アミノ酸ってなに?

2006.5.15

アミノ酸とは

「高血圧と腎臓」の項目で、体内の約60%は水分だと書いた。では残りは?
 残り約20%は、タンパク質(アミノ酸のつながったもの)である。タンパク質は、筋肉、内臓、皮膚、髪の毛などの細胞や、インスリンなどのホルモンや、酵素などを形成している。
 体を構成している約10万種類のタンパク質は、20種類のアミノ酸の組み合わせからつくられており、そのうち9種類(成人は8種類)は人間の体内では合成されず、食事から摂らなくてはいけないため、必須アミノ酸あるいは完全必須アミノ酸と呼ばれる。
 ちなみに自然界で発見されているアミノ酸は約500種類ほど。
 アミノ酸は、最古の栄養素あるいはエネルギー源といわれ、体内では合成、分解が繰り返されて使われるが、肝臓や筋肉や血液中に一時的に蓄えられるもの(遊離アミノ酸)もある。
 英語のプロテインはタンパク質を指し、語源はギリシャ語の「第一のもの」という意味である。

アミノ酸の発見

 1806年に、フランスの化学者L・N・ボグラン氏とP・N・ロビゲ氏が、アスパラガスの芽の抽出物からアミノ酸の結晶を取り出し、「アスパラギン」と名付けた。これが、最初に発見されたアミノ酸である。
 1866年には、小麦のグルテンからグルタミン酸が発見された。
 欧米では旨味を含む肉が食事の中心だったため、ことさら旨味成分に目を向けることはなかったが、味の淡泊なものが多かった日本人は、旨味に敏感で、独自の発酵食品も多くつくりだしてきた。1906年に、グルタミン酸が旨味物質であることを発見した池田菊苗教授(東京帝国大学)が助言して、1909年、味の素の創業者 鈴木三郎助氏がグルタミン酸とナトリウムを結合(グルタミン酸ソーダ)させたものを商品化したのが、世界初の旨味調味料「味の素」である。

タンパク質を構成するアミノ酸

 アミノ酸を構成する原子には、炭素、水素、窒素、酸素、そして硫黄などがある。アミノ酸にはαアミノ酸、βアミノ酸、γアミノ酸があるが、タンパク質を構成するのはαアミノ酸だけである。
 αアミノ酸は、炭素に、アミノ基、カルボシ基、水素が結合し、もうひとつの手(側鎖)と結合する「原子」や「基」の違いによって種類が異なる。また、同じ分子構造でも、原子や基が、右回りに結合するL体と、左回りに結合するD体(光学異性体)の2種類がある。人間や動物の体のタンパク質を構成しているのはL体のみ。ただし、グリシン(アミノ酸)の構造は例外で、炭素に2つの水素が付いていて、光学異性体はない。
 水などに溶かしたときに、その溶液が電気を通す性質を「電解質」というが、アミノ酸はカルボシ基が「酸」、アミノ基が「アルカリ」のため、2つの性質を併せ持ち、「両性電解質」といわれる。このため、pHのバランスを保つことができる。
 タンパク質は、遺伝子(DNA)の基本設計図により、酵素の働きや、ATP(アデノシン三リン酸)のエネルギーによってアミノ酸がペプチド結合したもの。タンパク質の中でも、アミノ酸が、2〜数十個つながったものをペプチド、それ以上のものをタンパク質と呼び分ける場合もある。
 DNAは、糖やリン酸と、4種類の塩基からなるヌクレオチドが鎖のようにつながり、2本の鎖がらせん状に絡まった構造をしている。DNAの塩基には情報が蓄えられていて、タンパク質の設計も、DNAの塩基の情報によるアミノ酸の塩基配列によって決定される。設計図に基づき、mRNAがDNAの塩基配列をコピーしてメッセージを送り、tRNAがアミノ酸を運搬して、rRNAがタンパク質を合成する。

20種類のアミノ酸と主な役割

 20種類のアミノ酸は構造によって、大きく3つに分類される。
 脂肪族アミノ酸とは炭素鎖でつながった構造をしているもので、炭素鎖が枝分かれしているものを「分岐鎖アミノ酸」、分子構造に硫黄を含むものを「含硫アミノ酸」という。
 芳香族アミノ酸は、分子構造に芳香環を持つもの。
 異節環状アミノ酸は、分子構造の中に2種類以上の原子からなる環状を持つものをいう。

[必須アミノ酸]

バリン、ロイシン、イソロイシン[脂肪族アミノ酸(分岐鎖アミノ酸)]-----筋肉をつくり、疲労回復を助け、運動する時のエネルギー源になる。また、肝機能の強化も。
リジン[脂肪族アミノ酸]-----ブドウ糖の代謝促進、成長促進、カルシウム吸収、肝機能を助ける。
スレオニン(トレオニン)[脂肪族アミノ酸]-----成長促進や新陳代謝を活性化し、脂肪肝を抑制する。
メチオニン[脂肪族アミノ酸(含硫アミノ酸)]-----生体内の有用物質をつくるための原料などに使われる。血液中の、コレステロール値や、かゆみや痛みを引きおこすヒスタミンの濃度を下げる。活性酸素を取り除く。解毒。肝臓の保護。
フェニルアラニン[芳香族アミノ酸]-----神経伝達物質など、生体内の有用物質をつくるための原料などに使われる。
トリプトファン[異節環状アミノ酸]-----脳内ではアルブミンと結合した形で存在し、遊離するときにセロトニンを生じる。また、ナイアシン(ビタミンB3)も合成する。
ヒスチジン[異節環状アミノ酸]-----生体内の有用物質をつくるための原料などに使われる。
*ヒスチジンは体内でも生成できるが、幼児の急速な成長に不可欠なため、1985年に幼児の必須アミノ酸に加えられた。

[非必須アミノ酸]*必須アミノ酸以外のもの

アラニン[脂肪族アミノ酸]-----肝機能を高める。
アルギニン[脂肪族アミノ酸]-----マクロファージの活性化、免疫機能を高める、疲労回復、成長ホルモンなどの分泌促進、肌の再生を促す。また、一酸化窒素をつくりだすことにより、血管拡張・血圧低下・血流改善。
グルタミン[脂肪族アミノ酸]-----腸管の修復、腸の微小絨毛の栄養源。大腸の蠕動運動のエネルギー源。遺伝子の原料となる。免疫細胞の発育と増殖を促す。筋タンパク質分解の抑制。疲労回復。抗潰瘍。肝障害の改善。体内で最も多いアミノ酸で、骨格筋の遊離アミノ酸の約6割を占める。
グルタミン酸[脂肪族アミノ酸]-----速効のエネルギー源。体内でアンモニアと結合してグルタミンになる。代謝産物でPCAをつくる。
アスパラギン[脂肪族アミノ酸]-----疲労回復等。
アスパラギン酸[脂肪族アミノ酸]-----速効のエネルギー源。
セリン[脂肪族アミノ酸]-----肌の保湿等。
グリシン[脂肪族アミノ酸]-----神経伝達物質、遺伝子の原料となる。体内のタンパク質が不足すると、タンパク質の分解を抑制する。
システイン[脂肪族アミノ酸(含硫アミノ酸)]-----メラニンを生成する酵素チロシナーゼの活性を抑制する。体内ではメチオニンから合成される。
プロリン[異節環状アミノ酸]-----骨、腱、靱帯を構成する栄養成分。コラーゲンの主要成分で、天然保湿成分(NMF)*1。エネルギー源にもなる。
*1 皮膚は、外側から、角質層(0.01~0.015mm)、表皮層(0.1~0.3mm)、真皮層(2〜3mm)の3層から成る。角質層にある繊維間物質(角質層細胞)は、天然保湿成分(NMF)と呼ばれ、約40%を占めるアミノ酸と、
ピロリドンカルボン酸(PCA)が主な成分。NMFは角質層の保湿と吸湿性を調整しており、取りこまれた水分は「結合水」と呼ばれて、マイナス20℃でも凍らない。
チロシン[芳香族アミノ酸]-----体内では、フェニルアラニンから酵素反応によって合成される。神経伝達物質の原料にもなる。ドーパミンはチロシンから合成される。

食事とアミノ酸

 タンパク質は、体内でペプチドやアミノ酸の状態に分解されて、腸管から吸収される。腸管から肝臓に到達するときには、ほとんどがアミノ酸になっている。
 タンパク質には、卵などに含まれる動物性タンパク質と、小麦粉などに含まれる植物性タンパク質があり、バランスが良い食品として、卵、肉、魚、乳製品などの動物性タンパク質があげられる。しかし、動物性タンパク質は高脂肪、高カロリーのものが多いので、植物性タンパク質とともにバランス良く摂ることが望ましい。
 植物性タンパク質の味噌や醤油など発酵食品は、発酵過程で酵素によりアミノ酸に分解されているため、体内での消化に負担がかからず、吸収も早い。タンパク質を効率よく活用するためには、消化(分解)する酵素と、その働きを助けるビタミンB群なども欠かせない。
 食生活の欧米化にともない、アミノ酸が不足することはあまりなくなったが、不足すると貧血やむくみ、血液中のタンパク質不足による免疫機能低下、筋肉の衰えなどの症状が表れる。
 逆に大量に摂ると、肝臓や腎臓に負担をかけるので、特に肝機能や腎機能が弱っている人は注意が必要である。
 体内でタンパク質が分解されるときに発生するアンモニアは、通常、肝臓で尿素の形にされた後、老廃物として排出(尿素サイクル)されるが、肝臓機能の低下などにより酵素の働きが不十分になると、血中のアンモニア濃度が上がり、様々な弊害を引きおこす。

アミノ酸と味

 味覚の本来の役割は、食べてよいものと悪いものを区別して生命を危険から守ることである。
 人間の舌の表面にある乳頭という細かい突起には、花のつぼみのような形をした直径0.05mmくらいの味蕾があり、この中に味細胞が数十個入っている。味細胞の先端にある絨毛で、受容体と味物質が結合する、あるいは味細胞の細胞膜に作用することで、シナプスにより味神経繊維を通り、大脳にある味覚野に情報が送られて、初めて味を感じることができる。
 味蕾の数は、哺乳類の中では人間より牛や豚のほうが数が多い。草食動物の味蕾が多いのは、動物を食べる肉食動物に比べて、未知のものが多い植物が、毒かどうかをかぎ分ける必要が高いためとされている。
 味には、甘味、酸味、塩味、苦味、旨味、辛味、渋味がある。
 脳は、味覚によって、どのような栄養素が取りこまれたかを感じることもできるらしく、たとえば、炭水化物に多い甘味は「エネルギー源」、旨味はタンパク質で、塩味は「ナトリウム」、そして、苦味は「毒」、酸味は「未熟なもの、腐ったもの」などである。生まれたての赤ちゃんは、「酸っぱいもの」「苦いもの」は嫌がり、母乳に最も多く含まれる「旨味(グルタミン酸)」を好む。胎児は、胎盤から、また羊水に溶けた栄養素を摂取しているが、三カ月目以降の胎児には、顔から胸までに味蕾が広く分布していて、生まれる頃には成人と同じ、舌だけに残るそうだ。
 味細胞にある受容体は大きな分子とは結合できないためタンパク質には味を感じることはないが、タンパク質が分解された形のアミノ酸には様々な味を感じることができる。
 先に述べた、L体とD体では味に違いがある。

アミノ酸と味

必須アミノ酸 味(L体)
バリン 苦味
ロイシン 苦味
イソロイシン 苦味
リジン 甘味・苦味
スレオニン 甘味
メチオニン 苦味・甘味
ヒスチジン 苦味
トリプトファン 苦味
フェニルアラニン 苦味
非必須アミノ酸 味(L体)
アラニン 甘味・旨味
アルギニン 苦味
グルタミン 甘味・旨味・塩味・苦味
グルタミン酸 酸味・旨味・甘味・塩味・苦味
アスパラギン 苦味・酸味
アスパラギン酸 酸味・旨味
セリン 甘味・苦味・酸味・旨味
グリシン 甘味・旨味
システイン 甘味・酸味
プロリン 甘味・苦味
チロシン 無味

運動とアミノ酸

 筋肉は細長い筋繊維(筋原繊維と微細組織の集合体)の束で、筋原繊維はアクチン、ミオシンというタンパク質でできており、主成分はバリン、ロイシン、イソロイシンである。
 3種類とも構造がよく似ていて、炭素鎖が枝分かれしているので、分岐鎖アミノ酸(BCAA=Branched Chain Amino Acid)という。他のアミノ酸が、主に肝臓で分解・合成されるのに対して、BCAAは、最初に筋肉で分解・合成される。また、血漿中の遊離アミノ酸の約4割を占める。
 分岐鎖アミノ酸が、解糖系でできたピルビン酸にアミノ基を供給することで、アラニンが生成される。生成されたアラニンは筋肉から肝臓に運ばれ、グルコース(グリコーゲンが分解されたもの)の生成に利用されることで、エネルギーが持続される。これを「グルコース・アラニンサイクル(糖新生)」という。
 激しい運動で筋肉組織は消費され損傷するが、運動前や途中で、これらのアミノ酸を摂るとスタミナ維持や筋力低下を抑えることができ、運動後の補給で筋肉の損傷を回復し、筋肉痛などを防ぐといわれている。

20種類以外のアミノ酸 

 タンパク質合成後につくられるアミノ酸に、ゼラチンやコラーゲンに含まれるヒドロキシプロリンやヒドロキシリジンなどがある。
 タンパク質に含まれないアミノ酸には、筋肉中のクレアチン、神経伝達物質でGABAとも呼ばれるγアミノ酪酸などがある。
*クレアチンの代謝産物が老廃物のクレアチニン
 天然にあるアミノ酸の中には、旨味成分になる、テアニン(お茶)、イノシン酸(肉・鰹節など)、グアニル酸(シイタケ)などがある。
 他には、テングタケの毒成分(イボテン酸)などもある。

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