クマバチの誤解

2008.5.20

 タイトルは忘れたが、羽をつくり続けて、飛ぼうとした男の話を、映画で見たことがある。とても大きくてきれいな、大天使のような羽だった。
 飛ぶためには、体に合った十分な羽の大きさと、羽を動かすための筋肉(動力)が必要だ。だから、人間の腕の筋肉では、羽をつけても飛ぶことはできない、はずである。
 映画では、途中から応援してくれる友達もできて、「飛べた」ともいえるような、感動的な終わり方をした。
 
 1934年、フランスの昆虫学者の「ハナバチはなぜ飛べるのか」という疑問に、長年、結論は出なかった。ハナバチの中でも特に、クマバチの体の大きさと羽の比率では、航空力学的に飛ぶことは「不可能」なのだそうだ。
 しかし、学者ではなく、出版社に勤めていたラルフ・ルイス・ウッズ氏が、こんなことを言ったそうだ。「クマバチは本当は飛べないけれど、自分が飛べないことを知らないから、飛べるんだよ」。

 動植物は環境に合わせて変化する。細長い筒状をした特定の花のミツを採るために、くちばしが細長く進化した鳥(ダチュラの花とヤリハシハチドリ)がいる。海に進出したウミイグアナの尻尾は、陸にいる陸イグアナの丸い尻尾と違って、泳ぎやすく平たくなっている。
 逆に、敵がいないため飛ぶことをやめて羽が退化してしまった鳥の中には、人間が連れてきて置いて帰った動物のエサとなって、絶滅しまったものもいる。
 クマバチの羽はなぜ大きくならなかったのだろう。
 
 クマバチ(熊蜂)はミツバチ科の一種。英名はJapanese carpenter bee。
 
藤の花が好きなのか、藤棚で多く見られるそうだ。ミツバチと同じく、花のミツや花粉を採っている。
 春になると、オスは空中でメスを待っているが、近づいてくるものをメスと勘違いして、あるいは他のオスだと思い排除しようとして、昆虫や、鳥、ホコリに至るまで、追いかける習性があるのだとか。
 見かけとは逆に穏やかな性質らしく、巣などに近寄らない限り、攻撃しかけてくることは少ないそうだ。黒と黄色の大きな体から、どう猛だと思うのは、誤解なのだ。
 ハチの中でも特に注意しなくてはいけないスズメバチを「クマンバチ」と呼ぶこともあって混同されることも、誤解されている理由の1つらしい。
 しかし、アニメでもない限り、多少、怖いと思われているほうがクマバチには都合がいいかもしれない。これまでの歴史を考えると、人間が近づくと、あまり良いことはないかもしれないので。

 自転車の練習中、いい感じに漕いでいたら、後ろを誰も持ってくれていないことに気づいて急に倒れてしまう、など。意識した途端、考えた途端に、できなくなってしまうことがある。
 自分で限界を決めなければ可能性は広がる。「不可能はない」という良い話を持つクマバチって、どんなハチなのだろうと興味を持って調べているうちに、親近感がわいてきた。
 仲間や親が飛んでいるのを見て、がんばったから、飛べたのに違いない。でも、人間の言葉がわからなくて良かった。飛べないことを知ったら飛べなくなってしまっていたかもしれない。今度、クマバチを見たら、「がんばれ!!」と声をかけてあげよう、など勝手な想像を巡らせる。
 
 しかし、たぶん、クマバチは困惑するだろう。
 クマバチは、体の上下で羽を回転させるときに発生する乱気流のような渦を揚力として、飛んでいるのだそうだ。レイノルズ数を計算に入れて、飛べることも証明されたらしい。
 というか、飛んでいるのだから、飛ぶ根拠が最初からあるはずなのだ。

 しかし、学術的な疑問と、勇気を、多くの人に与えてくれたクマバチはすごい!! のである。理屈より、言葉より、存在自体が、それに勝っているのである。
 白鳥は優雅な姿の水面下で必死で足を動かしているという言葉も、人間のように「がんばっているんだ!!」と考えずに、当然のこととして浮かんでいる"白鳥"がすごいのだ。
 それにしても、ウッズさんも、すごいと思う。単純なことが、最も美しく、感動的なのだろう。

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