ポッカ「FirstDrip」
品名:コーヒー
価格:120円
内容量:190g
製造元:株式会社ポッカコーポレーション
試飲:2001年4月
HOTにて試飲

(デジカメ故障につき画像はありません)


今は昔。何故だかは知らないが、月に代わって不義を打つヒラヒラ・ミニミニなプリーツスカートの制服系小娘が一世を風靡していた頃のことである。
ポッカの「粒ポテトスープ」という商品のコマーシャル(その中では、「粒ぽてぃとスープ」と発音されていた)で、その小娘キャラが「ポッカでないとお仕置きよ!」とか言うものがあった。
それは、なんだか「あまりというにもあんまりな」ものに思われたので、その頃しばらく、私はポッカの商品を意識して買わないようにしていたものだった。なお、そのポッカ製品の不買が、「お仕置き」して欲しかったとかいう理由を持つものでないことは、一言附言しておく。

何故こんな話を書いたかというと、こういう事である。
「私は、あのコマーシャルが嫌いだ」
そう、稲垣吾郎氏が「コーヒーの伝道師、バリスタと呼んで頂けますか」という、ポッカ「ファーストドリップ」のコマーシャル。あれである。
私は別に稲垣氏が嫌いではない(そもそも、好き嫌いの対象として認知していない)し、かつて氏は「ソムリエ」とかいうドラマであんな感じの役を演じて世の好評を博したハズ(見てないので知らない)なので、おそらくは、あれは氏のイメージにマッチしたものなのだろう。とすると、世間的には結構良いイメージを以って迎えられているのかもしれない。

まあ良い。好き嫌いを別にして、あのコマーシャルから読み取れる、あるいは想像できることを幾つか挙げてみよう。
その一。商品ラインナップから、BM(微糖ミルク)が落ちている。
同社は、以前の「Mr.」や「ガティ!」では、製品展開の一角にBMを配することで、スタンダードなブレンドには、かなりマイルドな方向に振った個性を与えてきた。そのBMが無いということは、今度の「FirstDrip」では、スタンダードなブレンドに、従前のBMの顧客をも採り込むことを狙い、比較的ビターな仕付をしてきているものと思われる。昨年あたりからのクリアビター風なテイストのトレンドを意識したものであろうか。
その二。カフェ・オ・レがなく、その代わりにカフェ・ラッテがある。
どちらも日本語にしてしまえば「コーヒー牛乳」なわけだが、それでも敢えてカフェ・ラッテとしてきている以上は、単に「フランス語かイタリア語かの違いで、早い話がコーヒー牛乳」というわけでもないだろう。現に「ガティ!」のときはカフェ・オ・レだったのだから、特に意味が無ければカフェ・オ・レのはずである(目先を変えただけ、と言う説もあるが)。
してみると、「FirstDrip」はイタリアンテイストのコーヒーを目指しているのではないかと思われる。おそらくは、冒頭のコマーシャルの「バリスタ」もそのあたりを意識してのことなのだろう。

検証してみよう。
缶の原材料表示を見る限り、「牛乳、コーヒー、砂糖、乳化剤」で、この点は「ガティ!」と変わりはない。飲んでみても、脱酸素製法採用以来のポッカの伝統であるスッキリとした飲み口は健在である。とはいえ、単にスッキリ指向なのではなく、「ガティ!」に比べ、豊かなコクの感じられるテイストになっている。
また、これまでは「スッキリとした飲み口」を狙ったためか、ともすればなんとなくもの足りない、スッキリしすぎているきらいさえ感じられたこともあった。しかし、この「FirstDrip」では、後口に適度なコーヒー感を残す方向になっているようだ。
この変更により、「FirstDrip」は、おそらく多くの人にとっての「缶コーヒー」のイメージに近づいたものと思われる。特に意識するでもなく日常的に消費するものだけに、たとえ「殊更に美味しくはない」としても「違和感の無い」のものであれば、それは利点になるのだろう事は想像に難くはない。
加えて、スッキリとした飲み口、コーヒー感豊かなコク、香料無添加のピュアな香りといった要素は、商品として充分な競争力を持っているように思える。ただ、先の記述は、換言すれば、よっぽどの物好き以外は、わざわざ缶コーヒーを飲み比べて選んだりはしない、ということでもある。大手の中では比較的シェア下位に甘んじているポッカとしては、この辺が頭の痛いところだろう。
なお、上でも推測として書いた事だが、「ガティ!」がマイルドなしつけを施されていたのに比べ、「FirstDrip」は確かに若干「BM」よりになっている。
といって、では(これも上に書いたように)「イタリアンテイスト」だとか「エスプレッソ風」と言うべきモノかと言えば、それには疑問が残る。むしろ、同社の「ポッカコーヒー・オリジナル」のイメージに戻ってきた感がある。
「BM」よりになっているとはいえ、それはあくまで「ガティ!」との比較の問題で、最近のクリアビター風のテイストのものと比べれば、もっとビターなイメージでも良かったのではないかと思わせる余地はある。もっとも、ラインナップの中心とすれば、まぁ妥当な線ではあるだろうが。

結論:
「FirstDrip」は、やはり「カッフェ(某ジロ先生あたりはこういう発音をなさっているようである)」というよりは「コーヒー」なのであろう。であれば当然、「彼」は「バール(じゃないかもしれないが)のバリスタ」ではなく、「喫茶店のマスター」なのではなかろうか。
嗚呼、やっぱり私は、あのコマーシャルが嫌いだ。


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