ダイドー「エスプレッソ」

内容量:190g
価格:120円
種別:コーヒー
販売:ダイドードリンコ株式会社

ICEにて試飲


エスプレッソである。
そういえば、かなり以前に、新聞の新製品紹介欄(とでもいうのだろうか)でそんなようなものを見たような気もするので、おそらく新製品というわけでもないのだろう。
が、まあ良い。今回はこいつを取り上げることにする。

おそらく一般にはエスプレッソといえば、濃厚な口当たりと強い苦味、そして凝縮された風味といったところをイメージされるのではないかと思う。
飲んでみると、ダイドー「エスプレッソ」は、まぁ、エスプレッソである。
一方で、エスプレッソといえば上記のような特性故に「胃に悪そう」というイメージを持っている方も多いかと推測される。
このコーヒーは、ミルク分等が加えられている(ちなみに、原材料は「牛乳、コーヒー、砂糖、クリーム、カゼインNa」となっている。)せいもあって、「まぁ、エスプレッソ」な感じがあるわりには比較的マイルドな仕上がりとなっている。「胃に悪そう」感はかなり軽微と言って良い。無論、そもそもコーヒーに弱い方にとってはこの限りではないのは言うまでもないだろうが。
ところで、上で「まぁ、エスプレッソ」と繰り返しているのは、私のスタイルでは、エスプレッソはブラックで飲むものだからである。
もっとも、彼の地では、エスプレッソに飽和量に達するほどの砂糖とミルクを加えて飲むのが一般的、との話もある。そもどういうスタイルで飲むかは各人の好みであるから、それは問題でもない。
ただ、したがって、通常飲んでいるところのエスプレッソと比して、この製品がどうだ、ということは評せられないという点においては、若干厄介ではある。
エスプレッソでは、缶コーヒーの中では他に比べるものが無い。つまるところ、形容詞というものが本質的に相対的な概念を表わすものである以上、これでは形容の仕様が無い、という話になってしまう。
ただ、そうも言っていられないので、少し射程を広げて言えば、(缶コーヒーではないが)明治「カフェレシオ」と似たようなテイスト、と言えば良いだろうか。
あれもエスプレッソを標榜している製品なので、似たようなテイストになるのは当たり前とも言える。尤も、牛乳屋さんとコーヒー屋さんという両者の違いははっきりその嗜好の指向にも現れてはいるのだが。
そんなわけで結論を書けば、缶には「リアルエスプレッソ」などと書かれてはいるが、実際のところは「エスプレッソ風フレーバーコーヒー」としておいた方が三方丸く収まると言うものよ、がっはっは、といったところだろう。
あるいは、世には「コーヒー」のほかに「缶コーヒー」という飲み物が存在するという便法に則れば、これはまったき「リアル(缶)エスプレッソ」と評せるかもしれない。

今回は、相対評価の比較対象が存在しないということで、「エスプレッソ」には少々キビシ目の評価になってしまった感もないではない。
ただ、わざわざエスプレッソなどという趣味性の強い製品を出すからには、そうした要求を満たす、120円かそこらの商品としては過剰気味な位のものを出してこないとなかなか高い評価は難しいのではないか。
また、缶のデザインも、それ自体は悪くないにしても、金属光沢の地に中央部に大きなロゴ、というデザインが比較的多用されている最近のトレンドの中にあっては、アピールに欠けるという批判は免れ得ないだろう。
折しも各業界で再編成の動きが急な昨今である。日本の市場規模からの適正なマスプロダクトの数が、既存のそれより少なくなるのは畢竟であろう。そんな中、市場占有率で他メーカーの後塵を拝しているダイドーは、もう少し思いきった差別化を図るべきではなかったろうか。


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