【5】夏姿 ゆかた

 夏の夕暮れ、涼を求めて表に出るゆかた(ゆかた)姿の女性には、とりわけ日本女性の風情、色香がある。
 そういうと、神楽坂さつきさんは
「最近は、洋風感覚の模様や色使いをしたゆかたを着る若い女性の姿が目立ちますが、ゆかたはやはり白い木綿に藍染で、たとえば朝顔や桔梗、撫子などの模様をあしらったものがいい」
 そう言ってから
「木綿の白地に本染(藍染)で描かれた日本の花をあしらったゆかたに、洒落た博多の夏帯をして素足に下駄履きという姿には、優美と怠惰な雰囲気の入り混じった妖艶な空気感があって、日本女性の魅力を一層漂わせている」と付け加えた。
 最近のゆかたには、そうした風情のあるものが少なくなってきた。
 赤やピンクや黒といった原色をますます際だたせる化繊のゆかたに、金や銀の帯を締め、足下はスポーツシューズで自転車に乗っていたり、スポーツバッグを斜め掛けにしている姿を見ると、驚きで目が釘付けになってしまう。あれもやはり「ゆかた」というのだろうか、と神楽坂さんに感想を求めると、
「それでも、ゆかたを着るということは、魅力をそこに感じているからだと思う。でも、伝統的な文化、風情、情緒、洒落、粋という感覚は意識して、大事にした方がいい。なぜなら、それが日本の文化であり、誇りだから」と。
 世阿弥の『風姿花伝』の中に「秘すれば花」という有名な言葉がある。
 芯の強さ、性格の良さ、知識を持っていても、それを表に出さないで、秘めて隠す姿こそが花であるというように解釈すると「時代が変わっているのだから洋服の流行のようにゆかたも変化していい」というだけでは納得できない気がする。
 草柳大蔵の『花のある人 花になる人 』(グラフ社)という本の中にも、確か、そんな内容のことが書かれていた。
 歌麿や独特のタッチで女性をとらえた竹久夢二、伊東深水など、ゆかた姿の女性を描いている画はたくさんある、が、どの画にも共通しているのは、匂いたつような女性の色香であり、奥ゆかしさである。
 女性のゆかた姿には、やはりそういうものを求めたいと思うのだが、どうだろうか。


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