Winter Familyとの活動

Danの実質的なメジャーデビューはいうまでもなくEdgar Winter Groupでありまして、その3枚のアルバム"They Only Come Out At Night", "Shock Treatment", "With Rick Derringer"そしてEdgarのソロ"Jasmine Nightdreams"の全てに於いて、主人公たるEdgarに一歩もひけをとらない、非常に重要な役割を果しています。

実質的な、というのは、EWG加入前にThe Legends名義で、"Shock..."にも収録されている"Rock And Roll Woman"をシングルで発売している為。
The Legendsは、Danと兄のDavidがやっていたローカルバンドで、マイナーレーベルから何枚かシングルを出している、との事ですが未確認です。
何故かこの"Rock..."はエピックからの発売となっていて、DanがEWGに引っ張られていなければ、The Legendsが本格的なデビューを飾る予定だったのかもしれません。(付記1参照)

Edgar Winterという人はちょっと不思議なところがあって、White Trash時代のJerry LaCroixに対しても(そしてWhite Trash/EWGのプロデューサーを勤めたRick Derringerに対しても)、ボスづらをしない、というか、へたをすれば自分の存在感が薄くなっちゃうようなカツヤクを周りの人に許す、というのが行動パターン。
そのおかげでDanの才能がバクハツした、ともいえる訳で、まあ大恩人といえましょう。

"They Only Come Out At Night"
(「エドガー・ウインター4」)


100万ドルのギタリスト、Johnny Winterの弟としてデビューしたEdgarが、"Keep Playing That Rock And Roll"のスマッシュヒットを飛ばした、大人数のブラスロックグループWhite Trashを解散、心機一転結成した4人組がEdgar Winter Groupで、これがWhite Trashのイギリス公演直後だった事や、その派手な衣装、音楽性から、当時イギリスでなかなか盛り上がっていたグラムロックを指向するプロジェクトだ、などといわれたものでした。

インスト曲としては珍しい全米No.1を獲得した"Frankenstein"(この曲の次にNo.1になったインスト曲は「コマネチ愛のテーマ」だと)を含む"They..."、ジャケ写にも出ている基本メンバーは、

 Edgar Winter
 Ronnie Montrose
 Dan Hartman
 Chuck Ruff

の4人ですが、曲ごとにパーソネルが結構ばらばらで、"Free Ride"などはリズムセクションが全然別のメンバーになっています。(付記2参照)
また、"Catchin' Up"という曲がアルバムに先行してEdgarのソロ名義で発売されていたらしく(B面は"Round And Round"(?)..."Catchin'..."はEdgarのベスト版CDに収録)、Edgarのソロプロジェクトがパーマネントなグループ活動に発展していった様子を伺わせます。

全10曲の内、Danの単独作品は

"Free Ride"
"Autumn"

の2曲、他に

"Hangin' Around"
"When It Comes"
"Alta Mira"
"We All Had A Real Good Time"

の4曲をEdgarと共作していて、これらの内"When..."を除く5曲ででリードボーカルを担当。

この中では何といっても"Free Ride"が知られていますが、シングルバージョンはギターソロなど大幅なオーバーダビングがほどこされたものになっていて、一聴の価値ありです。
この曲はその後Jackson5みたいな兄弟コーラスグループ、Tavaresがカバーしてヒット、Danも"Relight My Fire"でセルフカバー(リミックス版の12インチシングルあり)し、更に映画"Air America"のサントラではEdgar Winter & Rick Derringer名義で新たに録音されていて、EdgarとRickの"Live In Japan"でも演奏されています。
また、Audio Adrenalineというゴスペルのグループもカバーしている模様。

 

"Shock Treatment"
(「恐怖のショック療法」)


日本では前作より恐らく人気の高い本作、メンバーも

 Edgar Winter
 Rick Derringer
 Dan Hartman
 Chuk Ruff

で固定され、ゲストも一切クレジットされていない、トータルアルバム的な色彩すらある名作です。

当時のミュージックライフに載った記事で、プロデューサーたるRickの発言として、「徐々にDanのアルバムになりつつある」というのが有りまして、その言葉の通り、Danは単独で

"Some Kinda Animal"
"Easy Street"
"Sundown"
"Rock And Roll Woman"
"Queen Of My Dreams"
"Maybe Someday You'll Call My Name"
"River's Risin'"

Edgarとの共作で

"Miracle Of Love"

と、全12曲中ドトーの8曲を提供。リードボーカルも"Easy..."と"Miracle..."を除く6曲で担当。

この中では"Easy Street"の人気が高く、Van Halen脱退後のDavid Lee Rothがミニアルバム"Crazy From The Heat"(Edgarが大活躍しているよ)でカバーした他、近田春夫のハルオフォンもライブでレパートリーにしていたと記憶します。

尚、この"Easy..."ともう一枚のシングル"Queen..."はEdgar, Dan, Chuckの3人で録音されていて、Danがギターを担当、ベースはEdgarのシンセ・ベースになっているのが面白いところ。(付記3)
Ronnie脱退後、Rickを入れない形のEdgar Winter Group、というのが存在したんでしょう。

"Jasmine Nightdreams"
(「ジャスミンの香りと夜の夢」)


DTS、という特殊なオーディオフォーマットでしかCD化されていないこのEdgarのソロアルバム。
これを再生するには、プレーヤもアンプもDTSに対応している必要があり、これを揃えるには10万円がとこかかる、というフザけたお話ですが、ワタクシは買ってしまいました。ううっ。
この盤は一般のCDショップには置いて有りませんが、高級オーディオを扱うお店や輸入LD/DVDを置いてるところでは結構見かけるみたいです。
一部の曲は、Edgarのベスト版CDでも聴くことができます。

Edgarのソロですが、一部の曲でRick Marottaがドラムを、Johnny Winterがギターを担当している他は、EWGのメンバーで録音されています。
"Keep On Burnin'"という曲では、Danのジミヘン風ギターソロ、を聴くことができます。実際歯で弾いていたらしい...

ぜんたいにEdgarの"陰"っぽい部分が強調された作りですが、ここでもDanはCo-Createrというクレジットがされている他、

"Oneday Tomorrow"
"Tell Me In A Whisper"

を共作しています。
"Tell..."はなんとセルジオ・メンデスがカバーしているようです。

"With Rick Derringer"
(「謎の発行物体」)

 

"They..."と"Shock..."はアメリカでもCD化されていますが、本作は日本でのみCDが出ました。
それももう手に入りにくくなっているようですが...
不思議なジャケ写を撮ったHiro、という方は日本人写真家だったと記憶しています。

さてEWG最後の作品となった本作、タイトルの通り、それまでEWGでは曲も書かずボーカルも取らなかったRickを大きくフューチャーした内容になっていますが、Danも負けてはいません。

"Cool Dance"
"Paradise/Sides"
"Can't Tell On From The Other"

を単独で提供、

"People Music"
"Diamond Eyes"
"Let's Do It Together Again"

をEdgarと共作して、このうち"Let's..."以外の曲ではボーカル(Edgarとの掛け合いデュエット3曲を含む)を務め、Rickメインの3曲に堂々と対抗しています。

その他の作品

ちょこちょこ、っとクレジットされているのは他にも有ったかと思いますが主なものを。

Johnny Winterのアルバム"Still Alive And Well"には最高のロックンロール・チューン"Can't You Feel It"を提供。
この曲はJohnny、Randy Hobbs、Randy Hugesのトリオで恐らく一発録りに近い形で録音されていて、素晴らしい出来です。

同じくJohnnyの"Saints And Sinners"、Rick Derringerのオーバープロデュースが物議を醸した本作(その分、Johnnyはどうも...という人にも聞き易いかも)では、"Rollin' 'Cross The Country"をEdgarと共作、ベースとリズムギターも弾いています。EWGライクなポップロックチューン。

CD化されていないDerringerの"If I Weren't So Romantic, I'd Shoot You"には、"Power Of Love"を提供。

Ronnieの結成したMontroseのラスト"Jump On It"(あのジャケット覚えてますよね?)には、"What Are You Waitin' For"と"Rich Man"の2曲を提供。切ない名曲。

(この項続く...かもしれない)

(付記1) The Legendsに関しては、http://www.delerium.co.uk/archive/us6070s/l2.html に情報が有ること発見。ここに記録されているシングルは6種類有り、その何曲かは近年発売されたコンピレーションで聴くことができるようです。

(付記2) ベースはRandy Hobbs、ドラムスはJohnny Badanajeke。Randyはお馴染みとして、JohnnyはMitch Ryder & The Detroit Wheelsのメンバーだった人。その後Rocketsというグループで結構長く活動していた様な気がします。

(付記3) ちょっと間違いがあって、"Easy..."ではDanもベースを弾いています。Edgarのシンセ・ベースとずっとユニゾンだけど。またこの曲はギターレスなのでギターも弾いてません。

 

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