虹の色

2008.2.3

虹 photo by masaaki kubo

「同じものを見ても、見えているものは人によって違うんだ 」

「どういうこと?」

「たとえば、虹は何色に見える?」

「7色でしょ」

「そうかな? こんな話がある。虹の絵を見て、日本人が、『ちゃんと7色に描いてある』と関心していたら、一緒にいたアメリカ人が言ったそうだ、『へぇ〜、7色見えるのかい? 目が良いんだね』」

「どういう意味なの?」

「虹は、単色で塗り分けて描いた絵のようには、色と色の間がハッキリと分かれていないだろう? グラデーションになっている部分の色を指して、なに色に見えるかと聞くと、答えは人それぞれになる。たとえば、藍色と青色、赤とオレンジ色をどこで区切るかは人によって違うし、区別せずに1色と数える人もいるだろうね。同じ色を、緑が強い青ということもあるし、青味がかった緑色ということもある。そこで、さっきの虹の話だけど、日本では虹は7色だけど、アメリカなどでは藍色がない6色とされているんだ」

「そうなの?」

「それどころか、赤と青、赤と黒、赤と白のように2色で表す国もある」

「赤と白の虹かぁ〜。虹のイメージが随分変わるわね。そういえば、子供の頃に写真で見た虹は、どうしても7色数えられないのが不思議だったのに、今は、疑うことなく虹は7色だと思っている」

「思い込む程の情報がまだ少ない小さな子供たちは、太陽や虹の色に様々な色を塗る。中には大人が思う色とはまったく違う色を塗っている子もいて、大人から見ると、本当にこんな色に見えているのかと心配したり、逆に、絵心があるのかもしれないと喜んだりする。案外、好きな色を使いたかっただけかもしれないと想像するけどね。大人は、色の捉え方に微妙な違いはあっても、子供ほど、常識からかけ離れた色は使わない。感じたことではなく、自分が経験したことや知識として知っていることが優先されてしまうからだ。実際に見ているものがどうなっているのか、最終的に判断するのは脳だからね」

「知識や情報が増えると、思い込みも多くなるのね」

「少ないと、判断に困ったり、非常識な行為ととられることもあるけれど、逆に、知識だけを優先させてしまうと、そこに当てはまらないことには目を向けようとしなかったり、自分が感じていることを、脳で打ち消していることもある。一度経験したことや、得た知識について、いちいち考えなくても済むように、つまり新しい情報を処理するための脳を確保するために、必要なシステムでもあるのだけれど」

「そういえば、それが普通、それが常識でしょ、と言う言葉を時々使うけれど、そのときの『普通』や『常識』は、『私たちの中では』という条件付きなんだって思うことがあるの。特定のグループや団体、地域や人種の中で通じるだけのこともたくさんあって、お互いがそのことに気づかずにいると摩擦が起こってしまったりすることもあるのよね」

「だからといって、すべてに疑問を抱くと、時間がいくらあっても足りなくなるし、決断も遅くなるから周りも迷惑する。感じたまま、思ったままに動かれるのも、それはそれで迷惑なこともある。結局、常識という概念も、くだした結論も、一つの選択肢にしかすぎない。しかし、直感で出した結論と、考えた末に出した結論が一緒になったからといって、その結論はまったく同じであるとはいえない」

「つまり、情報や知識は"始まり"でしかないということなのかな。虹に目を止める人もいれば、止めない人もいるし、虹を見ながら映画のシーンを思い出している人もいるかもしれない。ニュートンのリンゴ。きっと同じ物を見ても、見えている物は様々、そういうことなのね」

「虹が何色かなんて、勝手に決めただけの常識だから、本当はどうでもいい。それより、知ってしまったことに対して関心が薄れていくことのほうが問題だ。もう、新しい情報は、そこに何もないと思ってしまうことのほうが怖いからね」

「知ること、経験することで人間は成長するというけれど、そのことが"見えないこと"をつくりだしてしまっているとしたら・・・。難しいのね」

「そうかな。いつでも、どんなときでも、答えは一つではないと考えればいい。とてもシンプルだ。そう、僕は思うよ」


「虹」は、赤から紫色のスペクトル(Spectrum)が弓状になった光。雨上がりや、滝など水しぶきがあがる所で見ることができる。水滴(水蒸気など)が、プリズム(prism)に似た役割をし、太陽の光を屈折させて反射するため、色が分かれて見える。
 日本では7色とされている。
 通常は、波長が長いため屈折率が少ない赤色が、半円状の外側に、屈折率が大きい青、藍、紫が内側になる。これを主虹といい、2回の屈折と1回の反射でできる。主虹の外側にボンヤリ見える副虹は、2回屈折し2回反射することから、外側が青色で、一番内側が赤色になる。
 赤(セキ)、橙(トウ)、黄(オウ)、緑(リョク)、青(セイ)、藍(ラン)、紫(シ)という音読みで順番を覚えた人もいるかもしれないが、これはデジタル的に色を分けたもので、色と色の間には無数の色が存在する。
 最初に虹の色を7色としたのはアイザック・ニュートン(イギリスの科学者)。ニュートンは望遠鏡の研究の途中、白色光がプリズムによって色が分かれることを発見するが、その際、基本となる色を、聖なる数字の7色にしたといわれている。アメリカ、イギリスでは虹は藍色が抜けた6色が基本になっているが、学術分野では7色で表されている。
 虹という字に虫偏が使われているのは、古代中国で、空に横たわる竜の一種とみなしたことによる。英語の虹を表すRainbowはそのまま、「雨の弓」という意味。
 ちなみにstarbow(星虹・スターボウ)は、宇宙で、光速に近い早さで移動しているときに見ることができる、多くの星が同心円状の虹のように見える様をいう。
 moonbowは(月虹・ムーンボウ)は、夜、月の周りにできる光。ナイト・レインボウ(night rainbow)ともルナ・レインボウ(luna rainbow)ともいわれ、白く輝くことから白虹ともいう。
 マヤ族(メキシコ)は、虹を黒、白、赤、 黄、青色で表し、色を表す言葉が3つしかない部族では、当然、虹も3色になる。他に、夏は3色だが、冬は1色、というように季節によって表す色数が変わる所もある。
 古くは日本でも虹は5色とされており、沖縄ではかつて、赤と青(あるいは赤と黒)で表していたそうだ。
 五行思想のある東アジアでは5色、西欧では「三位一体」から3色のように、思想などを基準とした神秘的とされる数を使われていることも多い。
 余談だが、雲海より高い山や、飛行機から眼下に見える円状の虹は、ブロッケン現象といわれるもので、通常の虹ができる原理とは異なる。

前 頁

  次 頁

バックナンバー

サイトマップ

mail


法令に基づく場合などを除いて、個人情報をご本人の同意を得ることなく第三者に提供したり、開示したりすることは致しません。

copyright(c) SOMETHING ELSE Co.,Ltd. 2012 all right reserved  since2006