地ぱんドリーム Jipan Dream〜大橋雄二氏の本〜

2011.11.11

地ぱんドリーム
地ぱんドリーム
Jipan Dream


著者:大橋雄二
地ぱんマンのイラスト:
   やなせたかし

発行:株式会社佼成出版社
定価:1,400円+税
発行日:2011年10月30日
 すごい男がいると感心させられる。
 生まれながらにして背負った遺伝的な病気「血友病」と闘いながら青春時代を過ごし、治療と過酷なリハビリを乗り越えて、かろうじて歩けるようになったと思った矢先、転倒して、おそらく、血友病患者としては国内で初めての脚の切断手術を受けることに。それでも著者は、家業の製パン工場への就職を希望し、営業マンとして活動を始める。
 ところが、その頃、大手のパンメーカーが地方に進出してきて、悲哀を一身に浴びることになる。
「このままではいけない。なんとかしなければ会社が潰れてしまう」 
 そこで思い切った勝負に出た。
 それは、これまで誰も考えなかった「日本の穀物でつくるパン」だった。
 小麦にこだわらず、日本の米や雑穀、そして、水、塩、酵母という素材にこだわってつくった「日本独自のパン」は、自然食品に関心を持つ人々の間で評判となった。食品添加物に疑問を抱く人や健康志向の強い人の間で話題になり、販売店が次々に現れてきた。
「それぞれの地方の自慢の穀物でつくったパンだから、このパンを地ぱんと名付けた」
 著者の大橋雄二氏は、今、銀嶺食品工業株式会社の二代目社長として、カロリーを気にする糖尿病患者の人でも食べられるパン(ドクターズベーカリー)の開発や、身障者の人たちが自立できるための収入を得ることができるビジネスモデルを構築し、ニュービジネスの旗手としても注目されている。
 私は編集協力という形で、今回、「地ぱんドリーム」(佼成出版社)の制作に携わった。
 そんなことから、大橋氏と何度も面会し、打ち合わせをさせてもらったが、毎回思うのは、とにかく明るくてとても元気な人という印象。
 声が大きく、よく通り、語彙も豊富。話の展開もリズミカルで実にうまい。気がつくと、いつの間にか、大橋氏のペースに乗せられているという感じだった。さすがにラジオでディスクジョッキーを長年やってきた人、と感心させられた。
 大橋氏にはもう一つ特筆すべきことがある。それは、独学でマスターした英語力だ。
 病気で高校進学を断念せざるを得なかった大橋氏はベッドに横たわりながらも勉強し、近所に住むキリスト教の外国人神父にお願いして英語を学び、ついには進学塾で人気講師として英語を教えるまでになっていたという努力家である。
 大橋氏から学んだことは、どんな状況にあっても「諦めない」という心の強さ。前向きに発想し、果敢に挑戦していく姿勢。思ったことはすぐに実行する迅速な行動力。
『地ぱんドリーム』には、そうした大橋氏をつくり上げた環境も書かれていて、人生の指南書として、ビジネス構築論として、あるいはブレイクスルー、パラダイムシフトなどのケーススタディとして、そして、なによりもドキュメンタリー・エッセイとして興味深い。
 一読をお勧めする。             久保 雅督

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