれば、アイスではホットの状態より苦味が勝って感じられるので、アイスで飲むならオリジナルの「クリスタル・ブラック」よりもこちらの方が飲みやすいのではないか。
とはいえ、既述のように、「コーヒーに牛乳を入れる(が砂糖は入れない)」というスタイルが余り一般的でないならば、このテイストには飲みやすさより違和感を覚えてしまうかもしれないが。
今回、CBMを飲むに際してはアイスという条件であったのだが、ホットで飲んでいれば、おそらくは熱に由来するボリューム感等で、もう少しリッチな印象を与えるものであったかもしれない。
しかし今回の条件下でも、CBMはなかなかバランスの取れた良い商品だと言って良いだろう。
元来の雑味の無い飲み口に加え、まろやかさの加わった味わいは、清涼と評して良いほどにスッキリした印象を覚えさせる。コーヒー本来の効果とあわせて、実にフレッシュな飲後感(表現の是非は別にして、言いたいことは分かっていただけると思う)を与えるものである。
と、私はこれを評価しているのだが、実際のところ、それは私が、平生「コーヒーに牛乳を入れる(が砂糖は入れない)」というスタイルに慣れていることが大きいのではないかと思われる。
ミルクも砂糖も入れたコーヒーと、ミルクは入れるが砂糖は入れないコーヒーの印象は、存外大きな違いがあるものなのだ。無論、ブラックとの違いは当然であるが。この違いは、ブラックと砂糖入りの違いよりも大きいといってもいいぐらいのものである。
したがって、このCBMへの評価は「好印象。但し貴方がこのスタイルに慣れていれば」といったところであろうか。

参考:
@「コーヒーという文化」UCCコーヒー博物館編・柴田書店
A「英国式午後の紅茶」暮らしの設計編集部編・中公文庫
B「珈琲」堀口俊英・永岡書店


愛の缶珈琲遍歴トップに戻る