Poem & Essay






秋のそら



秋晴れわたる
江戸城本丸の址
(あと)
松の葉陰
(はかげ)
芝草
(しばくさ)の上に転(まろ)んで天を仰(おう)げば
そらの浅葱
(あさぎ)
陽に融けて松葉をつつむ
きらきらと澄み輝く
生命の光

鳥が空を翔ていった
どこにゆくのだろう
虫がしば鳴いている
おまえが秋を呼んだんだね
風に群れ浮かぶ蜻蜓
(とんぼ)
心はそぞろ誘われ
天高く白雲のさざ波となって
寄せては返す

ああ
秋のそらは何かしら
胸の奥ふかく沁みて切ない
(あま)の潮騒の香りがする