グリア細胞(glia cell)

2008.6.3

脚光を浴びる「グリア細胞」の働き

 神経伝達を司る神経細胞の補助をしていると思われていた、グリア細胞。
 グリアとは、ラテン語の「膠(にかわ)」のことで、神経細胞をくっつける役割をすると考えられたことから、そう命名された。
 しかし、1990年代頃に、神経系の働きを担う重要な役目を持つことがわかってきた。

グリア細胞は、伝達速度を早める 

 温度が伝わる神経は複数あり、「温かい」と「熱い」は、伝わる速度の違う神経で、脳に伝えられる。
 危険な「熱い」という感覚を伝える神経の伝達速度は早い。それにはグリア細胞が関わっている。
 感覚などは、神経細胞に電気信号が流れ、神経細胞から伸びる枝のようなものを伝ってシナプスへ、そして、また次の神経細胞へと、複雑なネットワークを次々に電気信号が伝わっていく。
 シナプスは、信号のやりとりをする箇所で、経路は、シナプスで決まる。
 枝のようなものは神経繊維で、「軸索(じくさく)」という。軸索は、通常は、ー(マイナス)になっており、電気信号で、ドミノ倒しのように、順番に+(プラス)に変わることで枝の部分を情報が伝わっていく。
 しかし、グリア細胞が軸索の外側を部分的に取り囲んでいる場合は、囲んでいる部分を飛ばして電気信号が伝わるため、スピードが早くなる。危険な状態は早く伝わるしくみになっているのである。

グリア細胞の種類 

 グリア細胞には、ミクログリア、アストロサイト、オリゴデンドロサイト、シュワン細胞などがあり、免疫、ニューロンへの栄養供給、伝達速度を早めるなど、神経系のバランスや環境を整えている。
 アストロサイト(星状グリア)は、脳神経系でもっとも多く存在し、シナプスの形成や維持、コントロール、情報伝達の効率を良くするなどの役割を担っている。

グリア細胞が多く存在する「脳」 

 人間の大脳皮質には、グリア細胞がニューロン(神経細胞)の1.8倍くらいあるそうだ。ちなみに、ネズミは0.4倍、猫は1.4倍、そして、クジラは6倍と、人間より多い。
 脳の神経伝達は、これまで、神経細胞のみが行なっていると考えられていた。しかし、神経細胞を補助する控えめな細胞と思われていたグリア細胞が、神経細胞同様、刺激を受けて興奮することもあり、独自の伝達経路を持っていることもわかってきた。

 グリア細胞は、神経細胞の無用な興奮を抑えて、脳が異常をきたさないようにバランスを整えている。つまり、神経細胞とグリア細胞は、主従の関係ではなく、お互いがバランスをとることで働いているのである。(山梨大学 医学部薬理学講座 小泉修一教授の研究より)

 両者の神経系の違いは、電気を発生して伝達する神経細胞に比べて、グリア細胞の伝達は、物質(
ATPや神経伝達物質)によるため、ゆっくりとした伝達になる。

グリア細胞は、記憶や学習をコントロールする 

 記憶は、新しい電気信号がつくられることによって生まれる。

 信号を受け取る神経細胞の突起(スパイン)は、常に形を変えているが、そこに、グリア細胞の刺激が大きく関わっている。グリア細胞が巻きつかないスパインは消え、接触するとシナプスは成長して安定する。つまり、神経の伝達がうまくいくのである。このことから、記憶や学習などの高次機能はグリア細胞がコントロールしているといえる。(東京大学医学部 岡部繁男教授の研究より)

 アインシュタインのグリア細胞は、普通の人より多いという研究結果もあるそうだ。

ミクログリアの不思議な働き 

 神経細胞は、病気やケガでダメージを受けると、SOS信号を出す。その信号をキャッチして、神経細胞に近づいて修復するグリア細胞がある。グリア細胞の一種、免疫に関わるミクログリアである。

 ミクログリアは通常、突起を何本も伸ばした形で、信号を察知しているが、信号を受けて活性化すると、突起を短くして、修復に向かう。しかし、修復不可能なギブアップ信号を受け取ると、ミクログリアは神経細胞を殺し、食べて処理してしまう。(九州大学 大学院薬学研究所 井上和秀教授の研究より)

 スイッチの切り替えが、何によるのかはまだわかっていない。

ミクログリアの過剰な活性を抑えてアルツハイマー病を抑制できる? 

 アルツハイマー病は、脳の海馬に、タンパク質のゴミ「アミロイド」が蓄積することで脳組織を破壊し、海馬が萎縮して発病する。

 ミクログリアは、発症の初期では、この「アミロイド」を食べて処理してくれることがわかっている。しかし、処理しきれなくなると、ミクログリアが過剰に活性して、正常な細胞まで破壊してしまうこともわかってきた。(放射線医学総合研究所 分子イメージング研究センター 樋口真人チームリーダーの研究より)

 つまり、ミクログリアをコントロールすることができれば、アルツハイマー病の進行を抑制することができるかもしれないのだそうだ。

参考:サイエンスZERO「脳の知られざる主役 グリア細胞」NHK教育 2008年3月8日放送

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