飼い主のイタリア留学記−週末旅行−
−2008年11月8日〜2008年11月9日までの記録−
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■一泊旅行 オルヴィエートへ 11月8日(土) |
フィレンツェのこの時期の天候は不安定です。朝、お日様が出ていても夕方になると必ずといっていいほど雨が降ります。でもこの週末のお天気はいいらしく、クララが天気予報を聞いて教えてくれました。 実は、この土日、私は一泊旅行に出かけるのです。行き先はオルヴィエート。オルヴィエートは国鉄の路線の、ちょうどローマとフィレンツェの中間あたりにある小さな美しい街で、いつか行ってみたいと思っていました。この街を知るきっかけは、イタリアのことをいろいろと調べているうちに出会ったあるサイトでした。このサイトからは沢山の情報をいただきどれほど勉強させて貰ったか分かりません。深く感謝致します。そして、今回このサイトの管理者の方が私の案内もして下さるので、正直道中は心細いながら、とにかくオルヴィエートまで行けばいいのだと、安心して列車に乗り込むことができました。 昨夜、クララに一泊旅行のことを話すと、「オルヴィエートは綺麗な街だと聞いているけれど、私はまだ行ったことがないのよ」と言いました。地元の人達は意外にそんなものかも知れません。ちょうどクララもこの週末はグループ旅行に出る予定らしく、私を一人アパートに残さずに済んでよかったと言ってくれました。 |
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駅構内の案内スタッフ | 11時9分発ローマ行きに乗ります |
オルヴィエートへの往復切符は、昨日料理教室に行く途中、駅に寄って購入しています。週末の駅は沢山の人で混み合い、切符を買うのに長時間かかると聞いていたのですが、まさにその通りでした。私は、行きはのんびりと普通列車、帰りはインターシティ(特急列車)の二等車を取っています。そしてもうすぐ発車時刻になるので、乗車するホームを確かめるのに電光掲示板を睨み付けているところです(*^_^*)。 |
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■一泊旅行 オルヴィエートへNO.2 11月8日(土) オルヴィエートのドォウモ |
イタリアの国鉄は国中を縦横無尽に走っていて国内旅行にはとても便利です。私は日本に居る時にフィレンツェとオルヴィエート間の時刻表を調べていましたが、チケットを購入する時にはメモに書いて持って行きました。 窓口で又早口でまくし立てられたら聞き取れないし、何よりも、沢山の人が列を作って待っているので出来るだけスムースに購入したかったのです。メモに書いたイタリア語は、事前にクララにその表記を見て貰い「ペルフェット!(完璧)」とのお墨付きを貰っているので、堂々と「このチケットを下さいっ」「どやっ?」と巻き舌で言うことが出来ました。イタリア人相手に話す言葉は、口の中でモゴモコ発音していては通じない…この一週間で学んだことでした。 |
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普通電車の車内 | フニコラーレ |
私が乗る普通電車の車内は空いていて、希望通りのんびりとした一人旅が出来そうで嬉しくなりました。発車間際、アメリカ人らしい若い男の子が乗り込んできて、入り口近くにいた私にこの電車はローマに行くかと聞いてきましたが、この子も又一人旅のようで、そういえば見渡せば、車内ほとんどが同じような旅人ばかりです。みんなどこに行くのでしょうか。聞いてみたい気がします。 私はフィレンツェの駅で買ったマクドナルドのハンバガーを頬張りながらずっと窓の外を眺めていました。どこまでも広がる青い空と、日本ならきっと退屈で寝てしまうような田園風景も、ここがイタリアだと思うと、どの景色も見落とすまいという意識が働きます。到着する時刻は頭に入っているし、次の駅のアナウンスもあるので安心です。一つ一つ駅を確認していくとフィレンツェ・S.M.N駅から数えて12番目がオルヴィエートでした。 駅に降り立つと、すぐに4人連れの観光客に出会ったのですが、なんとこれが日本人。若い女性がコンダクターを務め、3人の年配者を案内しているようでしたが、オルヴィエートは日本人は滅多に訪れないと聞いていたので本当に驚きました。こんなところにも日本人が来ている…私もそうなのだけど…もう世界中日本人が居ないところなんてないのかもしれない、そんな気持ちにさせられました。 さて、駅の前から出ているフニコラーレ(ケーブルカー)に乗って約3分ほど、到着したところから、更にバスに乗ってオルヴィエートのチェントロ(街の中心)に着くのですが、その目の前に立つドォーモの荘厳さとファザード(正面)の美しさに思わず立ち尽くしました。こんな小さな山の上の街にどうしてこれほどまで立派なドォーモが必要だったのだろう…それも完成するまで300年もかかるなんて…この街との不釣り合いさがどこかミステリアスで今も深く心に残っているのです。 |
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■一泊旅行 オルヴィエートへNO.3 11月8日(土) かわいい小道散策 |
オルヴィエートの歴史はとても古く、紀元前、エトルリア時代にまで遡ります。13世紀頃には法王たちの隠れ里にもなっていて、それだけに中世の面影が今も色濃く残ります。街は周囲約2qくらいなので、私はホテルにチェックイン後、街を散策しました。 今日は土曜日なので、町の通りは沢山の人達がぞろぞろ歩いていてとても賑やかです。私はまず、オルヴィエートで一番美味しいというトラットリア「パロンバ」で夕食の予約をしようと訪ねましたが、この小さなトラットリアは予約で満席、対応してくれた店主は丁寧に断りの言葉を掛けてくれました。このトラットリアは女性一人で入っても食べられる貴重なお店だったのにほんとに残念…仕方ないので、これもこの町で有名なカフェ「モッタヌッチ」でピザとこの店の名物チョコラッタで食事を済ませました。夕刻から雨も降って来て肌寒く冷えた身体にチョコラッタは美味しかったけど、食いしん坊の私は「パロンバ」の夕食が食べられなかったことがとても心残りでした。最近はインターネットの口コミなどで美味しいと評判が立つとお店はあっという間に有名になる…このパロンバもきっと例外ではないのでしょう。現に私がこうして訪ねて来ているのだもの。 |
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満席だったトラットリア「ラ・パロンバ」 | カフェ「モンタヌッチ」 | |
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町を散策中 | かわいいお店が沢山建ち並ぶ | |
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観光客がそぞろ歩くメインストリート | 今にも蹄の音が聞こえて来そうで… |
地図も持たず(どうせ地図の読めない女だし)一人で町の隅々まで歩き通しましたが、気が付くと何度も同じ場所に戻っていたりして…何だかこの町からからかわれているようで〜思わず一人で笑ってしまいました。同じ石畳の町でもフィレンツェのような都会と違って、このオルヴィエートは治安もすこぶるいいし、夜でも安心して外出することができます。人通りが途絶えると、どこからか馬に乗った騎士でも現れそうなそんな町角が沢山あって思わず立ち止まる…それにしても私はつくづく一人旅が苦にならない、知らない町を訪ねる楽しさをこの町でも存分に味わっている気がします。 そうそう、この旅行で楽しみにしていたことがあります。それはホテルの浴槽にたっぷりのお湯を張り浸かること。実は2、3日前にアパートのシャワーが使えなくなっていたのです。私が希望した通り、アパートには私専用のシャワー室があったのですが、それが先週のこと、突然下の階に水漏れがして階下の住人からクレームが来たのです。アパートが古いから配管にヒビが入っていたのらしいのですが、結構大がかりな修理になるようで、クララは頭を抱えていました。 日本人の留学生を悩ませるものの一つはこのお風呂。途中で水が出なくなったりお湯がなくなったり…日本で潤沢に使い放題の私達はここに来て、こうした不便さを経験して初めて自由に使える水の有り難さを思い知ります。私もこうした話は聞いていたし、実際にヨーロッパを旅行して幾度となく似たような経験をしているので驚きはしませんでしたが、現実、自由にお風呂が使えないのはちょっと辛いことでした。クララは申し訳ないと何度も謝ってくれて、それ以降はクララと共同のシャワーを利用していたのですが、私は出来るだけお湯を使わないよう節約をするのに随分と努力を要しました。なのでバスタブにたっぷりとお湯を張り、手足を伸ばしてのんびり入るお風呂は最高に贅沢でした。 |
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4つ星ホテル「マイターニ」 | おっきなベッド/斜めに寝てみましたよ |
明日は、「死に行くチヴィタ」と言われる天空の町と、ヨーロッパで一番澄んだ湖、ボルセーナ湖に行きます。案内をして下さるのはオルヴィエート在住のツヨシさん。ホテルのロビーで待ち合わせです。 |
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■一泊旅行 死に行く町「チヴィタ」へ 11月9日(日) |
身長155センチの私にとっては無用に大きなキングサイズのベッド、昨夜は縦に寝たり横に寝たり、はたまた斜めにもなってみましたが、目が覚めると端っこに丸まっていた私です。日本では傍らにアルファがでーんっと寝そべっていて私はいつも端に追いやられているものだから、旅先でもこんな寝姿になるようで(^^;)…それでもぐっすりと眠れたのでしょう、今朝の目覚めは快適でした。 このホテルの朝食はやはりヨーロッパ式で、コーヒーや紅茶などの飲み物と、パン、ヨーグルト、そしてボイルドエッグくらいのものですが、しかしそこはさすがこの町の4つ星ホテル、簡素な中にも丁寧なスタッフの対応と配慮の効いた食卓のセッティングに、ゆっくりと美味しくいただくことができました。 |
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ホテルのダイニング | ロビー |
午前10時、今日一日案内して下さるツヨシさんとロビーで待ち合わせをして、いよいよ今回の旅行のハイライト、天空の町「チヴィタ」へ出掛けます。途中、昨日買うのを迷った「パトリス」というお店で見つけた手作りの積み木がどうしても欲しくて再び店に立ち寄りました。旅先で迷ったものはその場で買わないと、後から買うことはまず出来ない、私が今までの旅行で得た教訓です。 |
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オリーブの木を使った手作り工房パトリス | お土産げの積み木をゲット |
さて、オルヴィエートから車で約30分ほど走ると、「チヴィタ」に到着します。この町は1000年もの長い間地震に見舞われ続けて町は崩壊していき、周辺から隔絶されることになりました。崩壊は今なお続いていて、それが、“死に行く町”と呼ばれる所以(ゆえん)です。住民も今では20人ほど、町は小さくてかわいくてまるでおとぎの国のようだけれど、長い橋を渡って現地に立てば、この天空に浮かぶ町で生きていく人々の厳しい生活が偲ばれます。 日本には「滅びの美学」という独特の世界観がありますが、崩壊し続けているこの町に住み続けている人たちはどんな思いでいるのかとふと考え込んでしまいました。この特異まれな景観は荒らされることなくこのまま後世に残して欲しいと思うけれど、それと同時に観光客が沢山訪れて町が豊かになることも願わずにはいられませんでした。 |
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この橋を渡って町に入りました | チヴィタの古い町並み |
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■一泊旅行 「ボルセーナ湖」へ 11月9日(日) |
オルヴィエートからチヴィタ、ボルセーナ湖へ効率よく行くには、やはり車が一番です。ツヨシさんは車を走らせながら、見所を要領よく説明して下さいましたが、日本からお友達やお知り合いが来るだびに、同じコースをもう何十回となく訪ずれておられるはずで、案内していただくのがちょっと申し訳ないような気分になりました。が、しかし私には夢にまで見たイタリア。しっかりと目と心に焼き付けて帰ろうと観る目は貪欲でした(^^)。 このボルセーナ湖はイタリアで5番目の大きさで、透明度は随一なのだとか。勿論夏になれば泳げるのでイタリアの各地から沢山の人がやってくるらしい。こんな湖を見ると、どうしてもアルファも連れて来たいと考えてしまう私です。ツヨシさんにそのことをお話すると、田舎であればわんこ連れでも泊まれるような借り家があるらしく、実際日本からわんこ連れの留学の問い合わせもあったとのこと。どうせならアルファも連れて主人も一緒にハッピーリタイアメントをこのイタリアで送るかな〜。 |
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ボルセーナ湖の隠れ家的トラットリアで | ツヨシさんお勧めのランチを頂きました | |
現地に住んでおられる方に案内していただく最大のメリットは、やはりその土地の美味しい食べ物を教えていただけること。今回もツヨシさんに観光客はめったに来ない、地元の人が食べに来るだけの隠れ家的トラットリアに連れて行っていただきました。この地方のパスタは少し太めでコシがあって、日本の細めのうどんのような感触です。トラットリアはボルセーナ湖のすぐそばにあり、お店から湖に出られるのですが、この湖で取れる魚介類(干した物)が入っているスパゲッティはほんとに美味しかったです。又、店主が出してくれたこの地方の白ワインは、ラベルも張っていないボッテリア(瓶)に入っているのだけど、これは飲んだ量だけ料金を支払えばよいので心おきなく味わえました。そうそうこのトラットリアは観光客がどっと押し寄せては困るからとお店の名前は秘密らしい(^^)。 又、忘れられないのがこれもツヨシさんお勧めのエノテカです。一人で歩いていたらきっと見逃してしまうようなお店の佇まいと寡黙だけれど、訪れたお客さんに少しでも美味しいワインを味わってもらおうとする店主の気配り、そして何よりもワインを愛する心意気が感じられて心にしみいりました。そんな店主の“思い”の通りのワインの味…次から次へと試飲を勧めてくれるワインはどれも極上ですんなりと喉を通る、さすがこれが本物のイタリアのワインかと私はちょっと熱くなりました。(コクがあってバランスが良くて美味しいと思うワインはやはり日本円で3000円以上する…安いものはどこかクセがあるなぁ…ブツブツ) 一年もの間、楽しみにしていたオルヴィエートへの旅行もこうして終わりに近づきました。ツヨシさんにオルヴィエート駅まで送っていただいて、これからフィレンツェに帰ります。 |