葵ちゃんがゆく!
高砂 蓬介 【up dete 2000'02'19】


ある日の朝、美咲輝学園高等部校門にて。
「ねー葵ちゃん、今日のお弁当なーに?」
「ん? 今日はコロッケ。あ、こら! お昼休みまで待ちなさい!」
葵の抱えるお弁当の堤に手を出そうとしたはやなを、葵がたしなめる。
「うー」
「めっ!」
ほとんど親子のような光景。二人ともそこはかとなく楽しそうなその様子は見ていて心がなごむ。
と、その前に立ちふさがるものが現れた。
「待っていましたよ鈴鳴はやな……いえ、銀星姫! 今日こそこの僕と尋常に勝負をふぐうっ!」
  きらーん☆
と思ったら、葵ちゃんチョップによっていきなりお空の星に。
「ほえ? 今紅刃さんが出てきたような気がしたんだけど」
「気のせいでしょ。ほら行こ、はやなっ」
星になった和麻を尻目に二人は元気に登校した。

お昼休み。 「葵ちゃんのごっはんっ♪ 葵ちゃんのごっはんっ♪」
「はいはい、がっつかないの。せっかくだからさっちゃんと綾ちゃんも誘って、十月あたりで食べよっか?」
「そだね」
連れ立って教室を出た二人の前に、はーちゃんマス……げふんげふん、松田七月男がやってきた。
「はーちゃーん、お昼一緒に……」
  ずどぅむっ!
やたらと重そうな音と共に七月男はボールのごとく廊下のはじへと転がっていく。
「あれ?」
「どしたのはやな」
「今だれかに呼ばれたような気がしたんだけど」
「幻聴でしょ。早く行かないとお昼休み終わるよ?」
「それもそうだね」

放課後。
『……緊急放送です。現在「アリエル」で世界征服部が活動中、正義の味方部は至急現場に急行して下さい……』
「ティンクルセイバー、参上です!(早いっつーに)」
「はーちゃん、勝負やで!」
青春の熱闘に身を投じている二人の影で、なにやら八草重と司木がこそこそと活動していた。
「いいですか? 彼女が桜流さんに気を取られているうちに僕たちは……」
「なんで俺がそんなこそこそしなきゃならねーんだよ。大体天羽センパイ怒るんじゃねえか?」
何か裏工作があるようだ。具体的な内容は筆者が考えるのがめんどいので伏せておこう。
「とにかく、前みたいな独断専行は避けて下さいよ」
八草重が行動を起こそうとすると。
「ちょっとあんたたち」
「なんです? おや、貴女は確か京月さ……ぐはあっ!?」
「八草重! お、俺は別に何も……げふ!」
……合掌。(ちーん)

その日、生徒会室にて。
「松田七月男はともかく、紅刃、紫閃、朱砂……すべて一撃ですか」
「はい。彼女の戦闘能力は並みの極星を遙かに凌駕しています」
「かねてよりの懸案がいよいよ現実味を帯びてきたましたね。色はどうしましょうか」
「24色も今まで出てきたのが奇跡ですからね。『虹』なんてどうです?」
京月葵を極星とする新部活「帰宅部」の発足に関する議題は紛糾し、
三時間に渡る協議の結果「うぃずゆうの真のヒロインはのえみんだ」
という結論が導き出されたとか、出されなかったとか。
それはただ、それだけのお話。



痕餓鬼(あとがき)
タイトルは「葵ちゃんがゆく!」とでも。というわけで葵ちゃん暴走SSでした。
帰宅部を正式な部活として発足というネタは他ならぬ僕自身の願望だったりします。
何しろ学校終わり次第即帰宅、どれだけ早く家に帰れるかに命賭けてますから。
生徒会の導き出した結論に関しては何も言わないで下さい。
ほら、よくあるじゃないですか。真剣になにかを討議しているとだんだん話題がそれていくことって。
まあ、そんなわけでした。