サントリー「BOSS・赤道ブレンド」

品名:コーヒー
内容量:190g
発売:サントリーフーズ株式会社

試飲日:2003.05

試飲状況:ICE


コロンビア(コロンビア共和国:Republic of Colombia)。
言わずと知れた、アメリカ大陸の「発見」者に因んだ名前を持つこの国は、シモン・ボリバルら革命軍が宗主国スペインとの戦いに勝利し、1821年、ベネズエラ、エクアドル、パナマと連合、グラン・コロンビア共和国として誕生した。
4232万人の人口(2000年)を抱え、約114万平方メートルの面積と1万616キロの国境線を有する国土は、西経66度50'54”から79度1'23"、北緯12度27'46"から南緯4度13'30"、南米大陸北西端に位置する。
即ち、コロンビアはその国土を赤道が横切っているのである。故に、コロンビア産の豆を奢って「赤道ブレンド」を称する事には、羊を掲げて犬の肉を売るが如きところがあるわけではない。
ただし、コロンビアのうちで赤道が通っているのは、二十数県あるうちの南部四県だけであるし、世の中にはずばり「赤道」の名を持つエクアドルという国もあるので、これをもって赤道直下の代名詞のように扱うことには、聊かの疑問が残ると言わざるを得ない。
尤も、コーヒーのネーミングは、産地のみならずテイストの指向からも名付けられるものであるので、結局のところ、その当否は飲んでみてどうか、と言うことに尽きるのである。

とまあ、そんなわけで、早速今回の対象、サントリー「BOSS・赤道ブレンド(以下赤道ブレンド)」を飲んでみる事にしよう。
缶の意匠や「赤道ブレンド」という名称から、それはたとえばタヒチを舞台にしたゴージャンの絵のように、素朴で、しかしビビッドで力強い、あるいはどぎつい原色使いでアクの強い味わいを想像していたのだが、飲んでみると、以外に軽やかな感じである。同じ熱帯地方の産であるハワイ・コナほど軽やかな酸味というわけではないが、傾向としては同種の、バシッと苦味の利いたヘビー系というよりは爽やかな酸味のライト系といえよう。
もっとも、基本的なキャラクターラインはコロンビア豆のそれであり、植物系の(系のも何も、もちろんコーヒーは植物なのだが)印象を残すマイルドな味わいである。
むしろ、この赤道ブレンドの特徴を為すのは、その独特の苦味にあるかもしれない。既に書いているように、赤道ブレンドは苦味を利かせたヘビー系ではなく、軽やかな酸味のライト系である。ゆえに、苦味が特徴とはいえ、それはたとえばマンデリンのような重厚な、奥行きのある苦味というわけではない。そうではなくて、マイルドな味わいの中に、ふわっとした、軽い苦味が感じられるのである。
このふわっとした感じが赤道ブレンドの特徴で、その印象はしかし、いつまでも鮮やかな色合いを保ち続ける赤道直下、熱帯の花というよりは、美しく咲いては儚く散る温帯のそれのようでもある。であれば、そのテイストは淡い一炊の夢にも喩えられるかもしれない。邯鄲ブレンド、とかでも良かったかも。
いや、あるいは、この軽やかさは、70年代にはコロンビア革命軍をはじめとする左翼ゲリラとの、そして80年代から90年代にはメデジンのような麻薬カルテルとの内戦・内乱で有名だったコロンビアでの命の「軽さ」の象徴、と見れば、それは些か悪意が過ぎた解釈であろうか。

結論:
何処よりこの世こそが
夢幻だとしたら
(高々缶コーヒーの味がどうだとか)
貴女は無駄だと笑いますか?


参考:
コロンビア大使館ホームページ

「世界情報アトラス」imidas2003別冊付録・集英社
「世界各国要覧(10訂版)」2000年・東京書籍
「南北アメリカ」世界地理大百科事典(3)・1999年・朝倉書店

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