ナミダ

2011.1.21

 涙には「生理的な涙」「反射的な涙」「感情の涙」の3つの涙があるそうだ。
 涙は、通常、瞼をスムーズに動かし、目の表面を乾燥や細菌、ゴミなどから守り、角膜などへ栄養・酸素を補給するため、1日に約2〜3ml程度分泌されている。
 涙腺から流れる「涙液層」を、結膜の細胞から分泌される「ムチン層」が糊のように目の上に保持し、まぶたの瞼板腺(マイボーム腺)から分泌される「油層」は一番外側で涙液の蒸発を防ぐという3層構造になっている。
 涙は、血液から赤血球などが除かれた、弱アルカリ性の液体。成分のほとんどは水分で、他にナトリウム、たんぱく質、リゾチームなどが含まれている。
 目尻側にある涙腺(主涙腺・副涙腺)から分泌された涙は目の表面を流れ、目頭側にある涙道(涙点→涙小管→涙嚢→鼻涙管)から鼻腔を通って、喉に吸収される。
 痛みや寒さ、吐き気、あくび、くしゃみ、そして、笑いすぎや、感情の高ぶりなどによって、涙点から吸収するのが間に合わなくなると目からこぼれ落ちる。
 泣いている時の鼻水は、鼻涙管を通って流れた「涙」。欧米人は鼻涙管が太いので鼻水となって流れやすく、ティッシュを目ではなく鼻に当てるのは、そのためだとか。


 1980年代に、アメリカの生化学者のウィリアム・フレイ二世(William H. Frey II)博士は、涙には感情によって生まれる緊張感で生じる化学物質を体外に排出する役割があるという仮説を立てて、感情によって流された涙と生理的な涙の成分比較をした。
 感情の涙は、副交感神経の働きによって流れる。その際、神経を緩和させるロイシン−エンケファリンや、ストレスで生じるプロラクチン副腎皮質刺激ホルモン、ストレスが強い時には神経の伝達に影響を与えるマンガンカリウムが多く分泌されているといわれている。
 交感神経が刺激される悔しさや怒りで流す涙は量が少なく、ナトリウムの量が多いため塩辛い涙となり、嬉しさや悲しみなど、副交感神経の働くときにはカリウムが多く、量が多い水っぽい涙になるとか。


 感情と身体的な変化の関係性には様々な説が唱えられてきた。
 その1つに、『悲しいから泣くのではなく、泣くから悲しいのだ』という言葉で有名な、ジェームズ=ランゲ説がある。
 アメリカの心理学者ジェームズ(W.James)とデンマークのランゲ(C.Lange)がほぼ同時期に提唱した説で、外的刺激により「情動が身体変化を起こす」のではなく「身体変化によって情動を引き起こす」というもの。
 後に、反論として、中枢神経からの信号は大脳のほうに伝わるのが早いために情動のほうが先に現れる、とする「キャノン=バード説」。環境が要因となって異なる情動を起こすことから、「認知」することが1つの要因である、とした「シャクター=シンガー理論」なども提唱された。
 学術的にどういう結論になっているのかは知らないが、泣くから悲しくなる、笑っているうちに楽しくなってくる、奥歯を噛みしめていると悔しさが倍増する、あるいは、汗をかいているのを見て暑いと感じることなどは、実際にあることだ。
 ちなみに、汗をかかなくなると、次第に機能が衰えて、体温の調整機能が自分ではうまくできなくなるそうだ。だとしたら、時々、泣くことはやはり必要だ。理論はともかく、残されている機能は必要なので残っているからである。
 たとえば、感情は、脳が感じているものなのかもしれないが、好きなものに触れたとき、指先が「好き」という感情を持っているように思うときもある。
 自分で感情を意識する前に、涙がこぼれたり、表情が変わっていることもある。
 ただ、泣いて、一時的に感情は変えることができても、記憶までは無くならない。
 年を重ねると、思いも寄らないことに涙ぐむことが多くなるのは、感情のコントロールが抑制しにくくなったからで、それは老化現象といわれている。しかし、単なる老化ではなく、長年抑制してしまっていた感情を教えてくれる役目が、「涙」なのではないかと思うのだ。
 できれば、そのときの涙が、悔し涙や怒りの涙ではなく、愛おしさや慈しみや、嬉し涙だったらいいな、と思う。

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