フォーチューン・クッキーは辻占煎餅

2006.8.20

 フォーチュン・クッキー(fortune cookie)。
 映画で、アメリカの中華料理店でのシーンに、よく登場するクッキーである。
 大抵は、勘定書と一緒に、サービスで出される小さなクッキーの中に、運勢や中国の文章、あるいはクジのナンバーなどが書かれた紙が入っている。
 プロポーズのための指輪を、中に入れて渡す映画のシーン(うまくいかなかったが)を見て、おもしろいと思っていたら、フォーチューン・クッキーの起源は日本、なのだそうだ。中国には、このような習慣はないそうである。
 代わりに、月餅(中華饅頭の一種)について、こんな話がある。
 王の圧政に苦しんでいた人々が、中秋節(旧暦8月15日)に反乱を起こす計画を書いた手紙を、月餅(当時の麦餅)の中に入れて、同志に送ったというもの。
 中秋節に、中国では、家族や友人と満月を愛でながら、月の円さに家族円満などの願いを込めて月餅(英語でMoon Cake)を食べたり、果物や野菜と一緒にお供えをしたり、友人へ贈るなどの風習がある。香港では、数多く贈ると、かなりの出費になるため、毎月の積み立て制度もあったらしい。

 1894年、サンフランシスコ、ゴールデンゲートのJapanese Tea Garden(日本庭園)で、萩原真(はぎわらまこと)氏が、煎餅(Japanese cookie)を2つ折りにした中に言葉を書いた紙を入れて、お茶請けとして出した。その後、アメリカの中華料理店で、煎餅をクッキーに替えて、出されるようになり、広まっていったそうだ。
 萩原氏のアイディアの原型は、日本の「辻占煎餅」。
 辻占(つじうら)とは、櫛占(くしうら)ともいわれ、吉凶を占う短い文章が書いてある紙片のこと、あるいは偶然の事柄から吉凶を占う「占い」の一種、また、神社で新年の祝いとして配られた煎餅のことである。
 もともとは、夕刻に、神も通る場所といわれた(道が交わっているところ)に立ち、そこを通る人の言葉などを神の託宣として受け止めて、占うことを辻占と呼んだ。夕方に行なうところから夕占(ゆうけ)ともいわれる。

 しだいに薄い煙がたなびくように黄昏が忍び寄ってくる。逢魔が時などと恐ろしげな呼ばれ方をする、この世と異界が触れ合うひとときが訪れようといているのだ。
 古人はこんな刻、道行く人々の間からひょいと洩れ聞こえてくる言葉をつかまえ、意味があるはずもないその言葉に運命を、何ごとかの吉凶を尋ねた。夕占(ゆうけ)という。
 「朱色の研究」 有栖川有栖著 角川文庫より


 ちなみに、陰陽師、安倍晴明でも有名になった、京都上京区の堀川の戻橋(一条戻橋)は、異界との境といわれていた「橋」のたもとに立って占う、橋占(はしうら)の名所。
 江戸時代になると、子供が、辻で御籤(みくじ)を売り、後に煎餅に入れて、辻占売りが売ったものを、辻占煎餅というようになる。
 実は、辻占煎餅の現物をまだ見たことがないのだが、京都、大阪などで売られているそうで、金沢では、元旦に家族で辻占煎餅を食べて、吉凶を占う習慣があるそうだ。
 ところで、辻占煎餅も、占いというからには、1日に2個以上占って(食べて)はダメなのだろうか。

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