背中には必要な物だけを詰め込んだバックパック。
いつもより少し重いのは寝袋をくくり着けているからです。
早朝の人影疎らな通勤電車に多少の後ろめたさと、優越感を感じつつ乗り込みました。
いまでは旅を始める儀式のようになった新宿発の成田エクスプレスに乗り込み、 清潔で快適な座席に腰をおろすと定刻の出発を疑うこともなく待ちました。
  初めてのアフリカに選んだモロッコ。
あまりに有名なカサブランカ、毎日がお祭りのようだと言うマラケシュ、 喧噪の古都フェズ、カスバとオアシスそして沙漠。
  そのどれもが私に新鮮な驚きを与えくれますように。
  そして一人でも多くの出会いがありますように。


●4月20日 東京〜モスクワ(1日目)  
 アエロフロート PM12:45成田発、PM10:17モスクワ着(現地時間PM5:17) 21日AM10:15発カサブランカ行の予定。
 機内にはいつもと違う、どこかウキウキした雰囲気が漂っているように思います。 周りに見隠れする子供達の笑顔が、出発を前にした私の気分をいっそう昂揚させるからでしょうか。
 その岩手から来た子供達は日本文化の紹介とロシアのチェルノブイリ事故で病気になった人達のお見舞をかねて、村の『鹿踊り』を披露しに行くそうです。私の右隣に座っている通訳の女性はNGO関係の人でロシア訪問は25回目になるそうです。日本ではもう聞くことも少なくなったあの事故も現地ではまだまだ進行中なのです。あれだけ大騒ぎした放射能問題や原発問題も私はスッカリ忘れていました。

 彼等は岩手を出発してすでに19時間。モスクワから目的地までさらに汽車で9時間。 たいへんな旅です。でも、大人の心配をよそに子供達はいたって元気そうです。子供達には学校の勉強よりもズーっと貴重な経験になるんだろうと思います。私の左隣に座った引率役の男性は教職を定年退職した後にロシア語の勉強を始め、2年で会話、 読み書きもかなり上達している様子です。ロシアと言えば品不足で長い行列や暗いイメージがありますが、田舎のほうへ行けばのんびりとしたとても良い所というお話です。「ある国に対して持つイメージは決して全てが本当のことではありません、実際に行ってみないと判らないことも多いんです。」と言う男性の言葉に私は自分の持つモロッコの イメージを思っては消し、思っては消してゆきました。
 モスクワにはほぼ定刻着しました。これからここで17時間のトランジットに挑戦します。ロビーへ向かう途中、一人の日本人青年に会いました。同じ飛行機でやってきた彼はこのまま飛行機を乗り継ぎイギリスへ行くのです。なんと始めての海外旅行は自転車でイギリスから中東まで行けるとこまで行くつもりだそうです。彼からいろいろと旅の質問を受け、私は知る限りの情報を話し、お互いの健闘を祈って別れました。そして、私一人のながい長いトランジットが始まりました。



●4月22日 カサブランカ〜マラケシュ(3日目)  
 早朝4時ごろにアザーンの声に叩き起こされ、「しまったー!!モスクが近いんだぁ」と思いましたがどうしようもないので諦めて、また寝ることに。
 7時50分起床。9時ホテルを出発。CTMバスターミナルでチケットを買う。ヒダカさんは2〜3日カサにいるような話でしたが、私と一緒に いくことにしたようです。
 このヒダカさんと言う女性とは昨日空港から乗った汽車で出会い、そのまま同じホテルしかもシングルルームのないこのホテルで、お互い経費節減の為、部屋をシェアすることにしたのです。モロッコ初日から女性と一夜を共にするとはラッキーなのか?いまのところ定かではない。
 カサまでは65DHバゲッジ5DH。10:28マラケシュに向けて出発。3時にマラケシュに到着予定。CTMバスターミナルでさらに2人の日本人に会いました。はじめはカップルだと思いましたが話を聞いてみるとその2人もそれぞれ一人でやってきて偶然出会ったそうです。 私達4人はこの先の予定も皆似たようなモノです。結局モロッコ3日目にして4人旅になりました。
 マラケシュにはほぼ予定通り到着。ホテルはメディナ(旧市街)のホテル・エッサウィラ。男女に分かれて各々1部屋をシェアすることにし、一人1泊40DH也。シャワーはホットが5DH、水はフリー。
 同室になった土田氏はスペインを廻ってモロッコまでやってきた名古屋の人でこの国を廻った後は、フランスにゆき、フランス外人部隊に入る為に試験を受けるそうです。拳法初段、空手3段の格闘家です。 それにしても、旅行をしているといろいろな人に会うものです。近い将来、軍人の知り合いができるかも?
 少し早めの夕食は、むかし罪人の処刑場だったジャマ・エル・フナ広場の屋台で20DH。 食事のついでに買い求めた水1.5Pは10DHでしたが、雑貨店で買うと5DHでした。 これが相場のようです。(1DH=13円)

  スークの中

●4月23日 マラケシュ(4日目)  
 まずはスークと呼ばれる迷路のようなアーケイド街に挑戦です。
『歩き方』に書いてあるほど自称ガイドはやってきません。約2時間で一旦フナ広場に戻る。スーク内は思っていたほど雑然としたものでもなく、歩き易い。客引きもインドに比べるとはるかに紳士的です。ただ、やはり複雑は複雑です。 コンパスを持ってくれば良かったと、後悔しました。
 26番と看板に書いてあるジュース屋でオレンジジュ ースを2DHで飲んでいると、やってきました”自称ガイド”のオジサンです。なかなかホネのあるガイドでしつこく付きまとってくるので、散髪屋さんに避難することにしました。 はじめ散髪屋のオヤジとガイド、それにすでに散髪を終えたお客の3人が口を揃えて「50DHです。」「グッド、プライス!」と言ってくるが、「15DHじゃないと、やんない」と言うと30〜25〜20DHと値はドンドン下がり、最終的に17DHで決定です!いつものように「オッチャンみたいにやってくれ」と理容師の頭を指しながら言い、生まれて始めてボウズ頭にしてみることにしました。
 見る見るうちにみごとなボウズ頭になった私は20DH札を渡すとオッチャンは”20DHでOKでしょ” みたいな顔をしている、「3DHおつりをくれ」と言うと以外と素直にくれたので、チップに2DH渡すとオッチャンは満面の笑みをうかべ「ビューチフル、ビューチフル」と私の頭を褒めてくれたその上に、アドレスまで書いてくれて、「また、きてくれ」と大喜びでした。
 外に出ると先ほどのガイドは姿を消しており、一人再びスークへ入って行きました。あちこちにモスクがあり、めざすベン・ユーセフ・モスクは見当たりません。やっぱり地図なしで歩くのはムリのようでした。
 スークではユセフ少年の店でマジック・ボックス(からくり細工の箱)やビックリ箱など見せてもらう。なかなかカンジのいい少年です。明日からちょくちょく寄ってみようか。
 夕食はハリラ2DH、エスカルゴ(小)5DH。このエスカルゴ、フランスの物とは程遠く、味はかなり塩っからい。歯応えはまったく無し。かなり苦手な味です。店の人の話ではこいつを喰うと精力バリバリになるらしく、私の顔を見てはニタニタ笑っていました。隣ではマガリビのお姉さん二人が何杯もおかわりしています。大丈夫なのかと心配。