DNAとRNA

2008.9.9

生命の設計図[DNA]

 DNAは、約32億5千万個の塩基が連なって、対(塩基対)になった二重らせん構造(塩基10個で一回転する)でできている。
 ちなみに、DNAの長さは、線虫では約1億、ミツバチでは約3億、しかしアマゾンに住むハイギョは約1100億持っている。ハイギョは、環境の変化で、エラ呼吸から肺呼吸へと進化しなくてはならなくなったため、その過程でDNAの数が莫大に増えたといわれている。両生類にはDNAの数の多いものが多いのだそうだ。
 DNAを構成する4種類のヌクレオチド(アデニン、チミン、グアニン、シトシン)が、どのような順番で並ぶかは決まっておらず、その並び方が「情報」となり、つまり設計図となる。
 この順番を維持したままコピーされた遺伝子を子孫に伝えるため、片方の鎖が、A(アデニン)であれば、もう片方はT(チミン)、G(グアニン)であればC(シトシン)しか結合できないという法則のもとに二重になっている。この法則により、同じ配列のDNAをコピーして、情報を分け与えることができるのである。

現場で働く[RNA]

 DNAは遺伝子と言われるが、すべてに、体の元となるタンパク質の遺伝子が書き込まれているわけではない。
 遺伝子の書き込まれていないDNAは、これまでは、「ジャンク(がらくた)DNA」などと呼ばれ、つい最近まで何の役割も持っていないと考えられていたが、ノンコーディングRNA(Non-coding RNA、ncRNA)がつくられている。
 ノンコーディングとは、タンパク質の情報が書かれていないという意味。
 ノンコーディングRNAは、メッセンジャーRNA(伝令RNA)、トランスファーRNA(運搬RNA)、リボソームRNAのとりまとめ役をしている。

 DNAの二重らせんがほどけた状態で塩基配列(設計図)
をコピーして、実際の作業の指示を行なうのはメッセンジャーRNA(mRNA)。トランスファーRNA(tRNA)は、その指示書に従ってアミノ酸を運んでくる。リボソームRNA(rRNA)は、情報を読み取りながら、運んできたアミノ酸をつなぎあわせていく。
 ノンコ−ディングRNAの役割には、メッセンジャーRNAの働きを止める役割もある。メッセンジャーRNAを固めて情報を読みとれなくしたり、あるいは破壊する。
 ときには、DNAの設計図に対しても働きかけて、遺伝子の働きを止めることもあることもある。
 働きを止める理由のひとつは、細胞が分裂して、成長する過程では複数の矛盾する指令が出されることがあり、この矛盾した指令の片方をノンコーディングRNAがストップさせることにより、確実に成長できるようにするためである。
 ノンコーディングRNAの中には、ガン細胞のメッセンジャーRNAにくっついて破壊するものもあるため、抗ガン剤のように正常な細胞を壊してしまうことなく、ピンポイントでガン細胞だけを壊すことができるそうだ。(名古屋大学大学院医学系研究科 濱口道成教授らの研究による)
 RNAは比較的大きな分子の固まりのため、実際には、血液を通って、運びたい場所に運べるようにする(ドラッグデリバリーシステム、DDS)ことが今後の課題だが、それがクリアできれば、様々な事に活用できるようになるのだそうだ。
 
 タンパク質をつくる情報を持つ遺伝子は、線虫という単細胞生物でも20,000個持っており、人間の29,000個と、ほぼ変わりない。
 その代わり、ノンコーディングRNAは、線虫では1,300個、人間は23,000個と、大きく違う。ただし、そのぶん、人間では、DNAの領域にあるノンコーディングRNAの約7割が病気の原因になってしまうこともわかっている。線虫では約0.2割。

遺伝子の発見

 1865年にメンデルが遺伝子の法則を発見し、4年後にフリードリッヒ・ミーシャーがDNAを発見する。ただし、遺伝子がどこにあるかは、この時点ではまだわからなかった。
 やがて、光学顕微鏡ができて、1902年、ウォルター・S・サットン(アメリカの生物学者・医学者)は、遺伝子と染色体の動きが同じであることに気づき、「遺伝子は染色体」にあるとした。
 1928年に、グリフィスが形質転換(生物の特徴が変わること)を発見する。当時、肺炎が流行しており、肺炎双球菌(菌を持つS型菌と、菌を持たないR型菌)を使った研究で、菌を持たないはずのR型菌も、ある条件を整えると病気を発症することから、特徴が変わる=遺伝子を発見する。
 1931年、ルスカ(ドイツの科学者)が電子顕微鏡をつくったことにより、ごく小さなものも見られるようになり、タンパク質と核酸でできているファージというウイルスの一種が大腸菌にとりついて、遺伝子を潜り込ませ、細胞内で増殖し、大腸菌を破壊することがわかる。
 1944年、オズワルド・エイブリー(ロックフェラー医学研究所の科学者)が遺伝子はDNAだということを発見する。
 1952年、アメリカの生物学者、ハーシーとチェイスは、ファージのタンパク質と核酸を別々にして実験することにより、核酸の中に遺伝子があることを確認する。核酸(nucleic asid)に、デオキシリボースという糖がついているのでデオキシリボ核酸(deoxyribo nucleic asid(DNA))とした。
 そして、1953年、生物学者、ワトソンとクリックは、20世紀最大の発見ともいわれる、遺伝子の二重らせん構造を発見する。

1つの遺伝子が1つのタンパク質(ポリペプチド)をつくる

 1940年代、エドワード・L・テイタムとジョージ・W・ビードルは、アカパンカビを使った実験を行なった。
 実験は、アカパンカビの胞子に赤外線や紫外線を当ててつくった突然変異株の子嚢胞子と、もとの野生株を使って、それぞれ4つの培地(最小限の培地(グルタミン酸)と、それにオルニチン、シトルリン、アルギニンをそれぞれ加えたもの)を使って、生育を見るもの。グルタミン酸→オルニチン→シトルリン→アルギニンという酵素による変化がわかっていたことから、この4種類を使用した。
 この実験結果から、テイタムとビードルは、1つの遺伝子が1つの酵素をつくるのではないかという「一遺伝子一酵素仮説」をたてる。酵素は体の中で働くタンパク質の一種。
 その後、正確には、1つの遺伝子が1つのタンパク質(ポリペプチド=アミノ酸がたくさん結合した物)をつくるということがわかる。

 人間の体(タンパク質)は20種類のアミノ酸からできている。
 しかし、DNAには4つの塩基(アデニン、チミン、シトシン、グアニン)しかなく、20種類のアミノ酸をつくるには、最低3つの塩基の組み合わせでなくてはできない。その仮説は正しいことが証明されて、塩基の3つの組み合わせの遺伝暗号のことをコドンという。
 細胞の核の中のDNAから読み取った、この暗号(コドン)はメッセンジャーRNAによって伝えられる。
 DNAと、リボース核酸(RNA)は同じく核酸で、リン酸と糖(DNAはデオキシリボース・RNAはリボース)と塩基から成る。RNAでは、DNAのT(チミン)という塩基が、U(ウラシル)という塩基になっているため、コピーされるときには、A(アデニン)にUが結合する。

 核の中のDNAの二重らせん構造は、同じく核の中にあるタンパク質によってほどかれて塩基がむき出しの状態になる。そこに、それぞれ、AとU、GとCという組み合わせの法則でRNAが結合して情報をコピーしていく。1秒間に40塩基が読み取られる。
 RNAポリメラーゼによってつくられたメッセンジャーRNAは、コピーした遺伝情報を持って核膜の穴から外(細胞質)へ出ていくと、リボソーム(タンパク質合成工場)がスキャナーのように塩基の情報を読み取って、塩基は3つずつアミノ酸に置き換えられていく。
 その後、ゆるやかな立体構造をしていたアミノ酸の鎖は、タンパク質(シャペロンの仲間)に押し込められて、しっかりした立体構造になる。

 3つの塩基の組み合わせから遺伝暗号(コドン)を読み取るための表
 
[U=ウラシル/C=シトシン/A=アデニン/G=グアニン]

第2文字
U
C
A
G
第1文字
U
UUU フェニルアラニン
UUC
UUA ロイシン
UUG
UCU セリン
UCC
UCA
UCG
UAU チロシン
UAC
UAA [終止]
UAG
UGU システイン
UGC
UGA [終止]
UGG トリプトファン
U
C
A
G
第3文字
C
CUU ロイシン
CUC
CUA
CUG
CCU プロリン
CCC
CCA
CCG
CAU ヒスチジン
CAC
CAA グルタミン
CAG
CGU アルギニン
CGC
CGA
CGG
U
C
A
G
A
AUU イソロイシン
AUC
AUA
AUG メチオニン
[開始]
ACU スレオニン(トレオニン)
ACC
ACA
ACG
AAU アスパラギン
AAC
AAA リジン
AAG
AGU セリン
AGC
AGA アルギニン
AGG
U
C
A
G
G
GUU バリン
GUC
GUA
GUG
GCU アラニン
GCC
GCA
GCG
GAU アスパラギン酸
GAC
GAA グルタミン酸
GAG
GGU グリシン
GGC
GGA
GGG
U
C
A
G
高校講座 生物「DNAとタンパク質」(NHK教育テレビ)より

染色体

 人のDNAは、22本の常染色体と、2本の性染色体の中に収まっている。これらをほどいてすべてをつなぎ合わせると、約1mの長さになり、ここに約32億5千万個の塩基がある。
 ゲノムとは、生物の持つ遺伝情報のすべてで、塩基の並び順を言う。
 1990〜2003年に、アメリカ、イギリス、日本、ドイツ、フランス、中国の6カ国で、ヒトゲノム計画(人の全塩基配列の解読、遺伝子の確定を目的としたもの)が行なわれた。背景には、遺伝子技術の進歩などがあり、コンピュータの進歩で予想よりも早く解明された。
 ヒトゲノムの中には約29,000の、タンパク質の情報を持つ遺伝子がある。
 たとえば、9番めの染色体には、ABO血液型遺伝子、12番目にはALDH2(アルデヒド分解酵素2)、17番目にはPER1(体内時計調節タンパク質)などがある。
 8番目にはGULOP(ビタミンC合成酵素)があるが、人間は食物からビタミンCを摂るようになって退化した。
 このような遺伝子を偽遺伝子(pseudogene)といい、ノンコーディングRNAに分類される。
 コピーされるときなどに重複してしまったものなど、変異したり、欠失してしまって、遺伝情報としては機能していない偽遺伝子は、20,000種類以上ある。ただし、遺伝情報としては機能しなくなった人間の偽遺伝子の中にも大切な役割を持つものがあることがわかってきた。
 ちなみに、人間のゲノムの個人差は約0.1%なのだそうだ。
 
参考:GENOME MAP(ヒトゲノムマップ)
http://www.lif.kyoto-u.ac.jp/genomemap/
 

細胞の顔「糖鎖

 遺伝子の情報によりつくられた酵素(巨大なタンパク質)には様々な働きがあるが、そのひとつに糖(糖鎖)をつなぐ役割がある。
 糖鎖は、細胞の周りにあるヒゲ(糖の鎖)のようなもの。約10種類の単糖でできており、20,000種類以上あるといわれている。
 糖鎖をつくる単糖を、人間は食べ物からとり入れている。たとえば、砂糖は、単糖の、ブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)が1つずつくっついたもの。

 ABO式血液型は、糖鎖の末端の1つの単糖の違いで決定される。その1つの単糖が、A型にはAの、B型にはBの、AB型はAとBの両方を持っており、何も持っていないのがO型。それぞれが、その単糖の違いに反応する抗体を持っているため、違う血液型を輸血すると赤血球が固まってしまうのである。
 ちなみに、白血球は血管の中を転がりながら、細胞に異常があるかどうかを糖鎖によって見極めている。
 このように、IDのような役割をするため、糖鎖は「細胞の顔」といわれるが、人間の体内で、そこを逆に利用する物もいる。

 インフルエンザウイルスは、糖鎖にくっつくタンパク質を持っている。そのため、細胞は、ウイルスを細胞内に入れてしまう。一度、細胞内に入ったインフルエンザウイルスは、また外に出て増殖を繰り返していく。糖鎖から離れるときには、くっついた糖鎖を切って、離れる。
 ガン細胞の場合は、特殊な糖鎖をつくることがわかっている。
 ガン細胞は血管を通って、シアリルルイスaという糖鎖が反応することによって血管の壁に接着して、増殖していく。(愛知県がんセンター研究所 分子病態学部 神奈木玲児 部長らの研究による)
 白血球はシアリルルイスxを持っているが、シアリルルイスxとシアリルルイスaの違いは、結合している糖の1つの向きのみ。つまり、よく似た糖鎖をもって、がん細胞は増殖に利用しているのである。


参考:
サイエンスZERO「ミクロの新大陸RNA研究最前線」(NHK教育テレビ)
サイエンスZERO「細胞の顔!? 糖鎖の謎」(NHK教育テレビ)
高校講座 生物「DNA研究とその応用」(NHK教育テレビ)

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