歯周病

2008.9.1

口の中のサイレント・キラー(静かな殺人者)

 歯周病は他人ごとではない。
 厚生労働省の、平成17年「歯科疾患実態調査結果の概要について」(4mm以上の歯周ポケットを持つ者)を見ると、45歳以上では約半数が歯周病である。 
 歯周ポケットとは、歯科医などで検査される、歯と歯肉の隙間の溝の深さのことで、健康な状態では1mmくらい。なので、軽度の人も加えると20〜60代の人では、約8割が歯周病という調査結果もある。
 歯周病は、虫歯と合わせると、歯を失う原因の約7割にあたる。
 自覚症状がないうちに進行してしまうので、口の中のサイレント・キラー、また、生活習慣にも関係しているため生活習慣病ともいわれている。

歯周病は感染症

 歯周病(歯槽膿漏)は、歯の周囲の組織(歯肉、歯槽骨など)に、歯周病菌が感染して炎症を起こす病気。
 炎症は、体の免疫機能が、菌やウイルスなどを無毒化したり死滅させるために闘っている状態で、ケガをしたときに患部が腫れたり、発熱したり、化膿したりするのと同じである。
 小さな子供は、虫歯菌同様、親の唾液に含まれる歯周病菌が移ってしまうこともある。
 初期段階を「歯肉炎」、そして歯槽骨が炎症を起こしてしまうところまで進行したものを「歯周炎」という。
 
 歯周病の原因は、食べものの「糖分」ではなく、その中に含まれる歯周病菌で、糖分は「菌」のエサになる。
 歯周病菌に限らず、「菌」は生物なので、エサや、その他の環境条件が揃っていることで増殖する。
 体質が関係しているとも思われている。確かに、「歯」を丁寧に磨いても虫歯になる人もいるかと思うと、磨かなくてもなりにくい人がいるのは事実。体質もある程度は影響している。歯並びが良いと磨きやすいために口の中を清潔に保ちやすいということもあるようだ。
 
しかし、体質の遺伝というよりは、歯に対する関心度や、生活習慣などが同じであることが原因となる、後天的な生活環境要素が大きいようである。

歯周病のおもな原因

 口の中には、歯肉、粘膜、舌などに、虫歯菌、歯周病菌を含めて400種類以上の菌がいるといわれている。多くは体にすぐに害を及ぼす菌ではないが、免疫機能が低下している状態では、悪玉菌になってしまうこともある。
 歯周病は、歯周病菌の他にも、唾液の量や質、免疫機能、加齢、自分の歯の本数、糖尿病、喫煙、体質などが関係している。悪い条件が重なるほど、歯周病にかかりやすくなる。
 食物を消化する酵素が含まれている唾液には、消化を助け、食べ物を飲み込みやすくする役割がある。また、食物や呼吸などで口の中に入ってきた菌、あるいは元々、口の中にいる菌を有害化させないようにする免疫機能も持っている。唾液に含まれているリゾチームという酵素には殺菌作用がある。
 しかし、いい菌ばかりとはいえないので、ケガにツバをつけるのはやめたほうが良さそうだ。  

歯周病菌VS免疫

 食物などの糖分をエサにして、歯周病菌や虫歯菌(ミュータンス菌など)はネバネバした物質をつくる。そこへ細菌が集まってきてデンタル・プラーク(バイオフィルム=生体膜)という細菌の塊(集合体)ができる。
 歯と歯肉の間などに見られる、白っぽい物質がデンタル・プラークで、1mgの中に1億個以上もの細菌がいるともいわれている。
 温度、湿度、エサなどが揃っている口の中で、細菌は増殖しやすくなり、内毒素(リポポリサッカライド=LPS )をつくる。
 そこで、唾液に含まれるリゾチームや、白血球(好中菌、リンパ球など)マクロファージ抗体(lgAなど)など免疫細胞が出動して闘うが、一度、細菌が塊をつくってしまうと、手強い相手になる。
 プラークは、唾液中のカルシウムと結合すると、歯磨きなどでは取れない「歯石」になり、歯周ポケットをさらに深くしてしまう。
 大切なのは、食後の歯磨きで、菌を付着させないことである。歯磨きをしやすいように、また、噛み合わせを良く
するためにも、治せるものなら歯並びは治した方が良いのかもしれない。

歯周病の症状

 歯肉(歯茎)の内部は、歯の根(セメント質)の周りを歯根膜、その外側にある歯槽骨が歯をガードしている。
 歯肉に炎症を起こす歯周病の初期には、歯肉が腫れたり、歯肉にはたくさんの毛細血管があるため出血しやすくなる。また、歯茎に違和感を感じ、歯肉が赤紫色になったり、菌が増殖するために口臭を生じ、歯肉がゆるみ、見える部分が多くなるため歯が長くなる。
 唾液の分泌量が少なくなる睡眠中は、通常でも菌が増殖しやすくなるため、朝、口の中がねばついているようにも感じる。
 歯石の蓄積や、歯肉が炎症を起こしてゆるむことで、歯と歯肉の間の歯周ポケットが深くなると、歯周病菌が中まで入り込み、歯槽骨にも炎症を起こす。歯槽骨が破壊されてしまうため、歯がグラグラするようになり、最後には抜けてしまうこともある。

歯肉を形成するコラーゲン 

 炎症を鎮めようとして、歯肉のコラーゲン繊維でできているコラーゲン組織まで破壊してしまうのが歯周病だ。
 コラーゲンは、皮膚、骨、軟骨などもつくっているため、肌や関節などに良いということは多くの女性が知っているが、歯肉の結合組織もコラーゲン組織などで形成されている。 

 コラーゲン組織の生成には、ビタミンC、ミネラルなどが関わっている。動物の中で人間やモルモットなどは、生合成に必要なL-グロノラクトン酸化酵素を持っていないので、ビタミンCを体内でつくることができない。
 厚生労働省が1日の必要量として推奨しているビタミンCの量は、多めに必要な妊婦などを除いては、100mg。
 三大栄養素などに比べると、野菜嫌いなどでない限り、それほど多い量ではないように思われる。
 ただ、ビタミンCが腸で吸収されて血中に送られる吸収率は7〜9割。そして、大量に摂ると吸収率はもっと低くなる。体内での最大貯蔵量も決まっていて、必要以上に多く摂っても尿などから排出されてしまう。毎日、必要な量を摂らなくてはいけないのである。
 水溶性で、熱や光に弱く、酸化しやすいという性質のビタミンCは、切ることや水や加熱などを用いる料理でも失われやすく、素材の鮮度によっても含有量は減っていく。
 大量のアルコールや喫煙などは、体内で無害化するためにビタミンCが使われてしまうので、不足がちになる。

歯周病と他の病気

 糖尿病の人は、慢性的に血糖値が高くなり免疫機能が正常に働かないため、感染しやすい状態にあるとされる。また、血糖値のコントロールができないために、歯周病菌の繁殖を助けて、歯周病になりやすいといわれている。
 逆に、歯周病の人は、糖尿病になりやすいともいわれており、歯周病や糖尿病の改善で、もう片方の症状が良くなることもあるそうだ。
 体内で炎症を起こしたり、組織が破壊されると、タンパク質の一種、CRP(C- リアクディブ・プロテイン、C-Reactive Protein、C反応性タンパク)が血中につくられる。数値で、炎症を起こしているかどうかを調べる検査にも用いられている。
 CRPは、肝臓でのブドウ糖の代謝を抑制し、サイトカインTNF-α(腫瘍壊死因子)同様に、血糖値を下げるホルモン「インスリン」の働きを邪魔するため、糖を抑制する機能が低下して、血液中や体に余分な糖を蓄積してしまう。 
 肥満の原因となる内臓脂肪はTNF-αをたくさんつくりだす。結果的に、免疫機能を過剰に強化してしまうことで炎症反応を促進するため、肥満の人は歯周病になりやすいといわれている。
 死滅した歯周病菌の「内毒素」も、TNF-αの産出を強める。

 歯肉の毛細血管から歯周病菌が入り込むことによって、アテローム性プラークが血管をせばめたり、血管の内皮を傷つけるため、動脈硬化の原因にもなるそうだ。心臓の弁や内膜に菌が取り付くと、心臓内部で炎症を起こすこともある。

 誤飲などで気管に歯周病菌が入ると、気管や気管支で炎症を起こしたり、肺に入ると肺炎の原因にもなる。

 妊婦の場合は、子宮を収縮させるため早産になったり、胎児の成長に影響を及ぼすこともあるそうだ。

年齢と歯

 歯を失うことなどで噛む機能が低下すると、同時に唾液の分泌量が少なくなる。すると、唾液に含まれる消化酵素も少なくなり、食べ物を噛みくだく機能も低下するため、胃や腸など他の消化器官に負担をかける。
 消化機能が低下すると、栄養素を、血液などから全身に届ける機能も低下して、老化や全身の機能低下を促進する。もともと老化により唾液量は少なくなるといわれている。
 噛むことは、血流を良くして、脳の働きも活性化する大切な機能である。 
 老化により、味覚を含める感覚機能低下などによる食欲の減退や、食べ物を飲む込む咀嚼筋、舌の筋肉の低下で、固い物を食べるのを避けるようにもなる。それらのことが、噛む行為を少なくし、唾液分泌量を少なくするという悪循環をも繰り返す。唾液の減少には、薬の副作用などもある。
 歯周病は、唾液の減少の他、機能的に歯ブラシを持ちにくくなったり、歯磨きの不徹底なども原因となる。 
 歯の不具合や、話をする機能が低下することで、おしゃべりすることが少なくなると、顔の筋肉の低下も招く。
 よく噛んで食事ができることは、精神的にも肉体的にも若々しく健康でいられる秘訣なのである。

唾液で治せる虫歯もある!?

 8月27日に放映された、NHKのためしてガッテン「常識逆転! 自宅で虫歯を治す法」で、定量的光誘起蛍光法(QLF法)を使った、表面に表れない「隠れ虫歯」を見た。外から見ると、きれいな歯である。
 歯周病で歯肉が退縮すると、エナメルで覆われていない歯根の部分が表面にでてきて、そこが虫歯になりやすくなる。
 歯は、象牙質をエナメル質という半透明の物質が覆っている。隠れ虫歯が大きくなると、歯の表面にも透明感がなくなって、白く見える(ホワイトスポット)らしい。   
 エナメル質で覆われているといっても、エナメル小柱がつながっているだけなので、目では見えない小さな隙間が空いている。そこから、歯の内、側に入り込んだ食物の酸は、小柱を溶かし、それが進行することで陥没するように表面にも穴が開いてしまう。
 ただし、表面に穴が開いてしまう前であれば、唾液の中のカルシウムが中の穴を埋めてくれることもあるそうで、これを再石灰化という。唾液は、この性質から「液体エナメル質」とも呼ばれる。
 食事、たとえジュース一杯でも、食後は、歯に酸が付着し、うがいだけでは取れないが、唾液は、酸を中和できるそうだ。
 C1から始まっていた虫歯の進行度を表すものに、Co(オブザベーション=観察)というレベルもできたらしい。
 虫歯を削って直すのではなく、そのままの状態で3〜6ヶ月ごとに検診して、進行具合を見ながら、削るかどうかを判断する治療方法がとられている。なかには、虫歯の部分が徐々に自分の力で修復される場合もあるのだそうだ。 
 

参考:
日経BP社 健康シリーズ 第3回 歯周病と全身への影響 歯周病と糖尿病との深い関係が明らかに
http://www.nikkeibp.co.jp/jp/kenkou/series/perio_3.html

歯周病- 歯とお口のことなら何でもわかるテーマパーク8020
http://www.jda.or.jp/park/trouble/index.html

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