【1】初めはゆったりと。途中で補正。

 日本女性、なかでも粋筋の女性の着物姿には、世界中のどの民族の女性にも負けない色香がある。しっとりと落着いた微妙な季節の変化の中に咲く、一輪の花。静かだが、凛として咲き誇るその花には、歴史と伝統の日本文化の粋が詰まっているのである。
 色、柄、生地、四季折々の空気感、見た目の清涼感や温もり、天然の素材に天然の染料を使って、卓越した職人の技がつくり出す美の世界には、独特のものがあり、西洋織物とはまったく違う美的センスが、着る者の側に要求される。
 神楽坂でお座敷に出ていた神楽坂さつきさんが、ある時、着物を着て電車に乗っていたら、
「素敵な着物姿ですね」
 そういって、見知らぬ女性に声をかけられた。
 聞かれるままに、着物の着方などについて話していたところ、ある大物女優に着物を着せて欲しいと頼まれた。
 まさかと思っていたら、本当に電話がかかってきて、その後、何度か着付けに行った。
「着物は、ただ着ればいいというものではないの。体と着物が融合しなければ、美しい姿にはならないの」
 そう言ってから、
「着物は紐で着るのだけれど、締め付ければいいというものではないの。いくら締め付けても動いているうちに形は崩れる。それをそのままにしていたら、だらしなくなるので、初めからゆったりと着て、途中途中で、体と着物を馴染ませながら修正するの。そうすることによって、ゆったりとして優雅で美しい着物姿になっていく。着物を着る時には、だから神経をかなり使う。でも、そうした緊張感があるからこそ、粋筋の人の着物姿は魅力的に見えるのよ」
 体に着物を馴染ませる。そうすることで、自然でゆったりとした姿がつくり出せる。
 そして、着物を着ているという意識を常に抱いておくことも、美しい着物姿の大事なポイントなのである。


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