JT「Roots・プレミアム」
内容量:190g
価格:140円
種別:コーヒー
販売:日本たばこ産業株式会社

ICEにて試飲

(デジカメ故障につき画像はありません)


今は昔。バブル華やかなりし頃に経営コンサルタント氏の言に従い、結果時流を見誤り、世の経済と軌を同じくして自らの会社をも崩壊させるに至った経営者がいた。
後に、彼は書店で経営コンサルタント氏の著作、「もうだまされないぞ」を見つけ、こう呟いたと言う。
・・・お前に、な・・・。

そんな話(作りなんだろうか?)はさておき、JTの新製品、「Roots・プレミアム」(以下単にRootsとする)である。
缶コーヒー乃至コーヒーメーカーとしては馴染みの無いJTが出してきた缶コーヒーということで、キーコーヒーとの共同開発の由ではあるが、イメージ面で弱いという点は、おそらく否めないところであろう。そういった懸念を払拭すべく、又同時に後発組にとっての最大のハンデである認知度の低さをクリアするため、かなり露出を頑張っているようである。
ブラピを起用したテレビコマーシャルもかなりの数を放送させているようで、見る番組見る番組でこのCMを目にする。また新聞1面いっぱいに使った広告を一度ならず打ってみたりと、ずいぶんな力の入れ様である。
おそらく、認知度はかなり高まっているのではないかと察せられる。一方、その力の入った広告活動で購買者の食指をそそることに成功しているかという点では、若干の疑問が残る。
と言うのは、CMでメインに扱われているのは、同製品の「リアルブレンド」というものであるが、そこで私が受けた印象は以下のようなものであるからだ。
・・・ミルクコーヒー?
実際飲んでみると、大当たり、ほぼテレビ画面で受けた印象通りの味であった。そこで「リアルブレンド」は諦めて、こちらを扱うことにした次第である。
140円(税込み)という戦略的な価格もステキなこのRoots(重ねて書くが、ここでは単にRootsと言った場合には「Roots・プレミアム」のことである)、ロイヤルブルー乃至瑠璃色をベースに配色された缶は、常套手段ではあるものの、高級感を感じさせるものに仕上げられている。
又、形も独創的な形状が奢られている。とはいえ実際には、配色の加減もあり、店頭ではその形状は、形の奇異さほどには人目を引くものではない。もっとも、缶なぞはどうせ使い捨て(リサイクルはされるが、リユースはされない。つまり、いつぞや書いたペットボトルと同じ事ではある。どのみち消費行動が「環境にやさしい」はずはない、か)なのだから、どんな形だろうと構わないのだが。

そんなご託を別にすれば、このRootsはなかなか評価に値する一品である。
飲んでみると、単に苦いというのではない、コクのある苦味が広がる。良い豆を使っていることを確かに感じさせる。プレミアムの面目躍如、といったところである。
一方で、なめらかなミルク感もリッチな感じの演出に一役買っている。とはいえ、それは大量にミルク成分を入れました、というものとも少し違う。原材料表示を見ると、濃縮乳というものが入っているようなので、おそらくはその効果なのだろう。コーヒー感をスポイルすること上質なミルク感も備えているので、これは正しい選択といえよう。
また、甘ったるい過度のボリューム感ではないものの、砂糖の甘みがボリュームの土台を成して、うまく全体を支えているという印象がある。
総評すれば、プレミアムの名に恥じない良い仕事、といったところだ。誰が飲んでも、良いものだ、という印象を持ってもらえるのではないかと思う。
ただ、換言すれば、弱みも同時にそこにある、とも良い得るかもしれない。
専門家諸氏の意見に耳を傾けるならば、「嗜好の多様化が進んでいる」今日のプロダクトの取るべき道は「ターゲットを絞り、差別化により明確なアピールを打ち出す」事であるはずだからだ。
だが、しかし。缶コーヒー市場で売れ筋の商品を見て見よう。コカコーラ社の「ジョージア」とキリンビバレッジ社の「FIRE」である。
お気づきだろうか。両者とも、香料やらなにやら、原材料に様々なものが記されているブランドである。それが売れている。既に確固たる地位を築いた「ジョージア」だけならともかく、後発の「FIRE」も、いろんな物を入れていますよ、という味で成功している。
つまり、そういう事である。個性化か何か知らないが、少なくともマスプロダクトの世界では、いまだ足し算の発想が通用するのだ。
むろんそれは、認知度を上げる為にどんどん手が打てる資金力や、実際に消費者に手の届くところに商品を並べられる販売力があればこそ、の話だが。
後は市場の評価を待つのみ。思うに、上記の要因から、Rootsシリーズは相当成功するのではないか。専門家の意見より、きっと、市場の常識の方が強いだろうから。


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