ブドウと「サートゥインス」と「テロメア」

2006.12.22

ブドウ 

 ブドウは、漢名「葡萄」の音読み。鎌倉時代に、中国から甲斐国勝沼(山梨県甲州市)へと伝わったヨーロッパ系のものが、甲州ブドウの原型、そして、明治時代には、アメリカから、ヨーロッパ系のブドウと交配したものが伝わったとされている。
 甘みは果糖やブドウ糖で、酸味成分は、有機酸のクエン酸やリンゴ酸、そして味に大きな影響を与えている
酒石酸が含まれている。他に、ビタミンや、カリウムなどのミネラル、種子にはリノール酸、皮にはポリフェノールが含まれている。ちなみに「グレープシードオイル」は、ブドウの種子から取れる油(リノール酸)。
 ポリフェノールには、アントシアニンカテキン、ジヒドロフラボノール、フラボノール、そして、プロアントシアニジンと、スチルベノイドのレスベラトロール(リスベラトロール)がある。

レスベラトロール(リスベラトロール)resveratrol

 ポリフェノールは、植物がほとんど持っている色素のことで、レスベラトロールは染色を促進するスチルベン(ギリシャ語で「輝く」という意味)のひとつ、スチルベノイド。
 スチルベノイドは、植物が、病原菌の感染や紫外線、動物や昆虫の摂食などのストレスから身を守るフィトアレキシン(phytoalexin)である。たとえば、植物にとっては、紫外線(日光)がたくさん当たることはストレスになるのだが、逆にいえば、それが、色素を濃くすることにつながり、レスベラトロールなどのポリフェノール含有量が増えるのである。
 トランス・レスベラトロール(トリヒドロキシスチルベン)の含有が最も多いとされるのは、ブドウの果皮、種子、葉である。他に、ブドウを乾燥させたレーズン、ピーナッツの実や皮、大豆、イタドリ(タデ科)にも含まれている。
 レスベラトロールには抗酸化作用、他に、LDL-コレステロールの酸化を抑制するため、動脈硬化や、肝臓にコレステロールが蓄積するのを予防する。シクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害して、炎症を抑え、血小板の凝集を抑制する。また、ガン細胞の発生を抑制し、異常が発生した細胞を自ら死に至らしめる「アポトーシス」の活性を高めるため、抗ガン作用があるといわれている。
 1997年、イリノイ大学薬学部のジョン・ペズート博士(Dr. John Pezzuto)が、「ブドウから抽出したレスベラトロールは発ガンを抑制する」と「サイエンス」誌に発表し、1999年には、レスベラトロールによるアポトーシスの活性化が発表されるなど、様々な研究結果が報告されている。

脱アセチル化酵素、サートゥインス「Sir2」

 ジョン・ホプキンス大学のイースト酵母研究家ジェフ・ボーク氏らは、「人間の細胞と同様の構造を持つ、酵素(イースト細胞)の寿命が、レスべラトロールによって70〜80%も延長する」と、2003年9月の「ネイチャー」誌で発表した。
 この酵素(タンパク質)は、サーチュイン(サートゥインス)「Sir2」と名付けられるが、サートゥインスにはいくつかの種類があるため、それらをサートゥインス・ファミリーと呼ぶ。
 Sir2は、カロリーを制限すると活性化することがわかっており、また、老化(認知症などを含む)や寿命に関わっていることから「寿命制御因子」とも呼ばれている。
 人間のDNA(遺伝子)の染色体は、ヒストン(タンパク質)にDNAが巻き付き、何重にも折りたたまれている構造になっていて、伸ばすと1本の線状になる。低濃度のSir2は、ヒストンのアセチル化を防ぎ、DNAの末端部位を露出しにくい構造にして細胞老化を抑制するとされている。

テロメアtelomere

 DNA(遺伝子)の染色体の末端は、二重ループ状(TループとDループ)になり、通常は露出しないような形になっている。その末端部位に存在して、DNA分解酵素による分解を回避し、保護や安定性を維持する役目を担っているのがテロメアである。
 1930年代後半に発見されたテロメアは、ギリシャ語の「末端」と「部分」を意味する造語で、「末端小粒(まったんしょうりゅう)」とも呼ばれる。
 1961年、細胞分裂の回数に限界があるという説「ヘイフリック限界」が発表されるが、その後、末端部位にあるテロメアの長さが分裂回数を制限しているのではないかという説が発表される。
 人間の体を構成する細胞は、1個から分裂して約60兆個にまでなる。60兆個になるためには、分裂の限界といわれる約50回くらいの分裂が必要になるため、発生過程の胚では、例外的に、テロメラーゼ([Telomerase]テロメアーゼともいう)が活性するとされている。
*胚・・・多細胞生物の個体発生の初期段階。
 テロメラーゼ(RNA依存性DNAポリメラーゼ)とは、末端にあるテロメアを合成する役目を持つ酵素である。しかし、人間の体細胞(生殖細胞以外の細胞)では、通常、発生過程の胚や、幹細胞にしか存在していないとされている。
 細胞は60兆個になった後も、細胞によって回数は異なるものの、恒常的に分裂が繰り返されている。
 テロメラーゼが存在しない人間の体細胞では、分裂(複製)が行なわれる際に、末端部位のテロメアの長さに違いが出てしまい、長い方を短い方に合わせるために、少しずつ短くなっていく。テロメアが半分くらいの長さになると、染色体は、ループ(Tループ)を形成できなくなり、隠れていた末端部位が露出してしまう。同時に、細胞分裂の間隔は次第に長くなる。
 それ以外に、生活習慣や病気などでDNAが損傷を受けた時にも、修復するために複製(分裂)が行なわれる。その際、間違ったDNAをそのまま複製しないように、なんらかのシグナルが送られるため、細胞の分裂停止が行なわれるとされている。細胞が損傷を受けた状態と、テロメアが露出した状態は、同じような状態となるため、送られるシグナルも似ているといわれている。そのため、テロメアが一定の長さになると細胞分裂を止めて、老化(細胞老化)が始まり、テロメラーゼが存在しない体細胞のテロメアは長くなることがないため、やがて細胞が死んでしまうのではないかと考えられている。
 また、テロメアを失うと細胞は不安定になる。末端部位が保護されていないためにDNAの分解や、アポトーシス(細胞の自死)、異常を引き起こす原因の一つである末端の融合が起こる可能性もあり、これらを阻止するために、先に細胞老化を起こして分裂を停止させるのではないかとも考えられている。
 生殖細胞(卵巣や精巣の卵子、卵細胞、精子、精細胞など)では、テロメラーゼが働くため、正常な状態では、テロメアが露出する状態になることはない。テロメラーゼは、テロメアに誘導されて、短くなったテロメアから優先的に伸長させるそうだ。生殖細胞は、個体を越えて引き継がれることから、永続的という意味で「不死細胞」とも呼ばれる。
 そして、もう一つ、「不死細胞」といわれるものに、ガン細胞がある。ガン細胞の分裂回数に限界がないのは、このためと考えられている。しかし、ガン細胞のテロメアは、正常な細胞に比べて短く、不安定な状態になっているものが多いそうだ。
 正常な細胞でも、テロメアが短くなるにつれて、ホルモンの産出や分泌量などに影響を与えているのではないかと考えられている。そして、60歳くらいから、分裂停止の長さに近づき始めるとされている。
 細胞分裂が停止すると、細胞の数が増えないため、減少していき、それが、体内機能の低下につながる。
 では、テロメアが短くならない限り、老化が起こらないかといえば、そうではなく、十分な長さがあっても分裂が停止することもわかっている。たとえば、活性酸素による酸化や、DNAの損傷による突然変異、老廃物の蓄積などが原因とされている。

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