サクラ大戦〜終わらない喧騒の日々〜
( 〜真宮寺 さくら&ロベリア・カルリーニ編〜)
大神は、考えていた。
斧彦の話、椿の話、紅蘭の話、一見共通の事など無いように思えるのだが、何か心に引っ掛かる物があるような、気がしてならないのだった。
『なんだろう、何かある気がするんだけどなぁ』
考えを巡らせていると、
「大神さん、次は私なんですけど・・・・・。」さくらは、恐る恐る手を挙げ、そう告げた。
「ん?あっあぁ、すまないさくら君。」
考えるのを止めて、さくらの方へ向き直った。
「じゃあ、始めますね。」
さくらは、ちょっと躊躇しながら、ボソボソと話始めた。
「これは、皆さんのとちょっと違う様な気がするんですけど、私が不思議に思ってる事っていうと、これぐらいしか思い当たらないもんで・・・・・。 え〜と、ちょっと言い難いんですけど。 ・・・・・あのですね。 先日の「シンデレラ」公演が、終わった後の事なんです。」
〜回想〜
「今日も大成功だったねぇ〜。」
アイリスは、満足そうに声を高らかにそう言った。
アイリスがそう言うのも無理無く、今日も公演が終わったにも関わらず、お客様からの拍手とアンコールの声が鳴り止まず、2度に渡り花組の舞台挨拶があったところである。
「そうねぇ、私達とお客さんが、一体になったような感じだったわ。」
さくらは、胸に手をあて、高揚した気分に酔いしれていた。
「オーーーーホッホッホッ。 これというのも、私の演技が素晴らしかった、おかげですわね。 まあ、さくらさん達も頑張ったのでしょうけど、何といっても主役を影から盛り立てた、私の演技があったればこそですわ!!」
すみれは、いつもの口調で、いつものセリフを言った。
とりたていつもの事だからか、カンナ以外の人は、聞き流していたが。
「また、始まったよ。 この嫌味女!!」
カンナは、うんざりといった感じで、すみれに向かって吐き捨てた。
「まー!なんですって、カンナさん!あなた今回もまた、セリフを間違えていたじゃないですの。 この私がフォローしてあげたから、大事に至らなかったようなものの、少しは真面目にやって欲しいものですわ!」
カンナを横目で見やりながら、プイッ!!っと、そっぽを向いた。
「なんだとー!!お前こそ、たまには素直に誉めてやればいいじゃないか、いつでも自分が一番じゃないといけないのかよ!!」
カンナのその言葉を聞き、すみれは正面を向いて、胸を張って言う。
「あたり前じゃないの!この私を誰だと思っているんですの? 私は、かの神崎重工の一人娘であり、この帝劇のTOPスターなんですから!!」
「・・・・・・・・・はぁ〜。」
その言葉に気圧されたのか、呆れたのか、それっきりカンナは、押し黙ってしまった。
と、そこに大神が楽屋に入って来た。
「やあ、みんなお疲れ様!!」
大神は、手にトレーを持ち人数分のコップと、麦茶の入ったポットを持って来た。
「隊長さ〜ん!たまには、気が効くですね。 ちょうど喉がカラカラだったで〜す。」
織姫は、大神から麦茶を受け取ると、ゴクゴクと喉を鳴らして、喉を潤した。
「はぁ〜!五時六分に、染み渡るとは、このことですね。」
満足した顔で、はぁ〜っと、息をついた。
「・・・・・・・・織姫・・・・・・・・それを言うなら五臓六腑・・・・・・。」
レニが一応訂正するが、織姫は聞いていないようだ。
大神は、一人一人に声を掛けながら、麦茶を注いで周った。
「あっ!隊長、私がします・・・・・・・・。」
マリアは、慌てて立ち上がろうとしたが、
「いいから座っていなよ、俺がするからさ。」
大神は、立ち上がろうとするマリアに、優しく声を掛けた。
「・・・・・・・・・・・・すみません。 ありがとうございます。」
マリアも素直に、大神の好意に甘えその場に座り直した。
「ありがとう、お兄ちゃん。」
「ありがとうございます、中尉さん。」
「おおきに、大神はん。」
「サンキュー!隊長。」
「ありがとう・・・・・・隊長。」
「中尉さん、もう一杯お願いするでーす。」
一人一人に手渡して周り、他の隊員達も笑顔で応じた。
そして、さくらにコップを渡そうとした時である。
「さくら君、ココに置いておくよ。」
大神は、さくらの手元にコップを置き、さくらを見た。
「・・・・・・・・・あっ、すみません大神さん、・・・・・あの・・・その・・・私ちょっとシャワーを浴びて来ますね。」
さくらは、コップと大神に目をやり、深々と大神に頭を下げて、楽屋から出て行った。
「・・・・何か気に触るようなこと、したかなぁ〜?」
大神は、ポリポリと頭を掻きながら呟いた。
その声を聞きマリアが側に寄って、大神に耳打ちする。
「隊長、さくらは今日も色々と大変でしたし、やはり女の子ですから。」
マリアは、そう告げると「クスッ。」と笑みをこぼした。
「そうやな〜、ぎょうさん汗かいとるやろうし、年頃の女の子やさかい、好きやった男には嗅がれとうないやろなぁ〜。」
マリアが、言葉を選んで言ったにも関わらず、アッサリと紅蘭が言いのける。
大神は、なるほどといった感じで、納得していた。
「じゃあ、みんな後片付けと今回の反省会は、後でするとして、とりあえず各自休んでくれ。」
みんなを見渡して、そう大神は言った。
〜 (地下・シャワー室) 〜
「はあ〜、まいったなぁ〜、大神さんに変に思われていなければいいんだけど。」
さくらは、更衣室で帯をほどきながら、呟いていた。
「どうせ楽屋に来るなら、シャワー後にしてくれればいいのに、こんなに汗臭かったら面と向かって、話できるわけないじゃない。 もうタイミング悪いんだから。」
服を脱ぎシャワー室へと入った。
さくらは、鼻歌まじりにシャワーを浴び始めた。
最初、分からなかったのだが、暫くすると自分の後ろから誰かが見ているような気になってきたのである。
「誰!!」
反射的に、視線を感じた方へと、振り返った。
だが、そこにはただ壁があるでけで、誰も居なかった。
「おかしいなぁ〜、誰か視線を感じたような、気がしたんだけどなぁ〜。」
さくらは、不思議そうな顔をしながら、またシャワーの方へ向き直った。
が、向き直った瞬間、また背後から視線を感じる。
その視線は、どこか懐かしいような、前にも見られていたことのあるような気のする、暖かい視線だった。
(なんだろう?)
一瞬考えが頭を過ぎったが、すぐに今の状況を思い出した。
「誰ですか!!」
さくらは、勢いよく後ろを振り返ったのだが、やはり誰も居ないのである。
「おかしいなぁ〜?」
さくらは、体にバスタオルを巻き付け、シャワー室から更衣室の方へと顔を出し辺りを見渡した。
「あれ〜?やっぱり誰も居ないなぁ。」
気味が悪くなったさくらは、早々にシャワーを切り上げて、更衣室を後にした。
〜 回想終わり 〜
「というような事があったんです。」
さくらは、耳まで真っ赤にしながら、話を終えた。
暫くの沈黙の後、紅蘭が口を開いた。
「さくらはん、そらぁ違うと思うでぇ。 あそこは、よく視線感じるさかいなぁ、うちが思うに、隊長はんでも覗いとったんとちゃうかぁ〜?」
紅蘭は、ニヤニヤと笑いながら大神の方を見る。
「紅蘭。 さすがにそれは、大神さんに失礼よ。 ねぇ、大神さん。」
さくらは、紅蘭を睨むと、大神の方を向いて、ニッコリと微笑んだ。
「そ・・・そ・・・・そうだよ。 僕が・・・覗きに行くわ・・・けないじゃないか。」
大神は、ちょっと言葉に詰まりながら、そう答えた。
額の汗を拭いながら、大神は言う。
「ちょ・・・・ちょっと・・・暑くなってきたね。 ちょっと休憩しようか。」
そう言って、みんなに休憩するように、指示した。
と、そこにロベリアが、大神の側に寄って来て、右腕で大神の首を引き寄せ、耳元に小声で語り掛けて来た。
「なあ〜、隊長。 今の話あんたの事だろう?」
ロベリアに指摘されて、大神はロベリアの方へ向いた。
「な・・・な・・・・・なにを言うんだ?」
あからさまに、動揺しているのが分かった。
「やっぱりなぁ、さくらの話を聞き始めてから、紅蘭の冗談を聞いてから、あんたの態度が変わったからな。」
ロベリアには、全てを見抜かれていた。
それでも、大神は知らないふりをしようとしたが。
「はぁ〜ん、私にそんな嘘が通用するとでも、思ったのかい?馬鹿だからかぁ〜?」
そう言って、大神を見下した後、さくらの方へ声を掛けようとする。
「お〜い!さくらぁ〜!!さっきの・・・・・・・。」
そこまで、言ったところで、大神に口を押さえつけられ、廊下へと連れ出された。
「分かった分かったから、何が望みなんだ!!」
大神がそう告げてきたのを聞いて、ロベリアはニヤリと微笑んだ。
「話が早いじゃないか、昨晩ちょいと負けちまってねぇ。 手持ちが心もとないんだ。」
それを聞き大神は、懐から財布を取り出した。
「しょうがないなぁ〜、俺だって給料前で、たいして・・・・・・あっ!」
財布を広げて、中身を確認しようとした瞬間、ヒョイと横からロベリアが、財布を奪い取った。
「とかなんとか言うわりには、結構入っているじゃないか。 まあ二百園でいいよ。」
【【当時の金額がわからないので、今でいう二万円ぐらいの感覚で】】
「・・・・・・・・・本当に黙っててくれるんだな?」
大神は、憮然としながら言った。
「高い授業料だったと思って諦めな。 まあ私は、黙っているけどね。 もう一人気付いているのがいたけど、そっちは自分でなんとかしなよ。」
大神は、ロベリアから思いもかけない言葉が出て来て、唖然とする。
「ちょ・・・ちょっと待てよ、誰だそのもう一人ってのは?」
「ん?・・・・・ほら、ちょうど来たよ。 じゃあ頑張ってな。」
ロベリアは、大神の背後に向かって、顎を振ってみせた後、その場から離れた。
大神は、誰の事かと背後を振り返る。
そこには、冷ややかな面持ちで、こちらに向かって来る、マリアが居た。