The unofficial web site provides the informations of Irish folk singer Cara Dillon

Cara Dillon / Lyrics

Craigie Hill / クレイギー・ヒル

traditional song

arranged by Cara Dillon and Sam Lakeman

Label : Rough Trade, Number : RTRADECD019
Recorded and produced by Sam Lakeman
それはね、
小鳥がさえずり始める春先でのこと
木陰のベンチを下って降りたあたりから、
うっかり知らない道に迷い込んだの
ツグミ鳥たちが美しい声でさえずっていたし、
スミレの花もすごく綺麗に咲いていた
そこをのんびり歩き回っていると、
恋人同士の話し合う声が聞こえてきたのよ

彼女が言うには、
「ねえ、せめてこの秋まででいいから
  私をひとり残していくのはやめて。
  幸せな未来が待っているのはわかるの。
  それでも私、あなたと一緒に行きたい。
  友達や親戚のみんなだって捨てられる。
  このアイルランドの国に、バン川に
  永遠のお別れをすることになってもいい。」

すると彼は言ったの
「もうこれ以上、僕を困らせたり
  辛い思いをさせないでおくれ。
  僕がとっても愛しているのは、
  君もよくわかっているよね。
  それでも僕は行こうとしてるんだ。
  よその国へ行ってでも、大きな農園を
  手に入れなきゃならないんだ。
  すべてはアメリカでの、
  僕たちの将来のためなんだよ。」

ほんの少し先の未来に幸福が待っている
後から遅れて行く私たちにも、
幸運の女神が微笑みをもたらしてくれる
最も華やかしき時代の女王ビクトリア、
彼女に負けないほどの幸福が待っている
ワインを飲める生活、あらゆる幸福が
アメリカで私たちを待っているの

今あなたがベッドに横たわり、
死ぬほどの苦しみを抱いているのだとしたら
それはあなたがバン川の、あの美しい光景を
捨て去る悲しみに耐えられないと思っているから
でもね、
あの木陰のベンチを、私じゃなくて、
あなたが降りて歩き回っていたのだとしたら
今のあなたは幸せな気持ちに包まれていて
もう死にたいなんて事は思わないはずなの

クレイギー・ヒル、幾度も歩いた懐かしい丘よ、
この地を離れるなど子供時代には考えもしなかった
それでも今、私達は栄光と繁栄を求めて
大海を渡ろうとしている
ドアリンの岬をまわり、船は進んでいく

(補足)

【Craigie Hill - クレイギー・ヒル】

このクレイギー・ヒルという地名に該当する場所は 特定できておりませんが、歌詞中にバン川の名が登場する ことから、北アイルランドのデリー州内にある山または 丘の愛称なのではないかと推測しています。
"Craigie" はアイルランド語で、「岩」または「岩の」という 意味を持つようですが、この語に類似する地名の場所が バン川の近辺にいくつか見受けられます。

以前、この曲はスコットランドの古い伝承歌であると 表記しておりましたが、これは筆者の完全な誤りであり、 正確には北アイルランド・デリー州の伝承歌です。
(深くお詫びし、ここに訂正させていただきます。)

(解説)

この曲は海外でも人気がありますが、ファンの間で 「時代背景を知っていないと歌詞の内容が理解しにくい。」 と言われていた曲でもあります。19世紀頃の英国では、 いわゆる『農地囲い込み運動』によって多くの農民が 地主に土地を奪われました。さらには飢饉も起こり、 アイルランドやスコットランドでは多くの人々が 生きるために北米への移住を余儀なくされました。
そのほとんどの人々が愛する家族を残し、また、 祖国に別れを告げ、もう戻ってこられないという 覚悟の上で航海の途に就いたと言われています。
カーラの数世代前の叔父さんも、多くの隣人と 共に移民として北米に渡られたのだそうです。

さて、この曲のストーリーを語る女性は、ある日 たまたま二人の男女の会話を耳にします。 その会話の内容は、幸福な未来を手に入れる手段がアメリカには あるという、彼女に希望を与えるものでした。
その後、将来の夢をなくして絶望の淵にいる 夫を勇気づけるため、彼女はその日の出来事を 語り始めます。
上の訳詞では最後の節のみ、その夫の言葉として 記述してみました。はたして彼ら夫婦はそろって 大陸を目指したのでしょうか。それとも、妻を 残して彼ひとり航海の途についたのでしょうか・・・。