PROLOGUE



ふう……
ちらちら雪が降ってきたね

手すりに手を置く…
金属の冷たさが、じんじんと伝わってくる

あしたも、外は銀色に被われるんだろうね



右を向くと、
降る雪たちがきらきらと輝いていた。

端の部屋から洩れている光に反射しているんだ



その輝く雪に吸い寄せられるように
ボクはそこに近づいていった。


側まで来ると、かすかに音楽が聞こえる……

祐一君まだ起きてるんだ……



勢いのある曲調
ボーイッシュな声
初めての曲だけど
ボクはこの声を知っている

しばらくその曲に耳を傾ける




そのままでいると、
曲が変わった


それはいつか聴いた曲……

これは……
祐一君がお気に入りだった曲だ……

さっきと同じ女の子の声
明るい歌声…でも…さみしい曲


そう…
あのときもこの曲だった……
あのときもここに立っていて
ボクは手渡せなかった……


左手に握ったお人形
明日、渡せばいい…んだ、
それが流されるがままの運命……
ボクは関わってはいけないんだから
いままでもそうやってきたんだ……

でも……
この曲を聴いていると…



それは決意を秘めた女の子の歌
全てを失ってしまっても、
それでも夢を信じる気持ちを歌った…歌
くもり空向こうには
必ず虹が輝いていると信じて…



…やっぱり、これだけは、
ボクの手で渡したい

見て見ぬふりするよりも
ボクの手で祐一君に渡したいんだ……
だってこれは、ボクが……



ボクが背負わなくちゃいけない罪なんだから……









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