「リベラルタイム」2007年3月号 油井富雄
 
役に立つ健康情報
花粉症はスギで治す!?
マタギの知恵「スギの葉茶」に注目


ジャーナリスト 油井富雄  ゆい・とみお 1953年福島県生まれ。
早稲田大学文学部中退後、業界紙記者、
『週刊現代』記者を経てフリー。医療、健康食品間鹿を冷静な目で取材。
 
 スギ花粉が飛散する季節がやってきた。今年のスギ花粉の飛散量は、最悪だった一昨年の飛散量ほどではなさそうだが、この季節にはスギの木を恨めしく思う人も多いことだろう。
 ところが、スギの葉で花粉症が改善すると、ここ数年話題となっている。
スギ花粉症対策に、スギの葉を煎じてお茶として飲むのだという。
 花粉痘の原因といえば思い浮かぶのがまずスギ花粉だ。花粉症の人は、スギの木を見るのも嫌、それどころか、「憎っくきスギの木をすべて伐採してしまえ」という人もいるほど。ただ、花粉痘発症には事から排出されるディーゼルガスの粉塵も関与しているというデータがあり、花粉だけに原因があるわけではないようだ。
 材木として、防風林として人間社会に貢献してきたのに……。スギの木の嘆きが聞こえてきそうだ。
 とはいえ、スギ花粉症にスギの葉を煎じて飲むのだから、話だけで卒倒してしま
う人もいるかもしれない。
 まず、スギ花粉症を「スギの葉茶」 で克服した人の話を聞いてみよう。

祖父の民間療法
 東京・日本橋で事務機械会社を経営する高野茂信さん(五十九歳)悪者にされがちのスキだが‥は、十二年前に初めて花粉症になった。
「車を運転していて激しいクシャミに襲われ、鼻水が出るし、目も痒くなりました。それまでは一切、花粉症と縁がなかったのですが……」 と語る高野さん。
 これが花粉症か、けれどもそのうち治るだろう、と命までは脅かさない花粉症の初体験を味わっていた。
「ところがその症状は一向によくならなかったのです。とても改まった場所に出席することができず、人とも会えない状態。集中力もなくなり、寝込んでしまいました」(高野さん) そこで登場するのが高野さんの夫人のまち子さん。夫の一大事に実家に伝わる民間療法を実践した。それがスギの葉茶だった。
 さっそく知人からスギの葉を分けてもらい、実家で覚えた方法でスギの葉を煎じた。まち子さんは 「スギの葉茶は祖父から伝わったものです。私が幼い頃は、体の具合が悪い時に家族がスギの葉を煎じて飲ませてくれました。特に鼻の通りが悪い時等に効果があると聞いていたものですから」 と、花粉症に苦しむ夫を前にとっさにスギの菓茶が浮かんだのだ。
 おばあさんの知恵袋ならぬ、おじいさんの知恵袋だった。かつて花粉症は珍しい病気だったのだから、スギの葉茶は花粉痘薬というより体調が悪い時の万能薬だったのだろう。

マタギたちの万能薬
 高野さんは 「体の具合が悪い時ですから、症状に効くというものには何にでもすがる思いでした。スギの葉茶は多少の苦味はありましたが、飲めない味ではなく、森の香りがする煎じ薬のようでした」という。
 まち子さんの愛惜こもったスギの薬茶は、高野さんの症状を飲んだその日に改善させ、翌日には会社に出勤できたのだった。
「鼻の通りはすぐによくなり、クシヤミも出なくなったのです。これには私自身が驚きました」 と当時を振り返る高野さん。
 ただ、花粉症の症状は、スギ花粉の飛散が収まれば自然に改善する。
ちょうどその時期に飲んだのであれば、効いたように思える場合もある。
「私が飲んだのは、まだ、スギ花粉の飛散が激しい時期でした。スギの葉茶の効宋を感じたその日からは、お茶を持ち歩き飲んでいました。そのせいか最初のような悲惨な症状はもう出ませんでした。それに知人に勧めるとかなりの人が喜んでくれました」 と、高野さんはスギの葉茶の効用を確信した。
 まち子さんは、「祖父は一級建築士で国鉄の駅舎等をつくる仕事をしており、建築資材になる材木の切り出しにマタギの方たちと山に入る場合もありました。その時に、山で生活するマタギの方たちが飲んでいたのがスギの稟茶だったのです。スギやサカキ等を焚き火にかぎして、岩清水で煎じてお茶として飲んでいた
ようです。胃腸や風邪、特に呼吸器系統にはいいという話でした」という。
 マタギとは山で生活し、伐採や狩猟生活する人たちのことだが、そんな彼ら健康法を、まち子さんの祖父は家庭で実践していたのだった。
「戦争中や終戦直後のことですから、薬等も十分にない時代です。だからこそ、祖父は母や父に伝えたのでしょう。私も小さい頃に何度も飲まされました」 と、まち子さん。

スギの葉の上手な煎じ方
 花粉痘にスギの葉茶がよいと確信した高野さんは、科学的な分析を行う研究機関に協力を得て、スギの葉の成分やその機能性について知ることができた。
 それによると、スギの葉の成分は、ピネン、リモネン、ゲラニオールといった成分だった。動物実験では、スギの精油成分には、抗菌作用の他にアレルギー反応を起こすヒスタミンの放出を抑制することや気管支平滑筋の収縮を抑制することがわかった。
花粉症の症状改善に役立つ成分が含まれていることになる。
 ところで、スギの葉はどう煎じればよいのか。まち子さんに伝授してもらおう。
@約三〇皿ほどのスギの枝二本ぐらいあれば一回 (水二8) 煎じる量と
しては十分。
Aスギの枝をよく水洗いしてから葉を切り落とし、その葉を粗く刻み鍋に入れる。鍋は土鍋やホーロー鍋が適している。鉄鍋等は鍋の鉄成分が
溶け出して化学反応を起こす場合もあるので避ける。
B鍋に水 (約二8) を入れて沸騰したら弱火にする。四十分から一時間ほどかけて水の量が三分の二程度になり葉の色が茶褐色になるまで煎じる。
Cガーゼ等でこしてできあがり。
注意点としては 「スギの枝は、空気がきれいな場所にあるものがベストでしょう。また、スギの葉からは成分が抽出しにくいので時間をかけてじっくりと煎じるのがコツです」と、まち子さん。
 つくり方は簡単だが、日本茶や烏寵茶のようにお渇に浸して、すぐ飲むというわけにはいかない。
「マタギの知恵」は高野夫妻の手で様々な商品になった その後、研究熱心な高野さん夫妻は、スギの葉の焙煎方法等にも工夫を凝らし、スギの葉のお茶を製品として開発。またスギの精油成分だけを取り出してカプセル化にも成功した。
 まち子さんから教わった方法で、実際にスギの葉茶をつくって飲んでみた。強いスギの匂いがすると思っていたが、意外に飲みやすい。数日前から風邪を引き、鼻水が出ていたのだが、スギの葉茶を飲むと数時間後には、鼻の通りがよくなった。この葉には抗菌作用もあることから風邪等にも効果を発揮しそうだ。
 花粉症のせいで世間から必要以上に憎まれてしまったスギの木だが、名誉挽回にスギの葉が必死で訴えているようだ。今年の花粉症対策、そんないじらしいスギの葉に懸けてみるのもいいかもしれない。 
 リベラルタイム 2007.3