直感力の秘密

2009.7.12

「追跡!AtoZ」脳の秘密 未来はどう変わる? [NHK総合(7月11日)]で、理化学研究所 田中啓示博士らの、脳科学から「天才とは何か」を探るプロジェクトの一部を紹介していた。
 羽生善治名人の、特に「羽生マジック」といわれる「直感力」の秘密を、MRI(磁場の強さ 4テスラ)などを用いて測定。
 アマチュア棋士に見られず、羽生名人やプロ棋士に見られた第一の特徴は「大脳基底核尾状核(だいのうきていかくびじょうかく)」といわれる部分が活発に動いていたこと。
 頭頂部から6cmほど、やや前方寄りのところにある大脳基底核尾状核は、「行動の習慣化」に関わる箇所なのだそうだ。行動の習慣化とは、手や足の動きの習慣性で、たとえばコンピュータのキーボードを、回数を積み重ねることで、意識しなくても速く打てるようになるなど。
 今回の実験結果から「思考の習慣化」、つまり意思決定や思考も、繰り返し行なうことで蓄積されて習慣化することが示唆された。
 また、羽生名人やプロ棋士のヒアリング結果からは、「毎日、3時間継続して、集中して将棋を行なう」という共通点が見つかり、将棋以外でも同じことがいえると推測されていた。
 天才の直感力は、まず、「継続的に集中して、動いて、考える」=「努力の積み重ね」が科学的にも証明されたということである。・・・。

 羽生名人の脳の動きで特筆すべきは、海馬(かいば)の側にある「嗅周皮質(きゅうしゅうひしつ)」と、脳幹にある網様体(もうようたい)が活発に動いていたこと。
「嗅周皮質」は脳全体の記憶の情報を海馬に送る通過点、あるいは海馬の情報を脳に発信する出発点にあたると考えられている箇所で、「網様体」は寝ているときには動かず、集中しているときに活性化する箇所。
 今回の結果からは、「天才的な直感」のカギはこのあたりに関係しているのではないかと推測されていた。研究は続けられているので、そのうち大発見があるかもしれない。


 国際電気通信基礎技術研究所(京都府)の神経科学者 神谷之康(かみたに ゆきやす)氏が、世界で初めて、脳画像から「心の中の映像」を読み解いたことも紹介されていた。
 目で捉えた映像は視神経などを経由し、後頭部の視覚野に送られる。そのときの視覚野の活動をMRIで捉えて、脳画像から何を見ているかを探り出すことに成功したのである。つまり、何も見ていないときにも、脳画像を見ることで何を考えているかを読み解くこともできるわけである。
 

 衝撃的だったのは、ハーバード大学 精神科学教室で、子供の頃に虐待を受けた人の協力のもとに行なった、聞き取り調査と脳のMRI撮影データの解析結果である。
 アメリカでは虐待の被害者は約80万人いるそうだ。
 共同研究でMRIの画像解析をした、熊本大学の友田明美博士によると、長期間、体罰を受けた人たちでは、思考を司る「前頭前野」の一部に体積が少ない部分があり、強い口調で叱られ続けた人では音を聞く「聴覚野」、性的虐待では「視覚野」など、通常より10〜20%ほど体積が少なくなっているのが見つかった。
 あまり変化しないと思われてきた脳が、神経細胞のネットワークをつくりあげることで変えることができると考えられ始めていることが、せめてもの救いである。
 

 脳科学は、様々なことにも応用されているそうだ。
 商品、広告などのモニター調査を採用する企業は少なくないが、オーストラリア、メルボルンの広告会社では、脳波の計測機器をつけたモニターたちに、制作中のテレビコマーシャルを見せて、脳波から結果を導き出している。
 アメリカでは、受刑者の脳を調べて、犯罪の再発防止に役立てようとしている。
 昨日最終回を迎えた木村拓哉さんのテレビドラマ「MR.BRAIN」のシーンで何回かあったが、嘘発見器の代わりに使おうとする動きもあるらしい。余談だが、諜報部員は大変だ。

 
 原爆や核、DNA研究、インターネットなど。考え方の違いや悪意で大きなデメリットを持つものが増えている。
 脳画像はビジネスでは使われているが、まだ研究過程。
 心や能力につながる重要性と、未解明だからこそ関心の高い「脳」。
 しかし、不安も感じるのである。たとえば。DNAで人間の優劣を決める世界が描かれている映画「ガタカ」で、生まれるときから選別される社会や、エリートに生まれながら最終的に命を絶つ青年に、なんともいえない後味の悪さと不安を感じたような。

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