有機酸(organic
acid、alkanoic acid)
炭素を主成分とする「有機」が化合している物質の中で、酸の性質(酸性)を持つものを「有機酸」という。
有機酸はカルボン酸とも呼ばれる。
*IUPAC[国際純正・応用化学連合]の命名法では、カルボキシル基(炭素原子に、水酸基1つと酸素原子が二重結合した官能基。親水性)で、置換する前の炭化水素の語尾eをoic
acidとしてある。
有機酸のおもな種類
炭素数の違いなど、構造により名称(慣用名と[IUPAC名])がある。
ちなみに、炭素数が7以下のものを短鎖脂肪酸という。ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸など。
炭素数が8〜10のものを中鎖脂肪酸という。カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸など。
炭素数が12以上のものを長鎖脂肪酸という。
脂肪酸(脂式カルボン酸)
・ギ(蟻)酸[メタン酸]
・酢酸[エタン酸]
・プロピオン酸[プロパン酸]
・酪酸(ブチル酸)[ブタン酸]
・イソ酪酸
・吉草酸(バレリアン酸)[ペンタン酸]
・イソ吉草酸
・カプロン酸[ヘキサン酸]
・エナント酸(ヘプチル酸)[ヘプタン酸]
・カプリル酸[オクタン酸]
・ペラルゴン酸[ノナン酸]
・カプリン酸[デカン酸]
・ラウリン酸[ドデカン酸]
・ミリスチン酸[テトラデカン酸]
・ペンタデシル酸[ペンタデカン酸]
・パルミチン酸(セタン酸)[ヘキサデカン酸]
・マルガリン酸[ヘプタデカン酸]
・ステアリン酸[オクタデカン酸]
・オレイン酸
・リノール酸
・リノレン酸
・ツベルクロステアリン酸[ノナデカン酸]
・アラキジン酸[イコサン酸]
・アラキドン酸
・エイコサペンタエン酸
・ベヘン酸[ドコサン酸]
・ドコサヘキサエン酸
・リグノセリン酸[テトラコサン酸]
・セロチン酸[ヘキサコサン酸]
・モンタン酸[オクタコサン酸]
・メリシン酸[トリアコンタン酸]
芳香族カルボン酸
・サリチル酸[ヒドロキシ安息香酸]
・没食子酸(トリヒドロキシ安息香酸)
・安息香酸[ベンゼンカルボン酸]
・フタル酸
・ケイ(桂)皮酸(β-フェニルアクリル酸)
・メリト酸(メリット酸、黒鉛酸)[ベンゼンヘキサカルボン酸]
オキソカルボン酸
・ピルビン酸(オキソプロピオン酸、α-ケトプロピオン酸、焦性ブドウ酸)
その他
・シュウ酸[エタン二酸]
・乳酸(α-ヒドロキシプロパン酸)
・酒石酸
・マレイン酸
・フマル酸(フマール酸、アロマレイン酸、ボレティックアシッド、リケニックアシッド)
・マロン酸[プロパン二酸]
・コハク酸
・リンゴ酸(ヒドロキシコハク酸)
・クエン酸
・アコニット酸
・グルタル酸
・アジピン酸[ヘキサン二酸]
・アミノ酸
・L-アスコルビン酸(ビタミンC)
腸内の有機酸
腸内には、乳酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、酪酸、ギ酸、吉草酸、カプロン酸などが存在している。
おもに、糖から生成されるが、アミノ酸からも生成される。
揮発性脂肪酸とも呼ばれる酪酸、吉草酸などには臭いがあり、タンパク質(アミノ酸)により、便などの臭いがきつくなる。
体内での有機酸のおもなはたらき
・腸内を酸性にする
pH6以下の酸性の状態で、酪酸、酢酸、プロピオン酸などは、病原菌(大腸菌、サルモネラ菌、赤痢菌など)の感染を抑制する。乳酸やコハク酸はpH6程度ではほとんどはたらかないともされているが、酸性の状態をつくりだすため、腸内環境を整える。
・大腸のエネルギー源になる
酪酸は、大腸のエネルギー源の約80%を占める。
・カルシウムの吸収を促進する
酢酸、プロピオン酸、クエン酸は、カルシウムの吸収を手助けする。
牛乳が分解されてできる乳糖の一部は、腸内細菌により乳酸、酢酸、ギ酸などをつくりだす。
・ガン細胞を抑制する
酪酸は、DNAの中のヒストンのアセチル化を抑制する「p21」を活性し、細胞の自死(アポトーシス)や、ガン細胞を正常な細胞へ変化させるなどのはたらきがあるとされている。
*p21・・・細胞を修復するために細胞分裂を一時停止したり再開したりする「細胞周期抑制因子」
・二次胆汁酸への変換を抑制する
胆汁は、脂肪の分解吸収をする。肝臓でコレステロールの代謝により生成されて、胆嚢に送られ、胆汁酸(コール酸)として分泌されるが、腸内細菌により二次胆汁酸(デオキシコール酸、リトコール酸)に変換される。二次胆汁酸はDNAを傷害するため発ガン性が高いとされている。ガラクトオリゴ糖は、二次胆汁酸の生成を抑制する。
・腸内で、ニトロソ化合物やアンモニアなどの有害物質を抑制する
腸内で、タンパク質を悪玉菌が分解する過程で、発ガン物質を持つニトロソ化合物(ニトロソアミンなど)が生成される際、酵素ニトロリダクターゼが関わるが、乳酸菌はニトロリダクターゼの働きを抑制する。
・コレステロールの合成を抑制する
糖質から生成されるプロピオン酸や酪酸は、肝臓での脂質合成を抑制する。
・酢酸やリンゴ酸は、グリコーゲンの貯蔵を促し、脂肪酸からエネルギーを産出する。
・酢酸は筋肉、心臓、腎臓などのエネルギー源になる。
・クエン酸、酢酸は血行を良くする
・アミノ酸を合成する。