小麦

2010.8.23

小麦との出会い

 約1万年前、氷河期が終わったばかりの西アジアで、雑草の種を食料としたことが人類と小麦との出会いといわれている。
 ジェリコ(現 イスラエル)では栽培跡が見つかっており、紀元前7000年頃にはチグリス・ユーフラテス川流域でパン用の小麦が栽培されていた。
 生命の象徴とされた「小麦」。エジプト神話のイシスや、ギリシャ神話の豊穣の女神デメテル、ローマ神話でのセレスCeres(シリアルcerealの語源)などには、麦が象徴的にあしらわれている。
 有名なところでは、小麦からつくる「パン」はキリストの肉体の象徴である。

 紀元前4000年頃には、石臼で粉にして食べ始めた。
 紀元元年頃には水車が使われ始め、その後、風車を使って粉挽きが始まり、18世紀中頃に蒸気を使った機械の使用が始まる。
 現在、世界三大穀物として、米やトウモロコシと肩を並べる生産量で、中国、インド、アメリカ、ロシア、フランスなどでの生産量が多い。


日本人と小麦

 日本には3世紀頃に伝わり、弥生時代前期頃に、本格的ではないが栽培されるようになったとされている。
 小麦は米と違い、外皮が硬く、中身(胚乳)がもろいので、粒のまま使用することは難しく、硬い外皮が一部、胚乳に入り込んでいて、単純に分けるのも難しかった。
 7〜8世紀頃には中国から、麺の製法が伝えられ、饅頭のような形で食べられるようになった。
 最初は、臼に入れて、突いたりつぶしたりして粉にしていたが、効率が悪いため、一般には広まらず、家畜の飼料として用いられていたようだ。
 17世紀頃(江戸時代)、ようやく、稲の裏作として栽培が広まっていき、挽き臼が一般に普及したため、うどん(切麦)など日本麺がつくられるようになった。
 しかし、この時代には「麦」というと麦茶や麦飯などに使う大麦を指すことのほうが多かったようだ。
 英語で大麦はbarley、小麦はwheat。
 小麦粉を「メリケン粉」と呼ぶことがあるが、メリケンはアメリカのことで、製粉技術が劣っていた国産の小麦粉(うどん粉)の色に対して、白っぽい色をしていたことから、呼び分けられた。
 戦後、日本などに目を付けて、アメリカは小麦を好条件で輸出した。余剰小麦の輸出国拡大のための戦略だったというのは有名な話。事実、子どもの頃からパンを食べて育った日本人は、給食がパンでも違和感を持たなかった。
 現在、日本の小麦の消費量は約600万トン。
 自給率は15%に満たず、国産小麦のほとんどは中力粉で、パンや中華麺に適している強力粉はわずか1%だとか。
 乾燥には強いが、長雨などには弱いため、日本では、特にパン用の小麦をつくるのは難しいとされてきたが、技術革新で、パンに適した強力粉の小麦の生産も徐々に増え始めている。
 米と違うところは、粉状にしないと料理に利用できないこと。
 新米を食べる米と違い、収穫直後の小麦は、酵素が活性状態にあるため不安定なので、自然に酸化し熟成(エージング)させて使うことが多い。そうすることで特にパンやケーキ類の加工がしやすくなる。
 

小麦粉の成分

 小麦粒は、外皮、胚乳、胚芽からなり、製粉で取り除かれる外皮、「小麦ふすま(小麦ブラン)」はセルロースなどの食物繊維を多く含むため、シリアルや全粒パンなどにも使用される。
 小麦の粒を粉砕し、小さくしたものを「小麦粉」という。
「セモリナ粉」は、粉砕しているが、粒を細かくしていない粗挽き状のもので、さらに、粉砕しているが胚芽などをふるい分けしていないものを「小麦全粒粉」という。
 全粒粉はグラハム粉とも呼ばれるが、グラハムは小麦胚芽の栄養(ビタミン、ミネラル、リノール酸・リノレン酸などの脂質など)に注目して普及に努めたアメリカの医師の名前である。

 小麦粉の成分は、炭水化物70〜78%、タンパク質6〜14%、水分約14%、脂質約2%、他、ごく微量のビタミン、ミネラル。
 炭水化物の多くはデンプンで、薄力粉が最も多く含んでいる。
 タンパク質の8割を占めているのが、グリアジンとグルテニン。
 弾力に富んでいるが伸びにくいグルテニンが網目状を構成し、弾力性は弱いが伸びやすいグリアジンがその網目に入り込み、水を加えてこねることで網目が強固になって、両方の性質を持つグルテンができる。
 精白米と同様、必須アミノ酸の中でリジンが不足しているので、卵や乳製品などと一緒に摂ることで、栄養を補い合うほうが良い。
 小麦粉の脂質は2%だが、胚芽部分にはリノール酸、リノレン酸などが多く含まれている。他、ミネラルやビタミンも豊富に含まれている。
 小麦粉には、B1 、B2 、E、パントテン酸、ナイアシンなどのビタミン、リン、カルシウム、鉄、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、亜鉛、といったミネラル類なども含まれているが、ごく微量である。


小麦粉の種類

 タンパク質の含有量によって、薄力粉(6.5〜9%)、中力粉(7.5〜10.5%)、準強力粉(10.5〜12.5%)、強力粉(11.5〜13%)に分けられる。含有量が多くなるほど、グルテンの力も強く、よく伸びるようになる。
 薄力粉は菓子や天ぷら、中力粉はうどんなどの日本麺や和菓子など、準強力粉には菓子パン、フランスパンなど、強力粉は食パンや餃子の皮、中華麺などに使われる。
 ちなみに、内モンゴル自治区の「かん湖」という天然炭酸ナトリウムが混ざった湖の水(かん水)でたまたま小麦をこねたことが、黄みがかった弾力性と粘りのある、いわゆるラーメン誕生のきっかけだとか。

 他にも、秋播き(冬小麦)・春播き(春小麦)、粒の硬さ(硬質〜軟質)、赤小麦・白小麦などで分けられる。
 粒の内部が緻密につまっている硬質のほうが軟質よりグルテンの量が多く、軟質小麦は、菓子や天ぷらなどに向いている。
 国内でつくられる軟質小麦の中には、通常よりタンパク質を多く含有しているものがあり、「中間質小麦」と呼ばれ、乾麺やゆで麺などに使われる。

 春小麦は、通常、硬質でグルテンの含有量が多く、強力粉の原料になる。日本の気候には、秋に播いて初夏に収穫できる秋播きのほうが適している。

 品種により、外皮が赤っぽいものを「赤小麦」といい、タンパク質が多いほど色が濃くなり、通常は「白小麦」よりグルテンの量が多い。
 パスタで聞き慣れているデュラムは、「白小麦」の品種名だが、超硬質で、セモリナ粉にしたものは、たんぱく質含有量が11〜14%。通常、含有量が多くなるほど、伸びもよくなるが、デュラム・セモリナはあまり伸びないのが特徴である。また、黄色いカロテノイド系の色素が強いため、白小麦の中でも特に、「アンバー(琥珀色)」と呼ばれることも。

 上記で書いたのは、大まかな目安で、小麦粉は、原料となる小麦の品種以外に、産地、加える水の量や、こね方などにより、グルテンの量や、弾力性、ねばり強さが異なってくる。
 様々な状態をつくることができる小麦は料理の幅も広い。
 ちなみに、ベーグルは生地をリング型にして茹でてから焼いたもの。

 性質上、他の粉状のものと混ざりやすく、水分に吸着しやすく、香りを付けやすいため、保管は、湿気を避けて、できるだけ早く使い切ることと、臭いの強いのものを側に置かないほうが良い。



参考:地球物語「パンと麺 おいしい!! 小麦の秘密」(8月22日 テレビ朝日)

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