コカコーラ「EMBLEM」
内容量:190g
価格:120円
種別:コーヒー
販売:日本コカコーラ株式会社
試飲:2001年1月
HOTにて試飲

(デジカメ故障につき画像はありません)


ところで皆さんは、「ジャングルの王者ターちゃん」というマンガをご存知だろうか。
そのマンガの中で、ある組織(つまり悪者である)が、ある人(つまり、主人公がこれから戦う相手である)に、通常は無意識下に於いてリミッターがかけられているが故に発揮することのできない、人間の身体的能力の100%を常に引き出させるような手術を施した、という場面があった。以下は、その場面における会話である(なお、私のうろ覚えの記憶による)。

「わかりやすく言うと、"いつでも火事場の馬鹿力を出せるぞ手術"だ」
「・・・わかりやす過ぎるぞ」

さて、今回のネタは「emblem」である。「ジョージア」の文字はない。それはともかく、何でも「脱酸素いれたてパック製法」というものが採用されているらしい。
「脱酸素いれたてパック製法」、なんというか「いつでも火事場の馬鹿力を出せるぞ手術」並みに分かりやすい、というか、分かりやすすぎるネーミングである。
無論、分かりやすいのは良いことだと思うが、それと「脱酸素いれたてパック製法」がアピールがあるかという事とは、やはり話が別だろう。
「emblem」という名前や、缶のデザインからして、狙っているところは「本物志向」だとかの線であろう。であればやはり、「脱酸素いれたてパック製法」はどうかと思われる。
とはいえこの「emblem」、CMキャラクターは田村正和氏である。ひょっとすると、狙っているキャラクターラインは「一見”王道を行く”かのようにも思えるが、実は”ちょっと変”」というところなのだろうか。

それはさておき。
プルを引いて、缶を開けてみる。と、コーヒーの香りがする。
同社のこれまでの「ジョージア」シリーズは、缶コーヒーの一つのスタンダードとされるものであり、つまるところ、缶コーヒーの香りであって、コーヒーのそれではなかったわけだが、それとは一線を隔すものである。まずは嬉しいことである。
尤も、世の中には「コーヒーではなく缶コーヒーが好き」という人も存在するので、そういう人には残念な話であろう。但し、香料はちゃんと入っているようだ(缶の原材料表示に書いてある)。
さて飲んでみての印象は、件の「脱酸素いれたてパック製法」の効果か、従来のものと比べて、いくらかスッキリしている感は確かにある。また、雑味、渋味といった嫌な要素が余り感じられないのは、評価に価する点であろう。
なんでもこの「emblem」は、これまでの同種のものと比べて使用する豆の量を増やし、高温で抽出することで、抽出時間を短縮させているとのこと(同社ホームページより)である。
セオリーどおりといってしまえばそれだけの話だが、その結果は雑味、渋味の少なさといった点に確実に結実している。また、豆の量を増えていることにより、厚みのあるコクが感じられる点も好印象である。
ただ、個人的には、もっと豆を増やしても良い。ブレンディには「コーヒー通専用仕立て」とかいう、同じ120円で生豆使用量1.5倍の製品があったと記憶しているので、ボリュームセラーのコカコーラ社に出来ない道理もないだろう。どのみち、缶コーヒー程度のものの生豆使用量が1.5倍になったところで、さしてコストの増大につながるわけでもないことは、「実業の日本」誌で「秘密」などと言われるまでもなく、おそらくは周知のことである。
従って、もっと豆を多く、もっと短時間で抽出を、と要望したいところだが、私の嗜好が一般のそれより濃い目のところにシフトしていることは、私自身了解済みである。マスプロダクトとしては、このくらいが良いところなのだろう事は、そう想像に難くはない。

そろそろまとめに入る。
全体のキャラクターラインとしては、広がりよりも厚みを感じさせる「コク重視」のタイプといえる。このあたりは、「本格派」、「本物志向」といった向きである。
既述のように、雑味、渋味も比較的少ないので、缶コーヒーのブラックを毛嫌いしていた人にも、少なくとも相対的には良い印象を持っていただけるのではないかと思う。
この「emblem」、ロジックとしては、極めて当たり前の手法を採用しただけのことであるかもしれない。しかしながら、当たり前の課題に当たり前に取り組む姿勢は、間違いなく評価につながるものなのである。


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