2009年の皆既日食

2009.7.11

 月が太陽の前を横切って隠す(皆既日食)、最後の瞬間に、文字通り、大きなダイヤモンドの指輪が空に輝く。ダイヤモンドリング。
 月の表面は、きれいな球体ではなく凸凹している。その凹のわずかな隙間から光が漏れることでダイヤモンドリングができる。

 日食は、地球、月、太陽が直線に並んだときに、月に太陽が隠されてしまうことで起こる。空は暗くなり、地平線では夕焼けや朝焼けのように空が赤く染まる。
 月と地球は楕円軌道を描いて動いているため日食のたびに惑星間の距離は違うが、今回は、地球から太陽は遠く、月は近いため、陰が大きくなる。それが今世紀最長の最大6分30秒という時間に現れている。
 
 1年に何度かは地球のどこかで見られる日食だが、今回の皆既日食はムンバイ(インド)から上海あたりの軌道で起こる。
 日本で見られるのは、1963年7月21日に北海道東部で見られた皆既日食から46年ぶり。
 直線に並ぶときに、地球のどこにいるかによって、時間帯や、どのように見えるかが違う。今回、日本では、口永良部島、屋久島、トカラ列島、喜界島、奄美大島や種子島の一部の「皆既日食帯」以外でも、部分日食を見ることができる。
 欠ける深さは「食分」という数値で表され、札幌では0.506、東京では0.749。つまり、東京では75%くらいが欠けて見えるのである。
 次に日本で皆既日食が見られるのは、26年後の2035年9月2日(北陸や北関東で見られる)。
 ちなみに、太陽が月より大きいため起こる、太陽の縁がわずかに残る「金環日食」は、2012年5月21日に日本では北海道など一部を除いて見ることができる。

 太陽の周りに広がる大気=コロナは、明るさが太陽本体の100万分の1なので、普通は見ることができないが、本体の明るさが隠される皆既日食のときだけはハッキリと姿を見せる。まるで、スターやカリスマの陰にいる優秀なスタッフのように。
 コロナは日によっても、位置や大きさが変わり、太陽表面から立ち上がる赤いプロミネンスも同様。
 ちなみにコロナは温度が100万℃で太陽表面は6000℃くらいだが、コロナがなぜそれほど高温になるのかはわかっていない。また、1万℃で、とても重い雲のような物質である赤い炎、プロミネンスがなぜ落ちずに浮かんでいるのかも不思議のひとつ。
 日食のたびに、見られるコロナの形は違う。これは、太陽の活動期と関係があり、丸く放射状に見えるときは太陽活動が活発なときである。
 太陽活動は、1600年から観測が始まった太陽表面の黒点で判断できるが、黒点がたくさんあるときは太陽活動が活発なときで、通常、11年周期で訪れる。
 ただし、1650〜1700年頃(マウンダー極小期)には、太陽活動の活発な時期がなく、地球も気温が低く、イギリスのテムズ川が凍っていたそうだ。

 黒点からは、磁力線(磁場)が出ている。太陽の北極と南極は、11年ごとに反転することがわかっているが、国立天文台 野辺山太陽電波観測所では、北極、南極付近で地場が特に強いことが反転に関わっているのではないかと考えている。
 岐阜と長野の県境、乗鞍岳にある国立天文台 乗鞍コロナ観測所は、1949年の開設以来、コロナの観測データをとり続け、コロナの輝度が太陽活動の周期と同じ11年周期であることを明らかにした。
 観測所の研究は、今秋から太陽観測衛星「ひので」に引き継がれる。地球表面から700kmの位置にある「ひので」本体には3つの望遠鏡がついており、もし地球を見たとすると、50cmくらいの大きさのものもハッキリ見えるくらいの解像度を持っているそうだ。
 
 太陽は「太陽風」というプラズマを吹き出し、太陽系外の放射線(銀河宇宙線)から地球を守ってくれている。太陽に意思はないかもしれないが、これ以外にも様々な偶然が重なって、地球に生物が生まれたことを考えると、地球上のみを「世界」と考えてしまいがちな人間の思惑など、ちっぽけに感じて、改めて謙虚な気持ちになる。
 地球に生物が生まれた大切な条件のひとつである太陽は、力があまりに大きく、生物に恵みを与えてくれる反面、害にもなる紫外線や放射線などを放出している。それをオゾン層が守ってくれていると思っていたが、実は、見えない大きなところでしっかり地球を守ってくれていたのである。

 この銀河宇宙線が地球にあたると、大気中の窒素は「炭素14」という通常より重いものに変化する。
 太陽活動が活発なときは「太陽風」の威力も強く、地球の植物が取り込む炭素14も少なくなる。
 樹齢数千年で、年輪を持つ、屋久島の屋久杉はデータ分析に最適で、東京大学宇宙線研究所(千葉県柏市)の特任助教 宮原ひろ子氏の分析によると、テムズ川が凍った17世紀後半の70年間は、太陽の極小期が通常より3年長い、14年周期になっているそうだ。
 現在に当てはめてみると、1996年半ばの太陽活動の極小期から、11年めにあたる2007年半ばに極小期がくるはずだった。2008年12月に極小期を迎えたという観測結果が出たが、周期が延びたことは過去150年くらいなかったことなのだそうだ。
 太陽活動は次第に弱くなっているのかもしれないといわれている。
 太陽も生命体。つまり老化しているのだろうか。普段考えることはないが、宇宙では多くの星が生まれ、消滅している。
 意識することなく、存在し続けると思っていた太陽もいつか消滅するのかもしれないと考えることは、かなりの衝撃である。そのうち訪れるだろう、親の年齢を改めて意識するときに似ているのかもしれない。

 今、巷で騒がれているのが、「マヤ暦」「易経」などを例に取った、2012年人類滅亡説
 太陽活動の極大期が2011〜2012年頃であることや、世界中からミツバチが消えているという現象も根拠として言い添えられている。


 7月22日が晴れますように。
 国立天文台のHPによると、東京では、9時55分〜12時30分頃に日食を見ることができるそうだ。最大に欠けるのは11時12分58秒。
 太陽を見るときには、直視やサングラスはもちろん、望遠鏡はもっての他で、わずか数秒でも網膜を焼いてしまうので、日食専用のグラスを使わないといけないそうだ。

参考:
・「サイエンスZERO」NHK教育(7月11日)
・国立天文台のHP
http://www.nao.ac.jp/phenomena/20090722/index.html

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