幼犬の頃の話へ 

桑畑さんのページ


二代にわたってアルファをいただいた宮崎の元ブリーダーさん桑畑 力(くわはたちから)さん。昨年、長い間にわたった犬舎を閉じられました。でもその経験は貴重で、今でもお話を伺い、参考にさせていただいています

−若年から成犬の頃の話
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犬の飼い方、躾の本はあふれる程本屋さんに並んでいます。又インターネットでも簡単に検索できます。しかしそこに書いてあることが必ず全ての犬に当てはまるのかどうか、時として“マニュアル”に振り回されそうな気がしてなりません。長年の経験からアドバイスして下さる桑畑さんのおっしゃることは、現実に則していて私にはすとんと腑に落ちるのです。以下はアルファにとって貴重な生育のバイ゛ブルです。青字が桑畑さんからのアドバイスです。



 吠えること
犬が吠えるというのは、相手に警戒心や敵対心を持っていることの表れです。その他に飼い主に対する様々な要求を吠えることで訴えますが、小型犬よりも大型犬の方が、又つながれている犬よりも自由にしている犬の方が吠えることは比較的少ないです。アルファのおじいさん、ロッキーというのですが、生後14カ月目で初めて吠えました。当初は咽喉の異常か何かによって声が出ないのではないかと心配しましたが、アルファはこの血を継いでいるのかも知れません。ある日「あらっ」という具合に突然「ウォン」といいます。その時期は多分足を上げておしっこをするのと同時くらいでしょう。生後10カ月〜12、3カ月くらいで吠えるはずです。   
 去勢について
ネットの情報で犬の前立腺ガン予防の為に「去勢」をするという記事を読みました。考えてもみなかったことです。アルファもその手術が必要なのでしょうか?

最近室内で飼う小型犬、トイグループと呼びますが、その種類の犬が人気をよんでいます。雄雌を考えずに、ただかわいいからとショップで購入し飼い始める。小さい犬は発育が速くすぐに成犬になりますので、オスであればやがてマーキングを始めます。若い女性などは足にしがみついて性動作をする犬を嫌がり、止めさせるのに「去勢」をするというケースが増えています。確かに「去勢」をすれば、マーキングもなくなりますし、足を上げてオシッコもしなくなります。当然です。オスでなくなるわけですから。又、散歩途中、オス同士のにらみ合いやけんかをするということもなくなります。しかし、それらは「しつけ」や「訓練」で成されるべきことで、こうしたことの為に「去勢」はすべきではないと私は考えます。「去勢」をすれば、ホルモンのバランスを崩し必ずその反動がやってきます。肥満です。普通に散歩や運動をさせているのに、ぶくぶくと太ってくる、そのことによる障害の方が恐いです。

前立腺ガンは、一般的に戸外で飼われている犬よりも、室内で飼われている犬の方がかかりやすい傾向にあります。私は医者ではないので、これは経験則からですが、新鮮な水をいつでも自由に飲め、自由に遊べ、オシッコも自由に出来る環境にいれば、今のアルファの状態ではさほど心配されることはないのではないでしょうか?アルファはまだ子供です。5〜6歳になりその心配が出てきた時に考えられればよいと思います。 「去勢」は本来、妊娠を防ぐ、避妊のために行われる手術であって、それ以外の目的で健康な犬の身体に施すのには賛成しかねます。
                                                      

 お産の話
アルファはオスなので、特に関係はないのですが、犬の生理から少しお話をしますと、最近犬のお産でも人間の様に帝王切開をすることが多くなってきています。いわゆる難産です。特にトイグループの犬は、より人間と暮らしやすいように改良が進み、又飼う側も甘やかして人間と同じ環境で過ごさせる為、犬が本来持つ野生がそがれつつあるのです。そしてその影響がお産にも表れます。

帝王切開をする時は、全身麻酔をします。お産の後1時間以内にしっかりと赤ちゃん犬に初乳を飲ませ、母犬にも母性を起こさせなくてはなりません。それが麻酔からなかなか覚めずにいる場合、犬のこうした母性本能が働かず、結果母犬自身が赤ちゃんを育てることを放棄してしまうようになるのです。よしんば、難産だとしても、関係者はできるかぎり、安易に帝王切開をせず、鉗子を使う技術を習得し自然分娩を是非心がけていただきたいと思うこの頃です。
おとな(成犬)の定義
一歳のお誕生日を一週間後に控えて、ここ数日、アルファにはおとな(成犬)の兆しが現れ始めました。二三日前の散歩途上では、電信柱に足を上げておしっこをしていましたし、又、私はきょうはっきりと「ウォン」というアルファの吠える声を聞きました。会社から帰ると、それまで一度も鳴いたことがないのに、「クィン、クィン」と甘えて喜ぶ声も出すようになり、今まで声を全く発しなかったので、なにやらかわいくて嬉しい気分です。

シェパードやゴールデン等の大型犬の場合、1年が成犬ではなく、もう少しあと、大体14カ月くらいが成犬という目安を持っています。小型犬は1年程でおとなになりますが、大型犬の成長はゆるやかなのです。定義というと大げさですが、少し注意して観察していると、雄であれば、マーキングをし始める、足を上げてオシッコをする、そしてアルファのように、それまで吠えなかったのが“吠えた”ということも、成長をしておとなになったというしるしです。成長の度合いは種類別にいえば、ドーベルマンが一番遅く成犬になります。アルファが、一声も発しないということを聞き、正直、めったにないことなのですが、喉の異常によって声が出ないのではないかとふっと心配もしました。が、やはりアルファのおじいさん、ロッキーと同じだったようでほっとしています。犬が吠えて困る、うるさいという苦情はよく耳にしますが、吠えたと言って喜ばれるというのは、何とも妙な嬉しさです。

私(現在53歳です)の若い頃(20歳ごろ)の話ですが、父親が当時いわゆる軍用犬と呼ばれる犬を飼育していて、その犬を散歩に連れ出した時のこと、その犬よりも先輩の犬がおしっこをした電信柱にはおしっこをさせてはいけないとよく言われました。犬が他の犬のおしっこの後におしっこをひっかけるというのは、自分の方が格が上だと、“男”を誇示するものだからです。アルファが威勢良く電信柱におしっこをひっかけたのは、先の犬よりも自分の方が強いのだとアピールをした、雄犬としては、まったくもって立派な行為です。
警察犬訓練所について

本来の警察犬訓練というのは、実際に警察犬を育てるという目的で、生後6カ月くらいから非常に厳しい訓練を行います。例えば、「待て」という命令では、20分も待たせるという具合です。ゴールデンレトリバー犬は元来が穏やかな家庭犬ですので、何か特別の目的がない限り警察犬訓練は正直必要かどうか。

アルファがこの度面接を受けた訓練所では、恐らく基本的な「服従訓練」を行うのだろうと思います。6カ月の期間預けっぱなしで訓練士の方から「躾」を受けること自体は決して悪いことではないし、むしろ機会があり、できるのであれば思い切って受けるのもいいことです。そうして訓練された犬は、ほんとうに美しく見事なものです。ただ、問題は訓練期間が終了して、家庭に帰った時、どれだけ受けた訓練を持続させられるかということです。ほんとうはイギリスなどのように、飼い主も一緒になって長い訓練を犬と同時に受けるということが理想です。

アルファが家に戻った時、訓練士の方と同様に半ば非情な気持ちにまでなって接せられるかどうか。それまでと同じように甘い気持ちで居ると、元のように戻ってしまうのが大半です。決して安くない料金
(1カ月、訓練費が35000円、餌代その他が1万円計45000円かかります)が無駄にならないよう覚悟ができるかどうか。ゴールデンは先程も言いましたが、穏やかな家庭犬です。共に生活をしていくのに必要な躾は個人で出来る犬種のはずです。


ショートリードについて

皮の本場、イタリアでショートリード(長さ約55p)を買って来ました。持ち心地もよく、編み目がなんともおしゃれで気に入ったのですが、実際にアルファに使ってみて難しいことが分かりました。久しぶりに桑畑さんからお話を伺うことができました。

ショートリードの良さは、なんといっても飼い主の意志がダイレクトに犬に伝わる点です。又散歩や訓練時には飼い主の手元が楽です。ただ、それはしっかりと歩行訓練の出来た犬と、それなりの躾の出来るいわばプロが使用するリードと言えます。散歩中、犬が何かに興奮して引っ張ればこのショートリードは大変危ない。大型犬であれば飼い主は前につんのめり、ころげる恐れがあります。このショートリードを使いこなすには、犬と飼い主のあ・うんの呼吸というものが求められます。どういう時に犬が引っ張ろうとするか、どういう場面で走り出そうとするか、その勘どころを心得て下さい。そして、引っ張ろうとする瞬間にリードを手前に引くのではなく、上に引く様な格好で、犬の引きを止めて下さい。歩行時、犬を横につけてきちっと歩く姿は素晴らしい。ただ私個人は、細めのリードで、余裕を持った長さで、なおかつ犬が引っ張らない状態でリードをあやつるのが好きです。いずれにしても犬も飼い主もゆったりとした気持ちで散歩を楽しんでもらいたいと思います。


他の犬に吠えること、吠えられること

アルファは、ここ最近散歩途上の犬に吠えられるようになり、それが続いた結果、自身も吠えるようになりました。パピーの頃から生後1年以上も吠えること、鳴くことさえも全くなかったので少し驚いています。ただ無駄吠えではないので、ある程度仕方のないことかも知れないのですが、やはり吠えないにこしたことはありません。一体アルファにどういう変化があったのでしょうか。

犬が散歩の途中に出くわした犬や、犬の居る家の前で吠えられるというのは、吠えられる犬が回りの犬に大人だと成犬だと認識された証拠です。子犬の場合、たとえば、アルファが1年未満の時には図体がいくら大きくても吠えられることはなかったはずです。犬が大人になり、ホルモンが出始めると回りの犬はこの犬に警戒をするのです。いわば「あっちへ行け、こっちに来るな」と言っている訳です。又アルファ自身も吠えるようになったということは、アルファ自身に自己主張が出て来たということです。勿論一歩間違えば、これは躾の観点から問題行動とされますが、何もかも叱りつけ押さえつけるのもよくない。無駄吠えだと当然これはダメだと教えなければならないことですが、過剰に犬が吠えることに対して飼い主が過敏になると犬のストレスを引き起こすことにもなります。その辺をよくわきまえて回りに迷惑がかからないように対処するのが肝要です。