サムシングエルス

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サムシングエルスという名前

2006.3.19

 月曜日の朝、会社に着くなり、待ちかまえていたようにK氏が言った。
「お茶碗買った?」
 私の会社には、合い言葉も暗号もない。
 当然だ。IT社会の現代、そんなアナログなことはしない。いや、かえっておもしろいかもしれない、などと考えたかどうかは忘れたが、とにかく、意味不明な時や時間稼ぎには、この言葉が良い。
「どうしてですか?」
 すると、K氏が嬉しそうに話し始めところによると、始まりは一本の電話。
 渋谷の某ショップから掛かってきた電話の、その内容をまとめると、「昨日、お茶碗や箸などの商品をお買い上げいただいたのですが、その際、領収書をお忘れになったようです」。
 お買い上げになった人物像に、K氏は心当たりがあった。
 聞くと、髪型、人相、身長や体型、年齢など。しかし、人物像と言うにはあまりにも大雑把すぎる。そんな人相は、100mも歩けば必ず1人以上いるだろう。つまり、私は、とりたてて特徴がないということだ。噂は、案外、こういうところから広がっていくのかもしれないと思った。
 確かにその大雑把な情報には当てはまるようだが、肝心の「渋谷」や「茶碗」には、心当たりがない。
「それ、違いますよ」
 しかし、K氏は納得するどころか、まるで「怒らないから、話してみなさい」と、浮気の痕跡を見つけて、あやかしの笑顔の下で疑いの目を向ける妻のように、私を見つめている。
 見つめられても、知らないものは、知らない。
 やましいことがないのなら堂々としていれば良いとよく言うが、やましいことがなくても、こういう場合、なぜか不安になり動揺してしまう。小心なのだろうか。しかし、浮気などまったく身に覚えのない夫のように、覚えがないものは証明しようもないのだ。
「何が言いたいのかわかりませんけど・・・でも、会社に必要のない茶碗や箸を、経費で買うような人間だと私は思われていたんですね」
 切り返しがきたので、男性であるK氏は少し慌てた。女性なら、このくらいの切り返しにはひるまないだろう。
 いきなりの展開に、手の内をさらしたK氏いわく、「人相や髪型からピンと来て、生活雑貨を一度に買い揃えるのも珍しいので、恋人ができて新しく揃えたけれど、つい習慣でもらった領収書をお店に忘れてきてしまったんだろう。だから、からかっちゃおうと思った」らしい。
 年齢から考えるとその若い感性と、そして素晴らしい想像力に感心するとともに、呆れた。
 これも一種の職業病か、それともただのミーハーなのか。ミーハー(好奇心)ももちろん職業病であることには違いない。
 領収書自体には何の問題もない。サムシングエルスという名前はたくさんあるのだから。
 考えてみると、ショップの店員さんもいい人だ。わざわざ名前から調べて、電話をしてくれたのだ。物を買う時には、こういうお店で買いたい。もしかしたら、ただの好奇心だけだったかもしれないが。
 しかし、これがやましいことがある人にとっては、逆に、大きなお世話になっていたのだろうな。
 親切というのは、難しいものだ。
 今から数年くらい前の出来事である。
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