不思議な日本人

2009.3.15

 来訪者は、キリスト教の勧誘だった。話の内容に否定するところもなく、時間もあったので、少し話を聞いた。しばらくして、また訪ねて来たが、時間がないことを伝えようとすると、「この間、キリスト教に興味をお持ちのようだったので」という言い方が気になって、訂正することにした。「宗教全般」に関心があると言ったつもりだった。
 すると、にこやかだった表情が明らかに曇り、それ以来、来なくなった。
 様々な宗教があり、いまも戦争が続いている。だから、浅はかな考え方かもしれないが、私は宗教を、教えや様式などは違っても本来の「根本」は同じものという捉え方をしている。1人ひとりが責任や希望を持って人生をまっとうするために、学びの中から、自らの答えを得るもの。簡単にいえば、それぞれの人がそれぞれの「心の持ち方」を体得するもの、である。
 知識不足だとは思うが、それゆえに、疑問に思う部分はあっても、1つひとつに対しての全肯定や全否定もない。だからといって、おみくじや占いで、良い方だけを信じるという無節操さとも違う。
 
 触れてはいけない話題に「宗教」「政治」などがある、と新入社員の頃に教えられた。
 宗教や政治については、思い入れが違って当たり前なので、相手の考えを聞くことも、自分の思いを伝えることも大切なのではないのかと、当時は漠然と思った。しかし、お互いが、そういう気持ちを持っていなければ会話が成り立たないという現実にも、何度か遭遇した。
 しかし、それは政治や宗教だけでなく、趣味の話題でも、相手の思い入れによっては同様の思いをすることがある。 
「NO」という否定よりは、曖昧さを選ぶ日本人気質。歴史的にも、問題が起こりそうなものは回避して、議論するより、しないことで協調や秩序を保ってきたように思う。
 意見や議論は、すなわちケンカ。感情的になるとケンカと決めつけられるが、感情のこもらない議論などあるのだろうかと不思議に思う。議論は、まずお互いの考え方の違いを知ることが目的で、ケンカは、基本的には感情の暴力だと思っている。
 誰しも、自分の思い入れの強いものに対しての否定はあまり聞きたくはない。また、思い入れを、一方的に押しつけられるのもごめんである。
 そのために、まず、話をすることが必要のような気がするのだが、それだけで、すべてが解決するとも思っていない。
 特定の政治家を支持している人と話をすると、政策よりは、その人自身に心酔して語られることが多く、よくわからない。宗教の話は、象徴となる人が絶対であることと、教典の丸暗記の話になってしまうことが多い。
 どちらも、趣味の話をマニアックに延々と聞かされているような気分になる。マニアックな部分に自分なりの解釈を加えてくれると、あるいは興味を持つことができるかもしれないのに。
 かと思えば、「自称 無神論者」は、宗教の話を毛嫌いしながらも、初詣に行き、神頼みをし、冠婚葬祭の在り方に疑問を感じていないようだ。キリスト教でもないのに教会で結婚式をして、葬式は仏教で行なうと非難された時代もあった。
 たぶん、「多神論」なのである。
 自然物にも神が宿っているとする考え方はごく自然だと感じる。恵方巻もクリスマスも、というのは、多少、無節操のような気もするが。
 片方で、「日本人は宗教を持たない」「様々な神仏を崇拝する不思議な国」と言われると、ポリシーがないと非難されているようで落ち着かない気持ちにもなる。
 
あるとき、ある人がこんな風に言っていた。いろいろなものを受け入れて、そこからさらに新たなものをつくることに長けていた日本人は、技術も宗教もそうしてつくりあげてきた、と。
 歴史的に見ると、政治的な事由で様々な弾圧もあったようだが、比較的穏やかな気候で、周りを海に囲まれていることにより生まれた穏やかな気質には、「絶対」をつくり出す必要がなかったのかもしれない。
 その時々で必要なものを取り入れる国民。
 不安定な時代には「占い」が流行り、「笑い」を求め、「リサイクル」で洋服や小物に手を加えて楽しむ。「重ね着をして省エネを」と叫んでも耳を貸さなかったのに、ファッションとしての重ね着を楽しむ。ブランドのエコバッグを買う。俳優やタレントが参加している運動に飛びつく。
 一歩引いて見ると、すこぶる不思議でつかみどころのない国民に思える。
 最近では、1つのことにこだわる「オタク」も世界的に認知されてきた。「家電」オタクは、とても便利でもある。
 こだわりの無さも、思い入れの強さも、それぞれに素敵である。とどのつまり、自分が必要なことが「素敵」なのだが。  

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