形態は機能に従う
ドイツの自動車メーカーにアウディという会社がある。そのアウディ社のクルマ、アウディTTに対する私の初見の印象は、こうである。
「なんか犬みたい・・・」
そんな犬みたいな顔のアウディTTであるが、巷の自動車雑誌を覗いてみたところによると、そのデザインをバウハウス風と称するらしい。なにも犬だから「バウ」、犬といえば「ハウス」で「バウハウス」というわけではなく、端的に言えば「形態(デザイン)は機能に従う」という思想に基づいたデザインムーブメント、もしくはそうした流れの中にあるデザインなどを指すわけである。 いかにもドイツな発想といえる。
一方、そうしたドイツ的機能主義・合理主義に対するもう一方の雄、情熱とデザインの国イタ〜リアでは、合理性に淫する(というのも妙な物言いだが)あまりに美しくないものを作ってしまったのではご先祖様に申し訳ねぇ、アベマリアっ、とばかりに、非常に美しく、そして実用的でないものが多く存在する、といわれている。
広く巷間に上るものでは「座ってはいけない椅子」や「履いてはいけない靴」などがそうであろう。
では、人よ。ここ日本のメーカーの手によるものに「座らなければいけない椅子」があるのはご存知か。
東京大学名誉教授・加藤寛一郎氏は書いている。「私はテンタツから、歳暮に座椅子をもらった。座椅子は当時現れた新製品で、もらったのは、テンタツの試作品であった。不思議な座椅子で、人が座らないと、後方に倒れてしまう代物であった(「この道」中日新聞7月17日夕刊)」

私は人に言った。試作とは言え、座らないと倒れてしまう座椅子ってのは、どうもねぇ。
彼は答えた。しかし、君。背面は垂直に立っているより若干寝ていた方が具合は良かろう。下に脚の無い座椅子の場合、そうなれば重心は座面より後ろにずれる。無駄に重く作るならともかく、機能に忠実に作れば、そうなるのはむしろ畢竟である。
ふうむ。私は唸った。
因みに、テンタツは正しくは天龍工業という。そして天龍工業は、航空機座席の一流メーカーだとの事である。
再び加藤氏の筆による。「航空機は、軽量化のため、ぎりぎりの設計をする。オーバーストレングス(必要以上の強度を持たせてしまうこと。つまり、その分無駄に重たくしてしまうこと)は、設計者の最大の恥とされる(同)」
設計は機能に従う、のである。



君は2千円札を見たか
日銀が7月18日に発表したところによると、2千円札の流通枚数が3億枚を突破したそうである。この3億枚という数字は、例えば五千円札のそれが4億枚超であることに比すれば、大体5千円札の4分の3という事で、つまりは日常的に財布の中に1枚2枚あってもおかしくない数字ということになる。
日銀側が言うのには、入金に限って言えば、銀行ATMの75%程度で2千円札が使用できるようになるなど、「機械対応が進む中、偽造しにくい2千円札の流通促進に努めてきたことが背景」だそうだが、一部には日銀が行員の給与の一部を2千円札で「現物支給」するなどした結果ではないかという指摘もある。
尤も、他人様の財布の中を覗くような趣味はないので、実際のところはわからないが、銀行関係者の言によれば「普及している実感はない」そうである。
まあ、「偽造しにくい」とか言われても、銀行ATMでの入金に限っても75%程度でしか使えない、いわんや自販機に於いておや、というようなものは持て余している人もいるのではないかと推測される。
そこで朗報。2千円札のお膝元とも言える沖縄・首里城の入場券売り場の券売機は、さすがに2千円冊対応だそうだ。
さあみんな、2千円札を持って沖縄に行こう!



或る日常の刑法各論
先日然るところで食事をした時のことである。
会計の際、レジのアルバイト嬢(多分)が「5100円のお返しになります」と言った、ような気がした。受け取って、数歩歩いた後、よくよく見てみると、私の掌には5千円紙幣が一枚と、5百円硬貨が一枚。多分、私が聞き間違えたのだろうと思っていると、同じく載っていたレシートには、お釣りは5100円となっている。
脳内のシナプスの電光石火の連携で想起されたところによると、渡された釣銭が正しいそれよりも多かったことに気付いていたにもかかわらず、返却せずに領得した場合には詐欺罪、後に気付いたものの、やはり返しに行かずに領得した場合には占有離脱物横領が成立する。
が、世の中には可罰的違法性という話もあることだし、「てめぇ、お釣りが多いじゃねぇか。どう落とし前つけてくれるんだ、嬢ちゃん」などとねじ込まれても困るだろう。
やはり、こういう場合には、そのまま400円くらい黙って貰っておくのが社会的マナーというものであろう。「あのう、お釣りが間違っているようなのですけれど」などと申し立てた挙句、内心「くすくす。ヒトネタ、ヒトネタ」とほくそえんでいるヤツこそ、公序良俗に鑑みて犯罪的と言えるかもしれない(俺)。


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