1マイルを狙え
彼らの言い分はこうである。
アメ〜リカでは、月3000円くらいで、高速な回線による常時接続ができマ〜ス。でもニッポンでは、ナローバンドのダイヤルアップ接続でも月々5000円オーバーしマ〜ス。ニッポンジンかわいそうデ〜ス。これはNTTが高いのも悪いデスネ〜。それにコレでは新規事業者が参入できまセ〜ン。NTTの料金引き下げないと駄目デ〜ス。
言わせていただけば、確かに日本のインターネット接続料金はまだまだ高いとは思う。しかし、それが偉い人の言うように、日本の国際競争力を削ぐ原因になるとは、正直私には考えられない。
大体、東京の物価指数がアメリカ比で165程度(7月21日新聞報道より)なら、向こうで3000円強のサービスが5000円というのは、不当に高いわけでもないだろう。日本の物価は平均でアメリカの1.6倍であり、故に日本の競争力はアメリカに劣る、という主張が全面的に通用しているなら話は別だが。
附言するなら、使うだけ無駄としか思えないケータイでのやり取りにかける費用は、経済的バックボーンを持たないコザルども(世間では、音便変化をしてコ”ギャル”と発音する習いらしい)をして、月に1万前後もザラだと聞く。サラリーマンにしたところで、ちょいと飲みにでも出かければ、新渡戸の一人や二人は飛んでいく。週休2日は「一日休養・一日教養」。志ある企業人の言葉に従えば、月に1万程度はすぐに浮く。
であれば、この世界史上希に見る総中流化国家において、5000円が支出できずに競争力が低下するに任せている奴がいるとは思えない。まぁ、世の中には「使うだけ無駄」な方を選択して5000円を振り分けない奴はいるだろうが、そういうチョイスをするバカは、所詮インターネットにつながったところで国際競争力なんて大層なものは望むべくもない。捨てておけば良い。つまり、問題無し。
もう一点では、NTTの高い接続料が障壁となって、新規通信事業者が参入できない、という指摘がある。これは簡単な話で、NTTのケーブルを使わなければ済む。
そうはいっても、いわゆるラスト1マイルはNTTが抑えているのだから、という反論もあろう。
たしかに、ADSLあたりを念頭に置けばそうかもしれないが、最近じゃぁ、無線インターネットだって珍しくはない。さらにいえば、例えば中部電力では各家庭に光ファイバーケーブルを敷延する工事を2000年中にも開始する(日経産業新聞1999年12月22日)との話である。似たような事業は、確か三重県も計画(こちらは正に企業向けのプランであったと記憶している)していたはずだ。
NTTの接続料がネックになるのなら、NTTヌキにすれば良い。手はいくらでもある。通新事業での参入を目指すうえで、何故NTTの回線を利用することにこだわるのか。私には一向に理解できない。

そういえば、「諸君!(2000年8月号)」でも何か書いてあったな。情報ソースがソースだが、あながちありえない話でもないか?



小沢一郎的こころ
今度の(と書いてはいるが、無論これを書いている時点では、既に過去の話である)選挙での自由党の公約に「全国民への携帯型インターネット接続端末の配布」というものがある。正確な表現は忘れたが、まぁ、そんな話だ。
「全国民がインターネット端末を持つ」ということは、「全国民がインターネット環境を持っていることを前提とした」システム作りが可能になるわけで、彼らしい「戦略」に溢れた主張ともいえる。
例えば、具体的なもののやり取りを必要としない行政サービスは基本的にネット上で、ということになれば、即効で役所の支所や窓口係の公務員の数は減らせる。諸々の処理の中間を間引くことで、行政サービスの対価も下がる。お手軽行革一丁上がりである。
一方で、「いんたぁねっとってなんズラ?」という方のためにサポート要員が必要になる。その程度の要求にこたえるくらいなら、ちょっと講習でも受けさせればインストラクターになれる。新規雇用の創出である。
また、「全員が持っていることを前提」としうるなら、大抵のことはビジネスになる。朝の通勤ラッシュで読むなら、新聞を広げるよりもケータイ端末の画面で確認だ。どうせ、その程度の読み方しかしちゃあいない。ついでだ。新聞や公文書はみなPDF形式に統一するか?そういうムーブメントが広がれば、情報の共有化は格段に進む。いつでも誰でもどこででも必要な情報にアクセスできる。手間要らず。きっと、生産性も上がる(別にITは生産性を上げるものでもないだろうが)ことだろう。
実にワンダーだ。
さらに、大概のことがケータイ端末でできるようになれば、最大のインパクトは他ならぬ「大概のことがケータイ端末でできる」ことだ。逆に言えば、「ケータイ端末さえ抑えれば、大概のことはできる」ということだ。
わざわざ国が全国民に配布してくれるんだぜ?
個々人のケータイ端末へ割り当てるIPアドレスで、個人情報なんざぁ丸分かりだ。いつどこで何を買ったとか、どんな情報にアクセスしたか、とかな。
「柔らかな国民総背番号制」ってとこだな。いや、全く、実にワンダー。彼らしい「戦略」に溢れた主張といえる。



780億円の行方
1box一日4800円、だそうだ。街中を歩いていたら、店の前の幟に書いてあった。
それが高いのか安いのかは、私の知るところではない。そもそも私はレンタカーを利用しないので、相場が分からないのだ。
とまれ、わざわざそうやって書いて出してあるということは、大体そんなところが相場なのだろう。
面倒なので、1日5000円としよう。実際には税込みかどうかで数字が変わってくるのだが、まぁ、気にしないことにする。で、2週間で7万円。1404人なら、実に9800万円超である。

何の話がしたいのかというと、扇千景・保守党党首の言うことには、今度の総選挙には780億の費用が掛かっている、というはなしだ。
内訳は知らないが、上に見たようなレンタカー代なんてのも、細かく見れば入ってくるのだろう。
その9800万の使い道が、あれだ。「何とか党の某でございます」とか言って走っていくやつだ。
やってる当人は何のつもりなのか知らないが、名前を連呼するだけのものが投票の際の判断材料として資するとは思えない。精々、「よぉし、何とか党の某だな。俺様の安眠を妨げるたぁ良い度胸だ。その名は覚えたぞ。貴様と貴様の党には未来永劫票は入れねぇ」などと思われるのが関の山だろう。少なくとも、新聞の投書欄あたりを見る限り(おぉ、そんなものを見る奴が居るのかぁ←俺)はそういうことだ。
実際には9800万では収まらないだろう。名前の連呼のためにアナウンス役を雇ったりするわけだ。どう安く見積もっても日当8000円は下らないだろう。諸々込みなら、「何とか党の某でございます」のためだけで、3億円では足りなくなる。
一般社会では、そういう用途は「無駄遣い」という。
支出の削減か財政再建か、はたまた政治改革か知らないが、何故そういう金の使い方をやめないのだろう。
政治には金がかかる。選挙には金がかかる。とはいえ、端から見れば、それは金のかからないやり方をしないだけの話でしかない。
いっそネット投票でもできるようにしてくれれば、システムさえ作ってしまえば、後はほぼタダで済む。いや、保守とか管理の人間は要るだろうが、何億とはかからない。
ついでに候補の政策やなんかも閲覧できるようにしてしまえば、新聞にイメージ広告(と言ってしまう)なんぞ入れなくても済む。費用も浮くし、紙の無駄使いもしなくてよくなる。何より、イメージ投票をやめられる。
政治には金がかかる、選挙には金がかかる、というのはまた、彼らの常套句でもある。
それを全て否定するつもりはないが、だからといって無駄使いもしょうがない、という道理はない。
支出の削減か財政再建か、はたまた政治改革か知らないが、端的に言って「やる気ないだろ?」との印象はぬぐえない。なにやら一を見て十を語るような話になってしまったが、千里の道も一歩から、である。


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