蘭奢侍(らんじゃたい)

2006.3.22

 以前見た、映画「雨あがる」(2001年日本アカデミー賞作品賞受賞・監督 小泉堯史/脚本 黒澤明/1999"雨あがる"制作委員会/原作 山本周五郎[角川書店刊])が、先日、TVで放映された。
 今まで何人かに「山本周五郎さんの本は、いいよ〜」と言われながらも、時代劇と聞いて、今ひとつ乗り気にならなかったが、映画ならばと思って見たところ、すっかり気に入ってしまった。(と言いながら、原作はまだ読んでいないのだが)
 もう一度見て、また余韻に浸りながら、ふと、昔、商品に付いていた小冊子で見た文字が浮かんできた。
 映画「雨あがる」の主人公、伊兵衛は、剣術の達人でありながら、奢ったところのない、それどころか底抜けの人の良さと、いわれのないやっかみで、なかなか仕官できない武士である。まったく反対の意味を含んでいるが、浮かんできた言葉は、沈水香(天然香木)「蘭奢侍(らんじゃたい)」。
「沈水香」は、東南アジア原産のジンチョウゲ科の沈香樹に、樹脂や精油が付着したもので、木が倒れた後も、樹脂の部分は腐らずに固まり、水に入れても浮かばないことから「沈水木」と呼ばれた。
 歴史や香、そしてお酒が好きな人にはとてもなじみ深い言葉らしく、有名なゲームにも出てくるらしい。(これだからゲームも侮れない)
 現存する最大のものは、奈良の東大寺正倉院に保存されている。長さ156cm、最大径約40cm、重さ11.6kgの木に、38箇所もの切り跡があったと、大阪大学の米田該典助教授(薬史学)の調査で明らかになり、切ったのは歴史上名高い数名の権力者だと思われていたのが、実は数十名にのぼるのではないかとされている。
 かつては13kgあったそうだが、目減りした分は、歴代の将軍や天皇が手柄のあった者に与えたためで、切り取った箇所には、切り取った織田信長、明治天皇、足利義政らの名前が付されているそうだ。
 お米が水に浸かっている間に発酵して、偶然、そこからお酒が生まれたという話は有名だが、「沈水香」も偶然発見された。推古天皇3年(595年)4月に、淡路島に流れ着いた2mほどの流木を、薪として火にくべるとなんともいえない良い香りがしたため、驚いて朝廷に献上したところ、聖徳太子が「沈水香」だと理解した、という記述が「日本書紀」にあるらしい。
「蘭奢侍」の正式名は、「黄熟香(おうじゅくこう)」。そのなんとも表現しがたいほどすばらしい、といわれる香りを、よく表しているように思うが、「蘭奢侍」の中に「東・大・寺」という文字と、「猛々しく奢った侍が必ず欲しがる」という意味を持つことで「蘭奢侍」の名の方が有名なのだそうだ。

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