UCC「KAFFA」

品名:コーヒー
価格:120円
内容量:190g
製造者:ユーシーシー 上島コーヒー株式会社

試飲日:せんせえ、忘れました。
試飲状況:ICE


UCCの新作、「KAFFA(以下"カーファ"と記す)」である。缶に記してあるように、無糖、ミルク入りという、いわゆる(というほど一般的でもないと思うが)ホワイトコーヒーの類である。これに先立って秋冬のラインナップになったポッカにも「ストレートラテ」とかいうホワイト系の代物が追加されていたので、今年の秋冬のトレンドはホワイトなんだろうかと思っていたのだが、その後の各メーカーの動向を見る限り、ラインナップにホワイト系を追加したことろはないようである。
察するに、ポッカはこれまでにも「クリスタルブラック・ミルク入り」というホワイト系の商品を持っていたし、UCCの場合には、どうもコンビニあたりの棚を覗く限りでは「BLACK」しか(あと「UCCオリジナル」は結構置いてある)置いてもらえていないようなので、ブラックベースで勝負するしかないという営業上の判断が働いたものと思われる。もっとも、その「BLACK」の方は2、3列分(もちろん棚2、3段ではなくて、横に缶2、3本分)場所を取っていたりするので、そのうち1列だけでも「BREAK」シリーズを置いてもらえないものかと思うのは、やはり素人の浅はかさであろうか。
さて一方のカーファだが、パッと見ての感じは色違いの「BLACK」であって、このあたりもおそらく売れ筋(また日経で恐縮だが、いつぞやのWBSの缶コーヒー売れ行きランキングでは5位であった。尤も、どんな母集団を対象にしたのかは不明だが)の「BLACK」のイメージを受け継ぐ狙いだろう。
その缶についてだが、一点「BLACK」との大きな相違について触れておく。
カーファの缶は、スチール製である。それがどうした、という意見もあるかとは思う。事実、通常缶コーヒーの缶はスチール製である。
これは、普通のジュース類の場合、内容物を詰めた後に窒素ガスを缶内に注入するため、薄手のアルミ缶でもガス圧で形状が保てるのに対し、コーヒーではガスを使えない(コーヒーの変質・劣化の虞がある)のでスチール缶を使わざるをえない、という事情によるものである。
そのはずなのだが、驚くべし。なんとUCCの「BLACK」はアルミ缶なのである。ゆえに缶を触るとベコベコと簡単にへこむし、持っても他社の190gものに比して軽い。へこんだり軽かったりするのはともかく、アルミ缶を採用する以上は既述の如き懸念は解消されているということだろう。であれば、当然カーファでもアルミでいけると思うのだが、なぜかこちらはスチール缶となっている。
あまり軽いと120円という対価に値する「(価値の)重さ」が感じられないとか、缶コーヒー飲みは缶にも重厚感を望む、ということならともかく、アルミ缶の、しかも同一メーカーの「BLACK」が成功しているのだから、スチール缶が販売上の要請とも思えない。こうなると、「BLACK」の品質管理のほうに疑問をもってしまうのではないか、などと要らぬ心配をしてしまう。

それはさておき、カーファである。缶を開けると、さすがに牛乳20%だけあって、色はミルクコーヒーの色をしている。香りもミルクコーヒーの感じで、ちょうど同社の「UCC・オリジナル」のコーヒー感を増やした感じである。
つまるところ、香りと色だけからいえば、カーファは「UCC・オリジナル」を(「乳飲料」ではなく)「コーヒー」の規格で作り直したもの、というイメージになるだろうか。
しかし、といってカーファはもちろん「UCC・オリジナル」のような(敢えて言えば)甘ったるいものではない。
飲んでみると、第一印象としてはミルク分のマイルドさを感じるのだが、その後に独特のコーヒー感を強く感じる。
この「強く感じる」というのは、いわゆる「コーヒー感がある」とか「厚みのあるコク、苦味」というのとは別種のものである。
ざらついた質感がある、と言おうか、例えて言うならば北方謙三氏のハードボイルド小説のような、ざっくりとした手触りである。これはもちろん味わいの印象を例えての話で、飲んだ後に舌にざらざらとコーヒー滓が残るとかいうことではない。
ある種、野趣や原初の趣といったことを連想させるこうした質感がメーカーの狙いであるならば、なるほど「カーファ」という「コーヒー」のルーツともいえる名前を関したことも理解できる。
なお、「カーファ」とは、「コーヒー」、「カフェ」の語源であり、元来は「パワー」の意だそうである。要は最初期においてコーヒーは「飲めば元気になる」、「疲れが消える」飲み物とされていた名残である。したがって「カーファ」とは今で言うコーヒーそのものを指す言葉ではなく、概念としては中南米の古代文明におけるココアや中国・東アジアで神薬・仙薬とされていた茶、キリスト教文化における神の血ワインや、ピラミッド建設でも活躍したビール、あるいは古代ケルトの命の水ウイスキーと、ちょうど同じものだといえる。
そういえば、コーヒーが奨励された背景には、労働者がアルコールでへべれけになってしまわないように、あるいは体を壊さないように、いわば「酔わないアルコール」として「代用品」的な意味合いがあったわけだが、コーヒーがアルコールの類と同じ概念を与えられていたものならば、それもむべなるかな、といった感がある。
さしずめ今でいえば、相撲における「力水」やラグビー部名物のヤカンの水のようなものということか。あるいはエクスタシーでもキメて、「カノジョー、俺とひとつになって、幸せになろうぜ、はひー」ってな感じかもしれない。
そんなこんなでずいぶんと個性的、あるいは挑戦的な一品となっているこのカーファだが、出た当初はともかく、各メーカーの秋冬物ラインナップが出揃った今となっては、後発商品に押されてかコンビニなどではトンと目にしなくなってしまった。
別に嗜好の多様化だとか多様性の意義などを説くつもりはないのだが、定番物しか店頭に並ばないのでは、こういうものを書いている方としては困ってしまうのである。
新製品が優先されるのは仕方がないにしても、せめて同じメーカーの「BLACK」の分を一本分だけでもシェアできないものだろうか。一度に10本も20本も買っていくことはまずないと思うのだが。営業部隊の諸氏の奮闘を切に願う次第である。

結論:
幸せかい、ハニー?

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